私の嫌いな私
仕黒 頓(緋目 稔)
空無な発作
自分のことが嫌いだ。
一度嫌いになると、際限なく落ち込んでしまう。落ち込めば自分の嫌いな部分が次々に出てくる。こんなにも駄目な自分が、また嫌になる。悪循環だ。
子供の頃は、こんな想いは大人になれば自然となくなるのだと思っていた。物を知らない、世界を知らない、頑是ない幼子の癇癪のようなこの自己嫌悪は、その内出てこなくなるのだと。
実際、学校を卒業してからは、幾分少なくなったように思う。けれど、完全になくなることはなかった。
日常に落ちている小さな「いやだな」が幾つも積み重なって、蓄積して、私を追い込む。いつも平気な顔をして、呑み込んで、見ないふりをして、その内消えるのを待つ。でもたまに、どうしようもなく持て余す。
そうすると、また自分が嫌になる。
私はまた、同じ場所を何度もぐるぐると回っている。少しも成長していない。
私は自分のことが嫌いで、そのくせ欠点を治す努力もせず、狭量で、他人を羨み、劣等感にまみれ、被害妄想に浸っている。伝える努力もしないくせに、誰も私の気持ちなど知ろうとも思っていないと怒る。自分が悪いと分かっているのに、私が悪いのだとは素直に認められず、最後の最後まで私はそこまで悪くないと本気で思っている。
なんて面倒臭い奴なんだ。
どうしてそんなに駄目なんだ。
何度自問したって答えはない。
今までしてきた行いの何か一つでも成果が出れば、或いは自分を認められたかもしれない。自分には存在する価値があると、こんなにどうしようもない私のことを、自分で認められたかもしれない。何においても突出せず、才能もなく、いてもいなくても変わらない私でも、何か一つ秀でたものがあれば、許せたかもしれない。
けれど、何も無い。
私は相も変わらず同じ所をぐるぐると回っていて、進歩はなく、子供のような稚拙な苦悩と自己評価しか持っていない。「いやだな」が許容量を超えれば周囲に当たり散らし、自分を棚に上げて他人を責め、そしてまた自分が嫌だと泣いて閉じこもる。
その度に、ひたひたと願う。
早く自分が終わればいい。
未練はあるけど、未練なんかない。
死にたいとまでは言わないけれど、生きたいとも思わない。
今この瞬間に、天が落ちてこないだろうか。車が突っ込んでこないだろうか。足を滑らせて、どこかに落っこちないだろうか。
そうして、呆気なく終わりたい。
氷が溶けるように、消えてしまいたい。
詮無いことばかりを考えて、また思い知る。私には、しがみつけるほどの未練さえもないのだと。
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