第2話 女魔族三人の尻との出会い

 一人の少年の意識が覚醒した。

 目を開けると空が曇っている。

 自分の今の状況を確認する。周囲が瓦礫に囲まれている谷底のような場所。近くには川が流れている。

 

「俺は……どうしてこんなところにいるんだ? ここ……どこだ?」


 自分の体を見る。特に痛みや怪我がないことを確認して安堵する。

 しかし一瞬落ち着いた途端、少年はあることに気づいた。


「えっと、俺は……あれ? 俺……誰だっけ?」


 何故、自分がここにいるのか以前に、そもそも自分は何者なのか。少年は途端に頭を押さえて取り乱した。


「え? あれ? あれ!? え? うそ、おれ、誰だっけ? え? なんで? ここどこ? なに? なんなんだ!?」


 記憶が無かった。上に広がっているものは「空」、周囲にあるのは「瓦礫」、「川」という名称は覚えている。

 しかし少年は自分に関することを一切覚えていなかった。


「俺は一体誰なんだ!? ここはどこだ!?」


 恐る恐る自分の手足を見て、自分の顔や頭に手で触れてみる。

 そのとき、少年はハッとして、近くに流れる川を覗き込んでみる。

 水面に反射して写る自身の顔。


「これが……俺なのか?」


 年齢は分からないが、赤みがかった髪、自分ながらも生意気そうなツリ目の三白眼の『左目』。

 手足も普通の長さだと思われる。

 着ている服装は、黒いブーツに黒いだっぷりとしたニッカボッカーズ。

上半身は肩口で切られた白いシャツを肌の上に着ているだけ。

 特徴的なのは……


「俺の右目の周り……」


 顔の右半分……右目とその周囲が明らかに普通のものではなかった。

 鉄のようなものが埋め込まれ、その瞳も赤く光っている。


「なんだろう……これ……ん?」


 右目の周りが気になって触れていた時に、もう一つ気になるものを見つけた。

 首に銀色のタグのようなペンダントをぶら下げていたのだ。

 気になってペンダントを手に取ってみる。するとそこには文字が刻まれていた。

 その文字を少年は読むことができた。


「数字がいっぱい……そして……Qua……ke? Quake? クエイク? ……クエイク? って書いてある……俺の名前なのか?」


 書かれた文字や数字を繰り返してみる。しかしそれでも少年はまるでピンと来なかった。

 自分は誰なのか? どこから来たのか? 何でここに居るのか? 家族は? 仲間は? 友は? 故郷は?

 何も分からないからこその恐怖に少年の心は暗くなるばかりだった。


「クエイク……俺、誰なんだ? クエイク……」


 自分の名と思われる「クエイク」という名前。ピンとは来ない。だが、何かを思い出すかもしれないと、必死にその名前を少年は……クエイクは何度も繰り返した。

 そして、その時だった。


「……ッ!? な、何か来る! 数、いっぱい……崖上……右斜め上45度の位置から5体…………え?」


 クエイクは何かの気配を「感知」した。

 同時にクエイクは疑問に思った。なぜ、まだ見えもしない何者かが現れる正確な位置、そしてその数までも分かったのか。

 しかし、そんなことを冷静に考えている場合ではなかった。

 何故なら……


「な、なんだ? 地面が、ゆ、揺れてる?」


 地面に大きな振動を響かせて、巨大な何かが複数近づいてきているのが分かった。

 そして徐々に近づくその何かは、やがてクエイクの目の前に姿を現した。


「で、デカい?! な、なんだこれは!?」


 それは、白銀の兜と鎧を纏った巨人。

 その手には、その体躯相応の巨大な剣。

 その巨体はクエイクの全身を包む大きな影を落としながら、クエイクを見降ろしてきた



『魔王軍を追ってきたところで、思わぬ発見……まさか……生きていたとは……』


「ッ!? しゃ、しゃべっ……」



 巨人が喋った。自分を見て人の言葉を発した。

 そのことがクエイクを更に混乱と恐怖を抱かせた。


――コレは一体何なんだ?


 と。

 しかし、そんな自分の様子に構うことなく巨人は話す。


『せっかく姫様が最近落ち着かれてきたのだ……貴様が生きていたなどと分かればまた……』


 そして、巨人は自分のことを知っているような様子だった。

 自分のことを知っているなら教えて欲しい――――と、クエイクが尋ねる間もなく……



『勇者様に代わり、今度こそ完全に始末してやろう』


「ッッ!!??」



 その言葉を受けて、クエイクは身震いした。



――壊される!?



