3. 双子の試練
◇◆◆◇
宝物庫の一角の壁や台座に立派な意匠を施された武具が並べて飾られている。
どれもが名工が打った得物か、もしくは
属性効果が付いた
最初に視て思ったことは、不釣り合いすぎて奇妙な違和感しかなかった。そして次は何かが滲み出すような、湧いてくるような力を感じたのだった。……何故か目を離せなくて、まるで、さあ手に取ってくれと言わんばかりの存在感を主張している気が、した。
(うーん……魔剣かな? 呪われたら……まあ大司教様にお願いしよっと。どうせ暇そうにしてるだろうし)
力は感じるけどさして
「この剣、スゴイ魔力を感じる……あれ? 抜けない」
錆びているからかな? と思い、力を込めるけどまったく微動だにしない。両足で動かないように挟み込み両手で思いっきり引き抜こうとしたり、色々試してみたけどダメだった。何というか抜ける気がしなかったのだ。そして試しに
「ねー二人とも、なんか変な物があるよ~」
ミューンの間延びした声が少し離れた所から聞こえたので少し気が抜けた。
◇◇
「おー如何にもな邪気を感じる……ちょびっとだけど」
「随分と古い封呪の札だね。箱の方もだいぶ傷んでるけど」
「ね、ね、ひょっとしたら大昔に大暴れした大魔族とか、邪神とか封じ込められたりして?」
「ないない」
「もしそうだとしたら、とっくに
「むしろ使役してそうだよね」
「アンタたち、
ミューンが好奇心全振りな妖精らしいワクワクしたりビクビクしたり、感情の剥き出しそのままかの如く、大仰な素振りで小さな身体で表現するのを、スレた気持ちでツッコんでいる。
棚の奥にあった箱を僕らが取り出し、宝物庫の少し広めの空間の床にそっと置かれたそれを囲むように座って検証ゴッコをしていた。封呪の札は触っただけで破けそうだし、木箱の方もちょっとの衝撃でバラけそうなんだよな。邪気が漏れているのもそのせいだと思う。何十年と放置されていたんじゃないか?
「というか、遅かれ早かれこのままだと封印解かれるんじゃ?」
「ええっ、じゃあ宝物庫の番人さんに教えないと!」
「…………」
「…………」
ああ、コイツ
僕たちはコッソリと宝物庫に来ているのだ。小国とはいえ、多重施錠、対魔法障壁、対人感知諸々ガチガチ対策された宝物庫に、だ。王家の裏技を使って遊びに来て、『ヘイ封印解きかけの怪しい箱を見つけましたゼ』と伝えたら不法侵入を許し管理不行き届きによって番人さんが路頭に迷うことになる。当然僕たちも怒られる。誤魔化すように伝えても、
リーシャが妖精をむんずと掴み、ええ子やねぇと頭をテキトーに撫でている。あ、人形遊び感覚でやってるのが判る。
「じゃ、開けるか」
「いつでもどうぞ」
「えっ? 何その流れ」
流れに乗れてないミューンが驚いてる。もちろん決まっている。僕たちで封印された『ナニか』を対処するんだ。
まあ勝算はある。確か座学で聞いた封印術は……受け皿となる入れ物は基本的に封印されるモノの力の大きさに比例する。神様なら世界半分、古代龍なら大陸一つ、竜なら山一つという風に。目の前にある小さな木箱だと漏れ出ている邪気の少なさも考慮して、何とかなるという算段だ。リーシャの魔法もあるし、僕も
「うん、面白そうだ」
「アル兄さん、口に出てる」
そして……僕たちは後悔することになる。
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