第37話 魔王少女の未来予想図
一糸まとわぬ姿の少女が目を開けた。
「ふわ~あ……たっぷり寝てしまいました~」
ベッドでゆっくりと体を起こすクロース。自分の左右を見て、既に皆が起きていることを確認し、頭を抱える。
「あら~、私だけお寝坊でしたか……クエイクまでいません……起こしてくださればよかったのに……」
昨日は夜通し全員で交わり合い、気付けば寝ていた。
戦の勝利の歓喜と、どこかハメを存分に外したいという気持ちもあったため、クロースも普段はおっとりしているところはあるが、昨晩は自ら愛する男を求めまくった。
「ふふ、昨日は本当に素敵でした……それに、システィアまであんなに可愛くなって、本当にお姉ちゃんとして嬉しいです♡」
普段はムスッとしてクールを装っている妹が女として花咲かせて乱れ狂う姿を思い出し、クロースは笑みが零れてしまった。
愛する姉と妹。
そんな自分たち三人が出会って僅かな間で、同じ男を愛し、同じ男に純潔を捧げ、同じ男と三人同時に愛し合った。
本来、そんなこと魔界の姫という立場である自分たちに許されない行為。自分たちの純潔は魔界にとってとても重要であることはクロースも理解していた。
もし、その辺の男が不用意に三姉妹姫に触れようものなら、魔王の怒りを買って一族郎党根絶やしにしてしまうかもしれない。
だが、それでもクロースにもチヴィーチにも、そしてシスティアにも、クエイクに純潔を捧げたことに後悔もなければ、心配もしていなかった。
「お父様にも早くクエイクを紹介したいです……魔界に彗星のごとく現れた英雄……あの巨神兵をたった一人で十体以上も倒したのですから」
人類が巨神兵を得てから、魔王軍、魔界、そして魔族は常に劣勢を強いられてきた。
しかし、それをたった一人の個の力で打破した英雄が現れたのだ。
「むしろ、お父様のことですから……私たち三人だけではなく、クエイクに褒賞や土地のプレゼントもあるかもしれませんね♪ 土地……うふふふ、その土地で皆で沢山ブルブル仲良くしながら暮らす……素敵です♡ 子供もいっぱい、い~っぱい産んで、魔界発展に貢献しませんと!」
そんな未来を夢見ながら、どんどん幸せな気持ちになっていくクロース。
まだ、戦争は終わっていない。
人類の巨神兵はまだたくさん存在している。
しかし、クエイクと一緒ならどうにかなるかもしれないという希望の方が大きかった。
そんな中で……
「ひ、いや、いやあああああ!」
「もう、殺してくれぇ、いやだ、あ、わあああああ!」
外から聞こえる悲鳴。
その悲鳴は同族ではなく、天敵である人間たちの悲鳴。
「……はぁ……」
それを聞くだけで、クロースは少し憂鬱になる。
敵である以上、容赦はしない。
一歩間違えれば自分たちもそうなっているし、それにこれまで巨神兵を使って人間たちも自分たちに対して同じようなことをしてきたのだ。
だからこそ、戦争中ではそういった所業、凌辱、尋問や拷問が目の前で繰り広げられてもクロースは止めることもしないし、心を痛めて悲しむようなそぶりも見せない。
ただ、それでも気分が良いかと言われたらそうでもない。
特に今のように無垢な少女のような純粋で幸せな未来に胸を膨らませている最中には特に。
「私も……死んでしまったら結局地獄に落ちるのでしょうね……」
正義だとか大義だとか色々と掲げて戦争をしても、自分も最後は地獄に落ちるのだろうと自覚しているクロース。
少し気持ちが落ち始めていた……だが……
「ううん、いけません! こんな顔をしていたら、クエイクが心配します! そんなことよりも、今は故郷に戻ってクエイクをどうやっておもてなしするかを考えませんと! 案内したいところも、食べさせてあげたい料理もいっぱいありますしね♪」
暗くなった気持ちを振り払い、クロースは無理に明るく楽しいことを考えることにした。
「そうです、そもそも私たちの結婚はどうすればいいのでしょう? 三人同時に? しかし、正妻は誰になるのでしょうか? ……子供が出来た順でしょうか? それなら、今のところいっぱい取り込んでいる私が可能性高いかもしれません♡」
そして、そのとき……
「さぁ、ご主人様、部屋に着いたぞ」
「あ、うん」
部屋の外で愛する男の声が聞こえて、より一層クロースは幸せな気持ちになってベッドから飛び降りて、ドアを勢いよく開ける。
「クエイクッ!」
「あっ……クロース……」
「んもう、どこに行っていたのですか? 皆して私を置いてきぼりなんて酷いです~」
「それは、ごめん……チヴィーチが寝かせておけって……」
「許しません!」
「え、ええ!?」
許さないと一言いうだけで、クエイクは一瞬で不安そうな顔を浮かべる。
クエイクにとっては、失敗や、自分が尽くすと決めた相手から怒られることが何よりも怖かった。
だが、クロースは……
「罰として、今日は朝からブルブルしましょう♡」
「え?」
クエイクに抱き着くクロース。
その胸に飛び込んで体を擦りつけ、頬を何度もクエイクの顔に擦りつけ、頬や唇にキスの雨を降らせて甘える。
そもそも、全裸で寝ていたクロースは、既に今からでもブルブルを始められる準備は整っていたのだ。
「あ、うん! それでクロースが許してくれるなら」
「ふふふ、では早速です♡」
クエイクもホッとしてクロースと抱き合いながらベッドへと……そこに……
「ま、待て、ご主人様! そ、それはあんまりだ! 我は、我はおあずけというのか!? せめて一緒に、一緒にブルブルしてくれ、ぶひ♥ わん♥ ぶひ♥ わん♥」
自分がブルブルされるつもりだったハーラムは慌てて二人の後を追い、そのままベッドへ飛び込んだ。
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