 と、全身が理解し、恐怖で全身が竦んでしまった。

 誰かは分からない。

 しかし、味方ではない。

 自分を壊そうと……



「諦めてはダメなのです。逃げて生きるのです!」


「……え?」


「レビテーション!!」



 どこからともなく、強く、しかしどこか必死さを感じさせる声が響いた。

 そして、同時にクエイクは異変に気付く。



「わ、な、なんだ? 体が急に浮いた!?」


『なに?』



 地面に両の足で立っていたはずのクエイクが、まるで何かに引っ張られるかのようにその体が宙に浮き、そして何かに引き寄せられる。

 巨人も驚いたように目を見開き、クエイクの行方を目で追う。


「ど、どうなってんだ? 何が……え?」

「さあ、こっちです!」


 そして、再び聞こえた声にクエイクが顔を向けると、その先の空に一人の少女が……


「君は……ッ!?」


 ふわふわとした長い髪は白銀に染まり、その頭部からは二本の角。

 気品の感じる、肩を出した白い薄着の服と短いヒラヒラのスカート。

 そしてその短いスカートの下は……


「ちょ、ちょちょちょぉぉ!?」

「さぁ、こちらです!」

「ちょ、み、み、見え、見えてるって!?」

「よいしょっと! はい?」


 下から引っ張られたクエイクには、ヒラヒラと舞う少女のスカートの下の真っ白い布をハッキリくっきりと見えてしまった。腰のあたりで紐で結ぶタイプの下着であることまでハッキリと。

 しかも、後ろはほとんど尻に食い込んでいるタイプなので、プリンとした美しく柔らかそうな白い生尻までガッツリと。



――白のフリルTバックかわいい、やわらかそ、肌きれい、白、ガーターベルト大胆!?



 しかし、少女は恥ずかしがる様子も気にする様子もなくクエイクの手を掴んだ。 


「こんにちは」

「だ、だだだだ、誰、きみ?」

「私はクロースです。魔王少女クロースと最近では名乗るようにしました」

「ま、おう?」

「ええ。いずれはお父様のような立派な王様になれるよう、日々ガンバしてます!」


 柔らかな微笑みと共に発せられた少女の名前。

 少女、クロースは手を伸ばし、クエイクの手を握って引き寄せる。

 そして同時に……


「お耳を塞いでください! エクスプロージョン!」

「へっ」


 クロースが反対側の手で握っていた杖が、奇妙な紋章を浮かび上がらせ、それを振り下ろしながら言葉を発した瞬間、崖下で巨大な爆音が響き渡り、巨人の集団が爆炎に巻き込まれた。


「なな、なに? え、い、今の……す、すごい……」

「うふふふ、どんなもんだい♪ です!」


 先ほど自分が居た場所が、空まで昇るほどの巨大な爆炎に包まれている。

 その力を目の当たりにし、呆然とするクエイクにクロースはドヤ顔を見せて微笑む。

 そして、その爆音と同時に……



「今だ、一斉攻撃なのだぁぁぁあ!!」


「「「「「うおぉおおおおおおおおおお!!!!」」」」」



 巨人の存在を感知できたのに、コッチをクエイクは何も気づくことが出来なかった。

 深い森の茂みの奥から突如飛び出してきた武装した集団。それは軍。

 それを先頭に立って率いるのは……



「姿は巨人であろうと、中身は小さき人間! 股のプラプラだってとんでもなくちっちゃいのだぁ! 恐れることなく、ぶっ殺すのだぁ!」



 宙に浮かびながら、荒っぽい指示を出す……長い茶髪の幼女。

 布面積が極限まで狭い極小の赤紐ビキニを纏う大胆な恰好をした幼女は、フサフサの獣耳と太い毛の尻尾を生やし、クロースと同様に二本の角を額から伸ばしている。

 幼女もまた、下着が尻に食い込むタイプなので、小さなプリっとしたツルツルな尻がプリンと光って見える。

 そして……



「巨大な鉄くずに隠れた姑息な人間どもを引きずり出し、血祭だ!!」



 もう一人幼女と一緒に指揮する、褐色肌の大人の女が居た。

 クロースとも幼女とも違い、身長も高く、ウェストは引き締まっていながらも、尻や胸などは豊満に揺れている。

 下半身は黒い紐状の下着を穿き、豊満な胸元だけを隠す鎧を胸に当て、その背には短めのマント、手には長く禍々しい槍。

 尖った耳と、クロースや幼女同様に額から伸びる二本の角。

 褐色の尻にも紐が喰い込むタイプの下穿きのため、ボボンとした形の良いデカい魅惑の尻が丸出しである。



――なんだ、この可愛かったり美人だったり、エッチな姿の三人は!?



 記憶もなく、自分のことも状況もまるで分からないクエイクがこの場で出会う、三者三様の乙女。


 

 そしてこの三人との出会いが、クエイクと乙女たち、人と魔の運命、そして世界を揺るがすことになる。

 


「あら? あなた……ひょっとして……人間ですか? ん? でも少し違うような……」


「え? 俺は……」








――あとがき――

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