第4章 過去・今・未来

第25話 白雪姫症候群

 20年前――。


 一人の少女の存在が、今の社会に大きな影響を与えた。


 突如出現した力に頭を悩ます研究者たちの前へ現れた、奇跡の少女。


 銀髪で青い瞳をしたその少女は、研究者たちに多くの技術と知識を授けてくれた。


 少女はその見た目から『スノーホワイト』というコードネームで呼ばれるようになり、研究機関で思春期の子供たちに起こる能力の研究に協力することになったのだった。


 そして、少女こそのちの『白雪姫症候群スノーホワイト・シンドローム』のきっかけの人物だった。



 ***



「ゆめか君、どうしたんだい?」


 所長はガラスの向こうにいる子供を見つめているゆめかに声を掛けた。


「この力はどこからやってきたのかなって、そう思っていたところかな」


 ゆめかは悲しそうな顔で振り返りながら、所長にそう告げる。


「能力が初めて確認されてからもう20年近く経つのに、未だ解明されていない事実だね」

「ええ。……いつになったら、子供たちは苦しまなくなるんだろう」


 そしてガラスの向こうで眠る子供の姿を見て、苦い顔をするゆめか。


 ガラスの向こうにいる子供はたくさんの管をつながれ、機械の力で無理やり生かされている。


 その事実と彼女たちは毎日向き合っていた。


 救えたかもしれない子供たちの人生が失われていくのを毎日見るのは、大人であっても相当しんどいことだろう。


 それでも彼女たちはここで眠る子供たちのようになる子供を少しでも減らすために、今日も『白雪姫症候群スノーホワイト・シンドローム』の研究をしていた。


「この力がどこからきて、どうしたらなくなるのか。その事実が今はまだわからなくても必ず解明するさ。そのための我々だろう?」


 そう言って所長は優しくゆめかに微笑んだ。



「所長はずっと変わらないね。いつもその優しい笑顔を向けてくれる。その笑顔にたくさんの子供たちが救われてきたんだろうね。……もちろん私もその一人さ」


「ふふ。ありがとう。そう言ってくれるとうれしいよ。さて、研究に戻ろうか。ここで時間を無駄にしている場合じゃないぞ! 一刻も早く、この能力のことを解明しなくてはな!」


「そうだね」



 そして2人は歩き出す。


 子供たちの明るい未来が来ることを信じて――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る