隣の席の美少女が何故か憐れむような目でこちらを見ているけど、僕には関係がないのでとりあえず寝る ―――ひとりが好きなぼっちだっているんですよ?―――
第431話 遅すぎた気付きはむしろ後悔を加速させる
第431話 遅すぎた気付きはむしろ後悔を加速させる
「花音、戻ったぞ」
そう声をかけながら家に上がる瑞希が、どうしてこの家の合鍵を持っていたのかは
ただ、今日ばかりはそんなことに突っ込まなくてもいいだろう。おかげで花音に無理をさせなくて済んだのだから。
「
「まだ熱はあるけど、ついさっき寝ちゃった。この様子だとすぐに良くなるかな」
「それなら良かった……」
ホッと安堵のため息をこぼしながら花音が横になっているベッドに歩み寄る瑞希の手には、冷えピタの入ったレジ袋。
唯斗とこまるには咄嗟に『映画』と嘘をついたが、薬を飲んで容態が落ち着いたタイミングを見計らってドラッグストアまで買いに行っていたのだ。
わざわざ陽葵さんを呼んでまで全員で出たのは、朝から看病している3人に休憩時間が必要だと花音が言ったから。
もっとも、他のふたりが強引に連れ出さなければ、瑞希が一切枕元から離れようとしないことを心配させてしまったのだけれど。
「寝息も落ち着いてるし、表情も辛そうじゃない。薬が効いたみたいだな」
「そもそも、真冬に外でアイスを食べたのが原因のただの熱だからね〜♪」
「馬鹿野郎、熱でも悪化したら大変だろうが」
「瑞希はカノちゃんのことになると心配性だよね」
「友達を心配するのは当然のことだろ?」
「本当にそれだけかな〜?」
「なっ、ど、どういう意味だよ……」
明らかに動揺している瑞希に夕奈と
そんな彼女の後ろ姿に「ご苦労であった!」と敬礼をする夕奈に対し、瑞希は少し大袈裟に頭を下げて見送る。
しかし、部屋のドアがガチャリと閉じると、また枕元にしゃがんで花音の様子をじっと見つめた。
少しの時間でも目を離すのは不安なのだろう。その様子を眺めていた2人が、そう心の中で呟いたことは言うまでもない。
「それにしても、まさかおだっちたちに会うとはね〜♪」
「確かに予想外だったな。ぬいぐるみのインパクトが強過ぎて気にしてなかったが」
「ねえ、マルちゃんはどんな感じだった?」
「やっぱり気になるのか?」
「当たり前じゃん! もしもう進展してたりしたら、夕奈ちゃんはもう用無しなわけだし……」
「安心しろ、特に変わった様子はなかったぞ。普通に出店を見に来たんだろ」
「一つ気になることと言えば、マルちゃんが一切スマホを見てなかったことくらいかな〜」
「それ、私も思ってたんだよ」
夕奈たちのグループに混ざった頃のこまるは、常にスマホを見ていた。雑談をする時も、学校帰りも、家に遊びに来た時ですら。
ただ、それはつまらないからそうしているわけではなく、元々一人でいることを好む彼女なりの目を合わせなくていい理由の作り方だったのだ。
だから、会話の内容をちゃんと聞いてくれていることは、他のみんなも知っていた。
しかし、最近はスマホを見ている時間が明らかに減っている。唯斗が居る時は『ほぼ見ない』と言っても過言ではないほど。
一見変わっていないように見えて、こまるも恋をしたことで内側にある価値観のようなものが大きく変わっているのだろう。
「
「恋する乙女って感じだよね〜♪」
その恋する乙女に憧れる2人は頬に手を当てながらにんまりと笑っているが、夕奈からすれば一大事である。
これまでの経験からして唯斗が見た目で自分とこまるに差をつけたりしないことは分かった。
ただ、それはロリコンだとか低身長好きではないと安堵する反面、夕奈がいくらモテモテガールだろうと関係ないということ。
おまけに彼女のライバルは一人だけではなく、元カノ&記憶喪失という立場で接近ができる晴香もいる。
いや、むしろどこまで記憶を取り戻し、復縁ルートが進行しているかが分からない状態の彼女の方が危険なのかもしれなかった。
「ああ、なんかすごい焦ってきたんだけど……」
「だから話しかければいいって言ったのにな」
「出来るわけないじゃん!」
「契約が……ってね。それがマルちゃんの作戦だって気付いた方がいいよ〜?」
「……さ、作戦?」
「やっぱり気付いてなかったのか」
クリスマスイヴに夕奈を会えないようにする。遠回しに行ったお泊まり不可侵条約によって守られた聖夜。
その事実をまだ知らなかったこのお馬鹿さんに、瑞希も風花もさすがに苦笑いをすることしか出来なかった。
「……夕奈ちゃん、イヴに唯斗君と会えないの?」
「そりゃ、イヴも1週間に含まれてるからな」
「約束だからって律儀に守ってると、大切な日に大切な人と一緒に居られなくなるよ〜?」
「そ、そんなぁ……」
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