冬になりました。

あたり一面雪景色です。

しかし家にはハンナだけです。


今日はクリスマス。


ハンナは

帰って来るルドルフに喜んでもらうために

クリスマスの七面鳥やケーキを用意していました。




しかしハンナの心には沸沸と不安がこみ上げてきます。

なぜなら出征したルドルフからまだ一通の手紙も届いてなかったからです。


はじめは

「すぐに戦争が終わるから手紙を出す必要がないのだろう」

とハンナは思っていました。


それに

「クリスマスまでには帰れる」

というルドルフの言葉を信じていました。


ただ

「もしかしたらクリスマスまでに帰って来られないんじゃ……」


という思いがハンナの心を侵食しはじめていました。


すると玄関から


コンコンコン


とノックの音がしました。


ハンナは慌てて立ち上がると

急いでドアに向かいました。


「やっぱりルドルフだわ。

約束通りクリスマスまでに帰ってきてくれたんだ。


でも、もっと早く帰ってきてくれても良いのに。


こんなに私に心配かけて。絶対にとっちめてやるんだから!」


そう思いハンナは勢いよくドアを開けました。


しかしそこにいたのはルドルフではありませんでした。


ドアの前に立っていたのは、ハンナの叔母さんでした。


叔母さんは、ルドルフが出征してから

日に日にやつれていくハンナが心配でなりませんでした。


なのでこうして暇を見つけてはハンナの様子を見に来てたのです。


叔母さんはハンナを元気づけるため、街で聞いた噂を語りました。


「ハンナ、聞いたかい?御国の軍が勝ち続けてるみたいだよ。あとはマルヌでフランスをやっつければドイツの勝ちは決まり。そうすりゃルドルフも帰ってくるわさ」


「どっちが勝っても、たくさんの人が死ぬことに変わりは無いわ。私は、私はルドルフさえ無事なら……」


ハンナは堪えきれず泣き出してしまいました。


「ハンナ、大丈夫だよ。ルドルフはきっと無事さね」


叔母さんもハンナが不憫で泣きそうになってしまいましたが、

グッと涙を堪えハンナを慰めるのでした。



窓の外ではシンシンと雪が降り続けています。

ハンナは一人雪を眺めながらルドルフを待ちつづけます。

しかしルドルフからの手紙は一切ありませんでした。



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