ヒーローになるためには6

 酔いから覚めたえるは、視線から逃れるように恥ずかしげに俯いた。


「その…失礼したわね」


 えるは顔を赤らめて言葉を重ねる。


「別に謝ってるわけじゃないのよ!私は、あんた達のことなんか何とも思ってないんだから」


 えるの仕草にツンデレだ!などや可愛いと受験生達の言葉が飛び交かった。


 照れ隠しをするえるに男性受験生達は胸がドキドキする。


 えるは、会場の中の殆どの受験生の好意的な気持ちが私に傾いたことを感じ取ると、不敵な笑みを浮かべた。


 やっぱり人間ぼんじんってチョロいし、馬鹿ばっかりだな~。


 どうやらこの会場には、私を越えるインディヴィジュアリティを持つ受験生はいないみたいね。


 そうこうしてる内にポンピンパンポーンとアナウンス音が流れてえるは時計を確認する。


「ヤバッ、時間過ぎてるし」


 元気系少女えるさん、面接開始の時間が押しています。至急面接を開始してくださいとアナウンスが流れる。


「了解でーす」


 えるはビシッと敬礼をすると受験生に向き直った。


「はーい、静かに。今から面接を開始します」


 受験生達はようやく面接が始まるのかと気を引き締めた。


「最終確認だけどー、面接を辞退する人はこの場から1分以内に退場してね」


 ここまできて面接を辞退するやつがいるわけがないだろう。


 会場の受験生達は1人として辞退しなかった。


「りょーかい、辞退者0と。今から面接を始めるね。3…2……1」


 えるはポケットからスイッチを取り出すと、そのスイッチを躊躇いなく押した。


「ゴンっ」


 受験生達は全員地面に激突した。


 いったい何が起きたのかわからなかった。


 ものすごい力で地面に叩きつけられた。


 悲鳴をあげようにも声は力で黙殺された。


 視線は地面。周りを確認しようにも頭を数ミリすら動かせない。


 この会場で地面との抱擁をを交わさなかった人物がいた。


 この会場の中に唯一の足音が響く、彼女はつまらなさそうに地面に突っ伏した受験生を上から見下ろす。


「じゃあ、面接の内容をもう1度繰り返すからね」


「今からアナウンスで10個の質問が流れるよ。YESなら立ち上がって。NOなら地面に突っ伏して」


 こんな状況で立ち上がれるわけがない。


「さてさて、全員不合格かなぁー」


 受験生達はみんな地面に突っ伏した状態で起き上がれない。


「第1の質問、あなたは自分をヒーローに向いていると思う?YES or NO…」


「ふっふっふっ、どうしたの?みんなNOかな?」


 立ち上がりたくても立ち上がれない。


 体が重い、これはおそらく人工重力負荷装置による重力負荷が原因だろう。


 この装置を分かりやすく話すと、この空間の人間にかかる重力の負荷を操作できる装置である。


 地球上では人体にかかる重力は、体重に比例するのだ。


 もし、人体にかかる重力が10倍になったとする。その環境では体重も10倍となり、人間はその負荷に耐えきれないだろう。


 それから質問は1から8が終わり、第9の質問へと移行した。


 第9の質問、ヒーローは悪に勝たねばならない YES or NO


 立ち上がれる者は誰もいない。みんな必死に立ち上がろうとするが、身動きすら取れない。


「どうしたの?みんな不合格になっちゃうけど」


 えるは壇上の上でチアダンスを始める。


「ほらほら諦めないで、頑張れ」


「クソが、俺はヒーローになるためにここまできたんだ。こんなところで落とされてたまるか」


 この負荷をはねのけて数人の受験生が立ち上がった。


「おお、いいね♪」


「次は最後の質問だけど、立ち上がれた子は特別に合格にしてあげるよ」


 さて、何人合格できるかな♪


 第10の質問、あなたは困っている人を助ける?YES or NO

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