『ふぁーめい』 ~1~
「どうだったかな?」
長の住処に戻ると、椅子に座り編み物をしていた長は顔を上げ、模様の一眼で木洩日を見つめた。木洩日には長が笑顔で出迎えてくれたことが分かった。
「不思議な場所。本当にまったく違う世界なんですね」
「はは。さて、では、あんたの住む場所を決めなくちゃあならん」
「――え? い、いいんですか?」
「私らは住人の迎え入れにはいつも慎重だ。しかし【煌めきの海】からの授かりものとあっては話が別だ。皆文句は言うまい、私らはあんたを迎え入れよう」
「あ、ありがとう……ありがとう、ございます!」
「うん。――よいせ……っと」
長が立ち上がろうとすると、すぐさまに『ふぁじゃ』が駆け寄り手を貸した。
まだ頭を下げ続けている木洩日に、長はとつとつとした語りを向けた。
「時間が必要じゃ、整理する時間がの。あんたはまだ、様々な衝撃を受け止められないままでいるだろう。その準備が整っていないからだ。時間が必要……。――『ふぁーめい』のところがいいだろう、彼女なら温かくあんたを迎え入れてくれる……。さあ、行こうか。私も一緒に向かうからの」
「は、はい!」
【煌めきの海】の授かりものの少女。
長の言う通り、木洩日の受け入れに反対する者はなく、頼りである『ふぁーめい』も木洩日のことを快く受け入れた。
こうしてこの日から木洩日は、『ふぁーめい』という名の女性の元で世話になることとなる。
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