躊躇

豊崎信彦

第1話 発砲

“刃物を振りかざし向かって来た容疑者に対し、警察官は拳銃二発を発射。一発目は逸れましたが、二発目は容疑者の腹部に命中。容疑者は病院に緊急搬送されましたが、搬送された2時間後の午後11時に死亡したとの発表が…”


「現場から伝えて貰いました… コメンテーターの高橋さん、刃物を持って向かって来る人間に警察官が身の危険を感じて発砲する… どうお考えになりますか…」


「夫婦喧嘩の仲裁的な軽い感覚で現場に向かったのでしょう… そこに、常軌を逸した容疑者が刃物を振りかざす姿があった。想定していなかったことが起きて、警察官はチョットしたパニックになったのだと思います。そして、警告無しに容疑者に向けて発砲した… 如何なる状況にも対応する能力が足りなかったのでしょう… 40代の警察官とありますが、ベテランであれば、もう少し冷静かつ慎重な判断が欲しかったですねぇ…」


「そう言った意見は警察に対して多く寄せられているようです。発砲した警察官の配属先の警察署には、発砲に対する心無い中傷電話も何件か寄せられているようです…」

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