第27話 これで元通りかな?
「ふぁ……流石に眠いな」
牧場主と約束してから数日。アースはレンタル工房に籠ると魔導具を作り続けた。
「それにしても、思いのほか時間が掛かったな……」
食材を加工するための遠心分離魔導具などは鍛冶スキルと大工スキル、付与スキルを駆使して完成させた。
「とりあえず喜んでくれていたし、これで元通りかな?」
ラケシスが破壊してしまった部分をアースは完璧に埋めることができた。
「あとは街に戻ってラケシスさんと話をして……っと」
寝不足のためにふらつく。アースは特殊な魔導具を作るために何日も徹夜をしていたのだ。
「だ、大丈夫ですか? 顔色が悪いですよ?」
たまたまふらついて手をついた場所は治療院だった。
治癒士の女の子がアースを心配して駆け寄る。そして肩を抱くと……。
「ああ、このぐらいは平気だよ。それより帰らないと……」
一度眠気を意識してしまったアースの足取りは危うい。
「駄目です。そんな状態で動いてたら馬車に撥ねられますからっ!」
治癒士の女の子はアースを呼び止めると治療院へと押し込むのだった。
「すいません、一般の場所は現在あいてなくて……ここ重体の人が入る部屋なんですけど」
たまたま事故があったらしく、治療院の中は混みあっていた。
「うん、別に構わないですよ。単なる寝不足なんでベッドを提供してもらえるならどこでも」
アースはそう言うとベッドへと横たわった。
現在は他に重傷者がいないのでアース1人になる。
「それでは私は治療があるので戻ります。ゆっくりしていってくださいね」
そう言って出ていくのを見届けたアースは、
「流石に5徹はやり過ぎたね。気が狂いそうなぐらい眠いや」
一度魔導具作りを始めると熱中してしまい睡眠や食事をおろそかにしてしまう。
「ちょっと眩しいな……」
アースは布を取り出すと顔にかけた。
「よし、これで一休みをしたあとは街に戻って……」
ラケシスの顔が浮かぶアース。
「……ラケシスさんに言わな……きゃ……」
今後の予定を考えながら眠りにつくのだった。
「早くっ! アースに会わないとっ!」
「ラケちんっ! こっちだよっ!」
あれからリーンに事情を話すと2人は馬車に乗り隣町へと向かった。
「今日に限ってどうしてこんなに混んでいるのよ……」
人をかき分けて進むのだが、目的の治療院が近づくに従って人が増えている。
「まさか本当に何かあったんじゃ?」
移動しつつ聞こえてくる会話を拾うと、何でもそこそこの爆発事故があったらしい。嫌な予感がしつつも歩く速度を上げるのだが。
「とにかくラケちん! 治療院に行ってみよう!」
2人は治療院へと向かうのだった。
「どうなってるのこれ?」
リーンとラケシスは息を切らしつつ治療院の中へと入って行く。
するとそこには軽傷の人間が多数いて病床を埋め尽くしていた。
「走ってる最中に事故がどうとか言ってたからだと思うよ」
キョロキョロとあたりを見回しながらアースを探すリーン。だが、治療を受けている人間の中にアースはいなかった。
「あっ、事故で怪我をした方ですか? 現在治療の順番待ちです」
治癒士たちが治療にあたっている。どうやら今が忙しさのピークらしい。
「ちょっとっ! アースを知らないかしら?」
だが、そんなことは関係なしとばかりにラケシスは治癒士へと詰め寄った。
「アースですか? 先程の事故で集まってきた患者さんたちはここにいるだけなんですけど……?」
「実は私たち人を探してるんです。多分1週間前にここに来ているはずの……」
リーンはアースの特徴を治癒士へと伝えた。すると……。
「ああ、あの人の知り合いでしたか」
得心がいったのかそう答える治癒士に、
「アースはどこにいるのっ!」
ラケシスが詰め寄る。すると……。
「あの人なら重傷患者が入院する奥の部屋に……」
その言葉にはじかれるようにラケシスは駆け出す。
「あっ、ラケちん! おいていかないでよっ!」
リーンも慌てて後を追う。そして…………。
「わぷっ! ラケちん。急に止まらないでよね」
リーンが抗議するが、ラケシスからの反応はない。
「ラケちん?」
不思議に思ったリーンが前を見ると……。
「嘘でしょ……?」
そこには顔をに布を掛けて眠っているアースの姿があった。
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