第34話 帝国姫の目覚め1
私があなたと初めて会った日のことを覚えているかしら?
――あら、随分と小生意気そうな兵器くんね
――よろしく……
女神さまから人類に与えられた神兵器の一つ。多くの兵たちが巨神兵に目を輝かせて注目する中、ちゃっかり紛れ込んでいたあなたを私は手元に置いた。
――戦う機能がない? ブルブルマッサージ? ふ~ん
あなたは本当に役に立たなかった。
身長が大きいわけでもなく、目つきもあまり良いとは言えない男の子。
剣も使えない。魔法も使えない。武力があるわけでもない。
使えるのはブルブルのマッサージだけ。
いつもムスッと拗ねたような顔をしてイジけているあなたを、次第に私も放っておけなくなり、いつしか弟のように思い始めていたわ。
――あ、あぁ♡ 気持ちいいじゃない……へぇ、あ~、体に染みるわぁ……うん、いいわ、そのブルブルマッサージ……効くぅ~♡
――うん。俺、これからいつもでどんなときでも、言われたら必ずマッサージするよ。どんなときでも言って欲しい
――ええ、頼むわね。それと、皆にも教えるから、皆にも今度からやってあげなさい。きっと喜ぶわ
――喜んでくれるなら、俺やるよ……
あなたは少し変わっていた。いつもムスッとしてるのに、こっちが何か頼みごとをしたり、それを喜んだり褒めたりすると、本当に嬉しそうにしていた。
人の命令、人から必要とされ、人に喜ばれ、人に褒められ、そんなことを何よりも生きがいにしているようで、マッサージという役目を与えてからのあなたはとてもイキイキとしていた。
カワイイ弟がやりがいをもって生きている姿に私も嬉しくなって、あまりにもカワイイものだからついつい私もギュッとしたくなって……
――ねえ、ジェラシ……
――なぁに? って、姫って呼びなさ……ううん、二人の時は構わないわね。それで、なぁに?
――俺って……ジェラシにとって必要な存在?
――ど、どうしたの? 急に……
私がいつものようにベッドの上でうつ伏せになって、あなたに背中をブルブルマッサージされているとき、あなたは唐突に聞いてきたわね。
――え? 兵たちに使えないってバカにされた?
私が彼に構い過ぎていたことも要因の一つかもしれない。兵たちが彼に嫉妬したり、姫である私が彼にべったりなものだからそれを面白く思わない人たちが、私の見ていないところで彼を中傷して、彼が傷ついていたことを知った。
――落ち込まないの。あのねぇ、君はこの帝国の姫をいつだって癒す力が備わっているのよ? もっと自分を誇りなさい
弟のようにかわいがっていたあなたが、捨てられた子犬のような目で悲しんでいるものだから、私は何とか励まさないとと思い……
――あなたが役に立ってるか? 少なくとも私はあなたを一生手放せないわね。これが無いともう眠れないのよ~
そして嘘のない言葉を彼に伝えた。
――ジェラシッ!! 俺、ありがとう! 俺、俺これからも頑張るから!
――ッ!? もう、かわいいわね!
――あっ!?
その私の言葉に、あなたは目を輝かせて喜んで……もうそれが溜まらなくて、私は寝返りを打って仰向けになり、思わずあなたを抱きしめてしまった。
思えばそれが、全てを変えてしまったのかもしれない。
――ッ!?
――ブルブルブルブル♡
私の背中にマッサージの最中、あなたの両手はまだ振動状態のままだった。
それなのに私は仰向けになって抱きしめてしまったことで、本当に偶然……偶然だけど、あなたの振動している掌が……
――あっ♡ ん♡ ……ッ!?
女性の一番大事な箇所。生涯婚約する相手にしか見せることのない絶対的な聖域。秘所。
あなたの掌がそこに触れた瞬間、私は人生で初めての声を上げてしまった。
――い、今の、いま……ッ!
――ジェラシ?
私も姫として経験がなくとも嗜みと情操教育の一環としての知識はあった。でも、正直私には「そういったこと」にそこまでの興味がなかった。
そんなことよりも、立場を越えた気の合う仲間たちと共に笑い合ったり、戦場で駆け抜けて、勝利の喜びを肴に皆と一緒に居ることの方が生きがいだと思っていた。
まだ十代の私にもこれまで数多くの縁談の話は合ったけど、それは皆断った。人類の勇者と呼ばれたセルフとの婚約すらも私は断った。
だけど、そうやって異性に一切触れさせなかった私の体に、あなたは振動付きで触れた。
その瞬間、私の体と心は眠っていた女を目覚めさせてしまった。
――はあ、はあ、はあ……はあっ、い、今の……
――どうしたの?
背徳感が全身に押し寄せた。ダメだということは分かっている。
私は帝国の姫。
私の体は私一人だけのものではなく、帝国の財産の一つでもある。
好きにしていいものではない。
そんなこと分かっていた。
――ね、ねえ……
でも……そんな常識や理性を無視したくなるほど……ほんのわずかにあなたの掌が股に触れただけなのに、感じてしまった……気持ち良かった……もう一度、もう少し、もっと触れて欲しいと思ってしまった。
何よりも、今まで弟のようにかわいがっていた男の子のことが、どんどんどんどん欲しくなってしまい……
――あなたのマッサージ……肩とか背中とか足とかだけじゃなく……ココもできる? コ・コ♡
そして私はその本能にもう抗うことは出来なくなってしまった。
――え? ……うん、『そういうこと』もできるよ? ジェラシが『そういうこと』を望むなら、いっぱいできるよ?
――ッッ!!??
あなたは「命令」という形であれば何でもしてくれた。
だからこそ、一度その味を知ってしまったら、もう元には戻れなかった。
そこから先は何もかもが早かったわね。
――あとがき――
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