年に一回死にたがる彼女
@kenwolf
第1話…冬の東京の屋上
「君は自殺するのだから死ぬ前に一度位人助けをしてもバチは当たらないハズだ!」
男の顔を見て日奈子は正直『面倒な事になったな…』と思っていた…そう…どう贔屓目に考えても『この男はバカ』だとしか思えなかったからだ…
どうせ人生一回の死ぬ舞台、厳選には時間をかけた
数日東京を移動しまくりセキュリティや景観…最後に見る風景なのだ、富士山位は見えた方が良いと思う…そしてなるべく人様に迷惑のかからない事…
もう何日もビジネスホテルに宿をとって懸命に探してやっと決めたこのビル…確かに『バカが屋上に居ないか?』は項目に入ってなかった…
「もう本当に邪魔をしないで」
「だからヤラせてくれたら一切止めない」
「何で私なのよ!」
「勿体ないからだ」
「勿体ない?」
「そう、君は鏡を見た事が無いのか?」
急にキョトンとなった
「あ、あるけど…」
「なら分かるだろ君は平均より遥かにカワイイ、こんなカワイイ人をこのまま自殺させたら勿体ないオバケが出る、自慢じゃないが俺はオバケが怖いんだ!」
力説するこの男、確かに二枚目では無いがそこまで女性に相手にされないとも思えない風体をしていた
「嫌だと言ったら?」
「邪魔する!全力で!何なら警察呼んじゃうよ?」
「警察呼んで困るのは貴方もでしょうが!」
「それはそうだが…じゃあ…なんかお節介そうな団体呼ぶ!」
「そんな団体知ってるの?」
「スマホをナメるなよ?」
勝ち誇った顔でスマホを取り出す辺り、本当に馬鹿なのだろう…
日奈子はため息を吐いた…多分この男は本気だろう…
「ホテル行ったらもう邪魔しない?」
「しない、ぶっちゃけ君が何で自殺したいかとかどうでも良いから」
この男に無駄に時間を費やすより2時間後にまたここに来た方が手っ取り早い…日奈子はそう判断した…というか判断するしかない程に相手がバカだった
ホテルに向かう途中、本当に何も聞かれない事に日奈子は少し戸惑った、東京の人は冷たいとは聞いた事があるが、質問なんて名前位であとはスキップじゃないの?位の軽やかな足取りで横を歩いているだけだった
多分本当に体以外に興味が無いのだろう…
ホテルに着きシャワーを浴び、相手と変わると日奈子はベッドに寝転んで天井を見た
予定なら今頃死んでた…
死ぬ事は前々から決めてたし怖くは無かった、でもあのままもし彼が居なかったら誰にも見られないまま死んでたワケで、それはちょっと淋しいかな…なんて思っていた…
「今何時?」
飛び起きて日奈子は言った
あのまま寝てしまったのだ
「夜中の0時20分」
男は答えた
「しくじったぁ…ここのところ自殺に向けた準備とかで殆ど寝てなかったし飛び降りたら永眠出来るとって思ってたし…あぁしくじったぁ…」
日奈子は飛び起きるとスマホをいじってる男に詰め寄った
「起こしなさいよ!アンタ体目的でしょ?襲うなり起こすなりするのが普通じゃないの?マジで使えないんだけど!」
「だって気持ち良さそうに寝てるから…」
「辞め辞め、日付け変わっちゃったら自殺する意味ないし…ここ割勘で良い?あと着替えるけど覗かないでね」
日奈子は服を持つと脱衣所に入ってドアを閉めた
「待てよ、ここまで来て無しかよ」
「自殺を止めないのが交換条件でしょ?自殺しないんだからエッチも無し」
ドアを開けないあたりがバカでも紳士なんだろう
「じゃあ飲みに行こう、朝までやってる居酒屋知ってるし」
「冗談、アンタみたいなバカと呑んでる暇ないの」
日奈子は財布からお金を出すと男に渡した
「じゃあ連絡先教えてよ、自殺したくなったら行くから」
「殴られるのと蹴られるのどっちが良い?」
日奈子は男の胸倉を掴んだ
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