第423話 人生は分岐無限のリアルノベルゲーム
洗濯物を畳み終えてから少しして、ハハーンから与えられた仕事を全て完了させたこまるは、ご褒美のチュッパ〇ャプスを舐めていた。
そんな彼女は
「明後日の23日のことで話があるんだけど」
「クリスマス、イヴイヴ……?」
「
「これは、
「ああ、確かに言いそうかも」
花音なら、『クリスマスの2日前ってなんて言えばいいんだろうな』という質問に対して、真剣に悩んだ末に頭がパンクする寸前で言いそうだ。
実際には去年のクリスマスイヴイヴに、何でもない日を記念日にしたくてカレンダーにそう書き込んでいたのをみんなに見られただけらしいけれど。
「お正月、イヴ」
「そこは大晦日って言おうよ」
「これは、夕奈語」
「どうせ花音のやつを真似したんでしょ」
「正解」
「さすが歩くコピー機だね」
人のネタでも面白ければ真似することを
「用件、なに?」
「あ、忘れるところだった。23日、僕は病院に行くって言ったでしょ?」
「いえす」
「ハルちゃんから連絡があって、かなり長引く可能性があるみたい」
「帰って、来れない?」
「さすがにそこまでじゃないと思うけど、悪い所が見つかれば入院にはなるからね。目の前にいるのに、放って帰る訳にも行かないからさ」
「……わかた」
夕奈であればここで駄々を捏ねて困らせられそうなところではあるが、こまるはこういう時の諦めはキッパリとしているらしい。
ただ、そこをタダで許すには勿体ないと感じたのだろう。「代わりに、お願い」と右手の人差し指を立てて見せた。
「せめて、夜だけは、一緒に、いて」
「分かった。イヴの夜は空けておくよ」
「元々、予定、無い」
「それは言わない約束だよ」
彼女も
唯斗は心の中でそう呟くと、「確かに無いけど、人に言われると少しは傷つくんだから」と冗談交じりに返したところでお互いにクスリと笑って会話が途切れた。
「……話、終わり?」
「そうだね。こまるの言いたいことが無ければ、僕は言いたいことをいえたからもう終わりかな」
「なら、あそぼ」
「遊ぶって何をするの?」
「……ババ抜き?」
「二人でやっても楽しくないと思うよ」
「
「何それ、初耳」
こまるによると、
ジョーカーは他の4枚が何かに応じて自由に変化出来るワイルドカードで、数字としては2種類しかないために強い役が高確率で作られる。
カードの入れ替えも駆け引きも無し。運だけに身を任せる2人専用のゲームだが、仲のいい人同士でやるとなかなか盛り上がるらしい。
ちなみに、夕奈たちとはやったことがあるらしいが、花音以外には勝ち越しているとのこと。
……花音は格ゲーだけじゃなく、ゲームと名がつけくものなら何でも強くなるんだね。人生はゲームだなんて思い始めたら、一体どうなるのだろうか。
「ちょうどトランプもあるから、それでもやって暇を潰そうか」
「いえす」
机の引き出しからトランプを取り出して、
ちょうどキングが1枚だけ足りなかったものの、このルールでならそもそも使わないので関係ない。なんとなく捨てずに置いていたものが、意外なところで役に立つと嬉しいね。
彼はもったいない精神を発動した過去の自分を褒めつつ、合計10枚のカードをさっさと繰り、記念すべき1ゲーム目を開始するのだった。
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