不可解なことは思いのほか少ない
時は過ぎ、自宅。
ベッドに倒れ込んだ俺は、これからのことを考える。
正味、理屈は既にほとんど完成している。
あとはこれをいかにして使うかと、この理屈の補強ができるかどうかくらいだろう。
俺が考えているのは別のことだ。
松本が無実だと仮定したら、誰が何故これを仕組んだのか。
告発されている以上、松本は無罪なのに北条と答案が一致する事態が明るみに出るよう、何者かが意図的にこの状況を作り出している。
では誰がそれを行ったのか。単なる無差別な愉快犯?それとも松本に恨みがある人物?どちらにせよ、犯人候補が多すぎる。
けれど、それは単なる可能性の話だ。テストの四択問題の確率が二五%ではないのと同じで、この犯人探しも恐らくは等確率でない。第一、不特定多数の犯人にならない理由はある。
とは言っても、それを探し出して、吊るし上げるつもりはさらさらない。俺がそれでスカッとするなら話は変わるが、俺は勧善懲悪が好きというわけではないし、シャーデンフロイデに浸って快感を覚える趣味もない。
だから、この件を「解決」するにあたって、犯人を見つけ出すという手法を取る予定はない。ただ、純粋な好奇心ゆえに気になる、それだけ。
仮に「答え合わせ」の時が来るなら、再び問い直すことにしよう。
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