第28話 仲間になって
それにしても、冒険者に追い回されていたシルバーメタルゼリーの俺が、冒険者になるとはね。
なんだかおかしくて、少し笑う。
「まあ、お前がやりたいって言うなら、俺も付き合うしかないわな。でも、俺たちだけだとまだまだ心もとないから、他にも誰か、仲間がいた方がいいな」
「そうなんですか?」
「ああ。冒険者ってやつは、だいたい四人くらいでパーティーを組むもんなんだ。時々、凄腕の一匹狼や、二人組なんかもいたりするが、そんな連中は例外で、少なくとも、三人はいたほうがいいと俺は思う」
「なるほど……」
「俺が攻撃魔法、お前が補助魔法の使い手だから、やっぱり後は、攻守の要となる強力な戦士が欲しいな。あのタルカスみたいな」
「そうですね。タルカスさんが仲間になってくれれば、本当に百人力です」
「まあ、俺たちにとっちゃそうだが、あいつにしてみれば、俺たちみたいなヒヨッコと組むメリットはないからなあ。それに、あれだけの凄腕となると、かなり多忙だろうし……」
そういえば、今日も別件がどうとか、忙しそうだったな。
「それでも、頼むだけ頼んでみましょうよ。ダメもとですよ、ダメもと」
「はいはい。今日と同じなら、タルカスは朝早くにギルドに来るみたいだし、俺たちも早朝から行って、頼んでみるか」
というわけで翌朝。
小鳥のさえずり響き渡る通りを歩き、廃工場そっくりに薄汚れた冒険者ギルドに向かう。
中に入ると、山のような巨体があった。
タルカスだ。
今日は、俺たちより先に来ていたらしい。
こちらの姿を確認すると、昨日と同じように、静かに頷いた。
おはようの挨拶の代わりなのだろう。
俺とレニエルも朗らかに挨拶し、昨晩相談した通り、仲間になってくれないかと話してみる。
無表情なタルカスの太い眉が、ピクリと動いた。
怖い顔だ。
駆け出し冒険者ごときが、図々しい申し出をするなと怒らせてしまったかな。
タルカスは、受付で大あくびをかいているマチュアに、耳打ちする。
マチュアは、もう一度大きくあくびをして、言った。
「ふぁ~あ……『すまない、私はきみたちと組むことはできない』ですって~」
レニエルはしょんぼりしていたが、俺は特に驚きはしなかった。
「そりゃそうだわな。あんたほどの冒険者にしてみれば、俺たちはお荷物以外の何ものでもないもんな。いや、すまない。昨日あれだけ助けてもらったのに、身の程知らずの要求をして悪かったよ」
「それは違う」
タルカスが、突然低く鋭い声を発した。
び、びっくりした……
タルカスも、自身の発した声に驚いたように口をつぐむと、再びマチュアに耳打ちする。
せっかく、口きいてくれたんだから、そのまま俺たちと話してくれればいいのに……
「ええっとですね。『私は断じて、きみたちを侮ってはいない。ただ、私はこの通り、女性が苦手で、円滑なコミュニケーションをとることができないのだ。そんな私とパーティーを組めば、きっと苦労をかけることになる、だから、きみたちと組むことはできないのだ』ですって。まあ、昨日みたいな助っ人程度ならともかく、正式にパーティになると、確かに色々問題も起こるかもしれませんね」
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