いくら猫撫で声でグイグイせまって来ても、ただの幼馴染と「えちえち」なことするってハードル高いからね?
逢坂こひる
第1話 後悔朝立ちせず
思春期の男子なら、誰もが1度は、可愛い幼馴染の存在に憧れを抱いたことがあると思う。
もちろん俺もその中の1人だ。
朝、布団を引っぺがされて起こされたり、
ベッドに三角座りする彼女のパンツがチラッと見えたり、
不意に組まれた腕に胸の感触があったり、
パーソナルエリアを侵害するほど顔を近付けられたり、
ドキドキシチュエーションを思い浮かべるだけでも、枚挙にいとまがない。
そんな2人はやがて、お互い意識しはじめ……そして恋に落ちる。
頭の痛い妄想かも知れないが、確かにある憧れの形なのだ。
俺も憧れていた。妄想していた。
だから俺は、高校1年の15の夜に、覚悟を決めて幼馴染みの
「文乃……ずっと好きだったんだ……付き合って欲しい」
「え、無理……私、
結果は玉砕……妄想は妄想でしかなかった。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
俺は叫んだ。
そして、オカンに借りパクしたママチャリで、走り出した。
行くアテも分からないまま、暗い夜の
明日から薔薇色の高校生活が待っていると思っていた。
明日からイチャラブして、パンチラなんか盗み見しなくても、堂々と見ることが出来て、なんなら脱がしてしまう事さえオッケーな関係になると思っていた。
だけど……だけど……、
無いわ————っ!
これさあ、どうすんの?
結構な大惨事だよ?
俺ら同じ高校なのは勿論の事、同じクラスで隣の席だよ……顔を合わせない事なんて不可能なんだよ?
気まずっ!
しかもさあ、毎朝さあ、文乃が部屋まで迎えに来てくれてたんだよ?
絶対オカンとか妹に、
『あれ、今日文乃ちゃんどうしたの?』とか聞かれるんだよ?
気まずっ!
それだけじゃないぞ、それだけじゃないぞ……これまであった、文乃との過剰なスキンシップが無くなるし、パンチラも見れなくなるし、密かに楽しみにしていた腕や背中からくるおっぱいの感触も無くなるし、顔を近付けられて無駄にドキドキさせられる事もなくなるわけだろ?
本当……なにやらかしてくれちゃってんのよ俺。
もし、告白していなかったら、あの日々が失われる事はなかっただろう。
もし、告白していなかったら、明日も小さな幸せが訪れたのだろう。
もし、告白をしていなかったら……後の祭りだ。
嫌やわあ……嫌やわあ!
とにかく家に帰りたくない!
——だが、結局行くあてなんか何処にもなくて、大人しく家に帰った。
失恋のショックで眠れないかと思っていたけど、チャリダッシュで疲れ切っていたせいか、いつもよりも、寝つきが良かった。
だけど、昨晩の出来事が心に影を落としたのは確かなようだ。
いつもは元気な息子が、今日は元気がない。
後悔朝立ちせずとはこの事だ。
だが、失意の俺の予想に反して……、
「真喜雄! 朝だよ! 起きろ!」
いつもの、朝が訪れた。
「な、何でだよ? 何で文乃がここに居るんだよ」
「え、いつも居るじゃん? 記憶喪失にでもなった?」
「いや、それは俺のセリフだ!」
「にゅん?」
「お前……昨日の晩、俺のことを振ったの忘れてないか?」
「あーっ、そうだったね! 振った振った」
「いやいや、そうじゃないだろ? 何で振った男の部屋に朝から勝手に入って来てるんだよ!」
「だって、私が来ないと真喜雄、遅刻しちゃうでしょ?」
「そうかもだけど……」
「それに、私振られてないから、気まずくないし!」
「俺が気まずいよ!」
「えっ、何で?」
「だって……俺がお前の事……そう言う目で見てるって、バレちゃったわけじゃん」
「そんなの、前から知ってるし!」
「知ってたの! 知っててそういう事してたの!」
「そういう事ってなに?」
「あ……アレだよ」
「アレってナニ?」
「こういう事かな!」
文乃は俺に飛びついて来た。
「おまっ! やめっ! 止めろって」
「あれ? 真喜雄、嬉しくないの?」
そ……そんなの。
「嬉しいに決まってるじゃないか!」
「だったら、いいんじゃない?」
「そうだな……って、よくねーよ!」
「ていうか、早く用意しないと遅刻するよ」
いつもの朝の訪れに少しホッとする俺だった。
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