第49話 はい、わかりました! 楽しみにさせてもらいます!
「それでは護衛お疲れさまでした」
一週間に及ぶ護衛を終えたケイたちのパーティーは、多少のトラブルはあったものの無事に自分たちが住む街へと戻ってきた。
「こちらこそっ! 予定より早く仕事が終わってよかったね」
労いの言葉を口にするカタリナにリーンは笑顔で返事をする。
年が近いこともあってか、二人はそれなりに打ち解けたようだ。
「ここからは別な護衛が来る予定なんだっけ?」
ケイはカタリナから聞かされていた移動スケジュールを思い浮かべた。
「ええ、確か三日後に迎えが来るはずです。その時に次に治癒すべき人間の指示書が教会から届けられるので、どこに向かうのかはまだわかりませんけど」
教会としてもカタリナ程の聖力を持つ聖女を遊ばせておくつもりはない。
これまで通りに王国を転々とすることになるだろう。
「カタリナ様。そろそろ宿の中にはいりませんか?」
カタリナたちが和やかに話をしていると、お付きの神官が話し掛けてきた。
彼女は冒険者の身分のリーンが教会でも上位存在の聖女であるカタリナと仲良くしていることが気に入らないようだ。
「疲れているようでしたら今日はもう休んで頂いて結構です。私はもう少し彼女と話をがありますので」
そういった雰囲気を感じ取ったカタリナは、極めて事務的に神官に対応する。
「そうですか……。では私は先に休ませて頂きます」
聖女であるカタリナの言葉に逆らう権限がないのか、神官は一礼すると宿へと入って行った。
リーンはその姿を見送り、神官がいなくなったのを確認すると……。
「そうだカタリナ様。出発までまだ余裕があるんだよね?」
「ええ、そうですね」
「だったらラケちんに会っていったらどうかな?」
護衛の際にラケシスと仲良くしていたと聞いたリーン。時間があるのならどうかとカタリナに話を持ち掛けた。
「それは……ご迷惑にならないのでしょうか?」
旅の際にリーンが住むアパートの管理人の話を散々聞かされたのだ。
非常に器用で料理から道具の製作までこなすらしく、その気配りの凄さにアパートの住人全員が心を掴まれているとか。
リーンがことあるごとに「アパートに戻ったら駄目人間になるぐらい甘やかしてもらうんだ」と言っていたので、ここで訪ねても良いものか考えた。
「勿論だよっ! ラケちんも喜ぶだろうし!」
遠慮気味に表情を曇らせるカタリナを、リーンは両手を広げて誘うのだが……。
「おい、あまり強引に誘うなよ」
「なんでさ! このまま宿であのむすっとした神官と一緒より絶対楽しいのに」
ケイに止められてリーンは言い返す。
「そろそろ聖女様に失礼だろ。そもそも、あんなボロアパートに聖女様を招待できるかよ」
「なにおう! 今は結構綺麗じゃない!」
売り言葉に買い言葉で喧嘩を始める二人。そんな二人を見たカタリナは……。
「ふふふ、本当に仲がよろしいのですね」
「みろ、お前のせいで笑われただろ」
「ケイが悪いんだよ!」
「流石に当日にお邪魔するのは迷惑になるかと思います。なのでもし宜しければ後日お邪魔させていただくわけにはいかないでしょうか?」
カタリナはそう提案をした。それならばリーンがその管理人に甘える時間を奪うこともないし、ラケシスの都合を聞くこともできる。
「うぅーん。その方が確かにいいかも。じゃあ後日っていうことでいいかな? 絶対にきてよねっ!」
「はい、わかりました! 楽しみにさせてもらいます!」
リーンの言葉にカタリナは笑顔で答えるのだった。
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