第31話アイドル育成

「あーオレオレ、今暇か?」

俺は知り合いの音楽家に電話する。


「ユウヤさん、ご無沙汰してます。

暇では無いのですが、何か御用ですか?」

「一人の女の子をレッスンして欲しいんだ。」

「はい、引き受けます。」

電話先の男は快諾する。


「いいのか?詳しく聞かなくて。」

「構いませんよ、ユウヤさんのお陰で今のボクがあるんですから。

頼み事の一つや二つ直ぐに引き受けますよ。」

「ありがとう、じゃあ今から向かうよ。」


俺はタクシーに美花とシンを乗せて男の自宅に向かう。

「あの~何処に向かっているのでしょうか?」

美花は不安そうに聞いてくる。


「あー、知り合いの音楽家、松本ヤスとメグの夫妻の所。」

松本ヤスは指揮者として世界に名を轟かせている一流の音楽家だ、

そして、妻のメグも声楽家として一流として有名人だ。


現在二人ともコンサートにおいて席も取れない程の大人気だった。


「えっ、本当ですか?」

「嘘言っても仕方ないから。まあ、この後、会うし、暫くは一緒に暮らして貰うよ。

その間にデビューの準備はしておくから。」

あまりの事態に美花は固まっていた。


「ヤス、いきなり悪いな。」

「いえいえ、ユウヤさんの頼みですから。」

「それでこの子なんだが、歌手としてデビューさせるから住み込みでレッスンしてくれ。」


「解りました、ユウヤさんに恥をかかせないようにしっかり鍛えておきます。」

「頼んだよ。あと、ダンスのレッスンも此処でさせるから、場所貸してね。」

「了解です。ダンスはどなたが?」

「ちょっと待ってよ。」


俺は電話をする、

「モシモシ、コマか?」

「ユウヤさんどうしたんですか?」

「いや、ダンスを教えて欲しい子がいるんだ。」

「いいですけど、誰ですか?」

「デビュー前の子だ、渡辺美花っていうんだ、今、ヤスの家にいるんだ。ちょくちょくレッスンしてくれ。」

「えっ、俺が行くんですか?」


「・・・お前、俺が足をするとでも?」

「いえ!私が参ります!」

「そうだろ?じゃあデビューまでに頼むぞ。」

「デビューっていつ・・・」

俺は質問も聞かずに電話を切る。


「ヤス、コマがたまに来るからレッスンやらしてくれ。」

「解りました。」

「あと、作詞作曲はお前の推薦者で良いから、彼女の声と歌い方に合わせた人を選んでくれ。」

「あの、負荷が凄くなっているような・・・」

「うん?ヤス嫌なのか?」

「決してそのような訳ではありません!」

俺が睨むとヤスはこころよく受け入れてくれる。


「美花さん、暫く此処でレッスンして貰うよ。ヤス達のお済み付きが出ればデビュー出来るから頑張って。」

「は、はい!がんばります!」


そして、俺達は美花を置いて帰郷することにした。


「お帰りユウちゃん、お仕事は無事におわったの?」

帰った俺達をチカが笑顔で迎える。

「いや、また行かないといけないかな?」

「あれ、終わらなかったの?」

「一人アイドルを育てる事になったんだ。

それでレッスン済んだら、確認と手配に動く予定。」

そこまで話すとチカの笑顔の雰囲気が変わる。


「それって女の子?」

「ああ、14歳の女の子だよ、あっ、これ資料。」

チカは渡した資料を見る。


「綺麗な子だね、何でユウちゃんが面倒みてるのかな?」

「あーなんでだろ?成り行きかな?」

「ふーん、そうなんだ・・・」

「まあ、近々物になるだろう、素質はありそうだったし。」


「ユウちゃん!」

「うわっ、ビックリした、いきなり何?」

「次に行く時は私も一緒に行きます!」

「いやいや、泊まり掛けになるかも知れないからね、連れては・・・」

「行きます!」

チカは頑固に退くことはなかった。

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