第八章・異極惑星【バイ・カラード】水球惑星に沈む?

第11話・異極惑星バイ・カラード

 異極惑星【バイ・カラード】ウォーターメロンのような濃緑色と赤色に、二分割された美しい星──濃緑色側には『侵略軍事国家』が、赤色側には『軍事産業国家』があり。

 二つの国家に挟まれた隙間に黄色い大地の『平凡国家』がある特異な星。


 海洋は遥か太古には地上にあったが、なんらかの理由で今は地中に海は潜り、地中の海には古代生物が泳いでいる。


 濃緑色側の侵略軍事国家──『グリーン・カラード』は、今だに緑色の大地で他国への侵略行為を続け。

 赤色側の軍事産業国家──『レッド・カラード』は製造した兵器を敵味方関係なく、軍事国に売りつけ、国益にしていた。

 二つの国を支えているのは、黄色い平凡国家──『イエロー・カラード』の民。

 レッド・カラードでは工場員として、過酷な労働下で火器武器を作り続け。

 グリーン・カラードでは兵士として、緑色の大地内にある国を責める。

 その攻められる国を攻防するのも、イエロー・カラードの民。

 さらに、レッド・カラードに侵攻され戦わされる側国の兵士も、イエロー・カラードから駆り出された民だった。


 イエロー・カラードの民が、レッド・カラードの兵器工員で生産した兵器を。

 グリーン・カラードに使役されている、イエロー・カラードの兵士が戦闘で使用して。

 侵攻された、他国で使役されているイエロー・カラードの兵士が、同じイエロー・カラードの兵士と戦わされる……地獄絵図。


 小柄なイエロー・カラードのヒューマン種族〔平均身長百六十センチ〕を使役しているのは。少しばかり大柄のヒューマン種族〔平均身長百八十センチ〕で。

 そして、両種族とも男性は少数で、女性が大半を占めている女系種族だった。


 そんな特異な社会構造の惑星バイ・カラードに【極楽号】で織羅・レオノーラが。

【ナラカ号】で美鬼アリアンロードがやって来た。


 惑星バイ・カラード、侵略軍事国家【グリーン・カラード】──政治議事堂。

 濃緑色の軍服を着て豪華な革張り椅子に座り、机の上に軍隊ブーツを履いた足を乗せた。

 グリーン・カラードの最高責任者成人女性『悪宰相デュラ・ファン』が不機嫌そうな表情で、少し離れ立つバグ・フリーダムのおせっかい娘『織羅・レオノーラ』に向かって言った。


「遠路はるばる、ご苦労なこった。我がグリーン・カラードは外部からの干渉は良しとしない……速やかにお引き取り願おうか」

 レオノーラに付き添って惑星バイ・カラードに降りたのは、極楽号防衛迎撃班責任者──ドクロ鉄球が繋がった、愛用の船のイカリ型武器を担いだ『鉄ウサギの月華』と月華の旦那の。

 特殊宇宙鋼仕立ての日本刀を持った、全身黒づくめのバグ・ファジーの剣客『仁・ラムウオッカ・テキーララオチュウ・ギンジョウワイン』だった。


 カウガールハットをかぶり、大型の黄金光弾銃『レオン・バンドライン』をフットガンホルダーに収納した、レオノーラが言い返す。

「そうは言っても、極楽号の目安箱に届いた、助けを求める人たちの声を無視するワケには」

 鼻で笑うデュラ・ファン。

「織羅家と言えども、バイ・カラードの星域内で勝手が過ぎると、命を失うコトになるぞ」

「バグ・フリーダムになった時から、荒野で野晒しになる覚悟はできている……織羅家も、ボクの行動は自己責任というコトで放任している」

「ほぅ、つまり偶発的な戦闘で死傷しても。織羅家からは罪を問わないと……解釈してもいいんだな」

 机の上から足を下ろしたデュラ・ファンが、レオノーラに質問する。

「あんたの目安箱に、助けを求めたのは。グリーン・カラードに住むどこのどいつだ?」

「それを知って、どうするつもり」

「決まっているだろう……これは重大な国家反逆罪だ、見つけ出して見せしめで処刑してやる」

「だったら、なおさら教えられませんね……どうしても、侵略行為を続けるというのなら。全力でボクが阻止するから」

 そう言って、ドアを開けて部屋から出ていく、レオノーラに聞こえるような大きさの声でデュラ・ファンが。

「けっ! 小娘が!」

 そう毒づく声が聞こえた。



 惑星バイ・カラード、軍事産業国家【レッド・カラード】──工場社長室。

 赤いレディスーツ姿の 工業生産総女性責任者。 鬼畜党首『ヴァン・パイル』は、血のように赤い飲み物で喉を潤しながら。

 少し離れ立つ、銀牙の性悪女『美鬼・アリアンロード』を横目で眺めた。

 美鬼・アリアンロードに付き添ってバイ・カラードに降りたのは。

 アリアンロード十五将の三将。

 第一将『軍人ゲシュタルトン』

 第二将『悪商エントロピーヤン』

 第三将『美神アズラエル』の三人だった。

 ヴァン・パイルが、唇の端から赤い液体を少し滴らしながら言った。

「ナラカ号に届いたという、過酷な労働条件への抗議は何かの間違いでは……イエロー・カラードの工場作業員は毎日、喜びを感じて兵器を作っているはずですが」


 太股丸出しの振り袖風の和装ミニドレス、足にはグラディターハイヒールを履き。

 シーサイドアップの金髪ツインテール髪をした額の両側には、通常の目とは別に髪飾りのような半球型をした第三と第四の目があり、それぞれが別々に動いている。

 額の両側から半球体に突き出た、第三・第四の目を別方向にグルグル回しながら、口元に手の甲をあてがった美鬼が笑う。

「きょほほほほ……そんなはずはありませんわ、イエロー・カラードの民が脳を左右別々に睡眠できる特性を悪用して、昼夜をとわず働かせていると……悲鳴に近い助けを求める声が、目安箱に届いておりますわ……きょほほほほっ」

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