エピローグ ー第1部ー

 キリヤと優香が施設を去って、数日が経過した。


 それから生活が劇的に何か変わるわけでもなく、暁は今までと同じような日々を過ごしていた。


「やっと暖かくなってきたな。もう春か……」


 暁はそう言いながら、職員室の窓を開けて春の陽気を感じていた。


「キリヤたち、元気にしているかな……。まあまだ数日しか経っていないんだけどな」


 そして暁は施設のグラウンドを見つめて、施設に初めて来た日のことを思い出す。


「ここが初めてのレクリエーションをした場所だったな」


 本当にあっという間の2年間だったな。まさかこんなに生徒たちと仲良くなれるなんて、来たばかりの頃は想像もできなかった。


 今まで本当にいろんなことがあったけれど、ここの生徒たちは俺を教師にしてくれた――。


 そんなことを思いながら、暁は笑顔になる。


「ここに来られて、本当に良かった。『白雪姫症候群スノーホワイト・シンドローム』のおかげだな」


 そして暁は春の暖かな風を頬に受けたのだった――。




 約20年前、『白雪姫症候群スノーホワイト・シンドローム』の存在が明らかになった。その力は思春期の子供たちの青春時代に大きく関わるものだ。


 三谷暁はそんな子供たちを救うために教師を目指し、そして危険度S級クラスの担任教師になった。


 ここまでの道のりはかなり困難なものだったが、暁は生徒たちとの出会いとたくさんの思い出たち、そして研究所の職員たちの支えもあって今もこの場所にでいられる。


 自分に失望して自信を失ってしまうこともあったり、生徒たちを危険な目に合わせてしまったり、自分自身が事件に巻き込まれたこともあった。そして最愛の人と出会いも――。


 暁はこの能力のせいで自分の人生は最低なものになってしまったと思っていた。しかしそれはきっと最高の仲間たちに出会うために授かった力だったのかなと今の暁はそう思っていた。


 教師としてまだまだ未熟者な自分はこれからもっと多くの経験をして、これから出会うたくさんの生徒たちを救い、笑顔にしていく。


 だからどんな困難な道でも、きっと大丈夫。


 だってこれまで出会った生徒たちから、困難を乗り越える力をもらったのだから――。


 思いふけっていた暁がふと腕時計に目を向けると、始業時間が近づいていることに気が付く。


「おっともうこんな時間か。よし、今日も頑張るぞ!」


 そう言いながら、暁は職員室を出て行った。




 そして暁は今日も教師として生徒たちと共に進んでいく。


 この物語はまだまだ終わらない。三谷暁が教師であり続ける限り――。



 第1部 ~完~


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ここで物語は一区切りです。

第1部を最後までお楽しみいただきありがとうございました。


次回より第2部が開始しますので、この先もどうぞ『白雪姫症候群スノーホワイト・シンドローム』をお楽しみください。



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