スキャンダル

カンカンカンカン!


「ん〜、うるさい……」


「お兄ちゃん朝だよ!起きて!」


「ん?雪……?」


「お兄ちゃんの可愛い妹の雪だよ!早く起きて!遅刻しちゃうよ!」


「ああ、おはよう……」


「うん。おはようお兄ちゃん。ご飯出来てるから早く来てね!」


雪にフライパンカンカンで起こされた俺は不機嫌を顔に貼り付けたままゆっくりと制服に着替えた。


「あ、やっと来た!もぉ〜寝癖くらい直して来てよ!」


俺は席に着きご飯を一口食べる。その間雪は俺の寝癖を直してくれていた。

頭が揺れて食べずらい。


「はい直った!それじゃぁ私先行くから戸締りよろしくね!」


「ああ」


今日も雪は慌ただしく出て行った


「あの……お兄ちゃん……」


「ん?」


出て行ったと思っていた雪が戻って来た。


「どうした?忘れ物か?」


「あの……その……」


雪はモジモジし始めた。


「トイレか?早く行けよ」


「ち、違うよ!……あの……」


「行ってらっしゃい」


雪の頭を撫でる。


「あっ、うん!行ってきます!」


のんびりと食べ進め気付けば家を出る時間になった。

学校に近付くにつれ生徒の数は多くなりいつも通り校門前は逢坂を囲む人波で溢れかえっていた。


人混みの中央。逢坂はいつも通り無機質な顔で昇降口までの道を歩く。周りの生徒の事は目に入って居ないようだ。


不意に人混みの隙間から逢坂と目が合った。気がした。

逢坂は俺。もしくは別の人物に対し口角を微弱に上げ笑った。

周りの反応を見るにそれに気付いたのは俺だけのようだ。


「おはよう。京!」


「おはよう。鏡」


「おっ!珍しいな!」


「何がだ」


「お前が挨拶を返すなんて、いつもは「ああ」とか「ん」とかしか返さないのに、何かあったか?」


「何もないよ」


本当に何も無い。ただ、たまには返そうと思った。それだけだ。


「そうか?それより!聞いてくれよ!」


「また、逢坂か?」


「何で分かったんだ?」


「お前の話題の大半は逢坂関係の事だからな」


「よく分かってるな」


鏡は笑う。


「それで、今度は何だ?」


「興味があるのか?」


「どっちにしろ話すだろ」


「まあな。それで実はな昨日の放課後逢坂と廊下を歩いていた生徒がいたそうだ」


俺は飲んでいたパックの抹茶オレを吹き出しかけた。


「大丈夫か?その気持ち分かるぞ」


鏡の同情の目が俺の心に深く突き刺さる。


「どこ情報何だ」


「情報の発信元は新聞部だ。見なかったのか?廊下にその写真貼ってあるぞ」


「見てくる」


抹茶オレを机に残し俺は新聞が貼っておる廊下に出向いた。


「おおー、流石の人集りだな」


何故か鏡も来た。


人混みを掻き分けると『速報!あの逢坂夏向が放課後の校舎で男子生徒との蜜月!?』と言うタイトルの元、俺と逢坂を後ろから撮った写真がでかでかと貼ってあった。

油断した。周りにもっと注意を向けるべきだった。


俺は今どんな表情をしているのだろう?


怒った顔?悲しい顔?それとも超絶面倒臭い事が起こるのを理解した顔?

いずれにせよ。いい顔は出来ない。


「いやー、にしてもあの逢坂がなぁ。隣の男子生徒は全校生徒の敵だろうな」


全校生徒の敵が今ここにいるけどね。


幸いと写真は後ろ姿しか映されていない。逢坂は白い長髪で分かるが、黒髪の俺は後ろ姿だけでは特定が難しいだろう。


俺は頭を抱えた


どうする?


面倒事は勘弁だ。


鏡に助けを求めるか?いや、巻き込みたくは無い。

なら、逢坂に誤解を解いてもらうしか無い。


いや、それも無理か?どの択を取っても望みは薄い。

どうする?


「どうした京?大丈夫か?」


心配そうな顔で俺を覗き込む鏡に「大丈夫」と一言残し一足先に俺は教室に戻った。


昼休みになるまで考えた結果まとまった答えは見つからなかった。

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