隣の席の美少女が何故か憐れむような目でこちらを見ているけど、僕には関係がないのでとりあえず寝る ―――ひとりが好きなぼっちだっているんですよ?―――
第400話 ほっぺにご飯粒がついてる人って意外と探せばいる
第400話 ほっぺにご飯粒がついてる人って意外と探せばいる
「ところで、
「僕は1月8日だよ」
「え、めっちゃ近いじゃん!」
「1週間違うだけでこれ程人間に差が……」
「んー?
「優しいなら肘で肩甲骨をグリグリするのはやめて」
「だが断る!」
悪い顔をしながら「天誅や!」と攻撃してくる彼女の注意を「僕の占いも見るから」と言って引き付け、何とか痛みから逃れることに成功。
そのまま今年の運勢を確認してみたところ、ただでさえ良かった夕奈よりも絶好調だったらしい。
自分ではそんな実感は無いので、やはり誕生日占いなんて信じるに値しないのだろうか。
「へえ、過去に別れを告げるチャンスが訪れ、新たな相手との関係を築ける年だったんだってね!」
「過去って……ハルちゃんのこと? 別れなんて告げてないよ」
「まだ今年は2週間あるし、その間に何か起こるってことじゃない?」
「そんな短時間で解決する話じゃないと思うけど」
そんな会話をしつつ首を傾げていると、1階からピンポーンとインターホンの音が聞こえてきた。
2人は顔を見合わせると、まさかと思いながらも階段の上から玄関を覗いてみる。
「あら、いらっしゃい。唯斗に何か用事?」
「いえ、特に何も無いのですが……」
「遊びに来たのね。二階にいると思うから、勝手に上がっていいわ」
「ありがとうございます!」
ハハーンの了承を得て家に上がったのは、思った通り
こんな偶然が起きるものだろうか。そう考えてしまえば、あとは誕生日占いの内容を思い出して震え上がるのみ。
やはり当たると言われているものは疑わない方がいいらしい。信じていられる方が幸せなのだから。
「そうだ、助言の欄があったはず」
「は、早く読んで読んで!」
「えっと……」
慌てて部屋に戻りながら画面をスクロールして目的の文章を見つけると、高速で読んで頭に入れる。
完璧に覚えている訳では無いが、『相手の言葉を否定しなければ上手くいく』らしかった。
それを小声で夕奈へ共有した直後、コンコンというノックの音と『晴香です、入っていいですか?』という声が聞こえてくる。
唯斗はスマホをポケットにしまうと、「大丈夫だよ」と返事をして床に正座をする。夕奈もすぐ隣で同じように腰を下ろした。
「失礼します。……あ、
「来てたって言うか、泊まってるって言うか……」
「……ついに同棲ですか?!」
「ち、違う違う! お姉ちゃんが家を空けてるから、その間だけ寂しくないようにってこと!」
「なるほどです♪」
本当に理解してくれたのかどうかは分からないが、とりあえずあわあわしていた夕奈から視線は外してくれた。
別に悪いことをしていた訳でもないと言うのに、『別れを告げる』という言葉が頭から離れない。
しかし、否定しなければいいのだ。唯斗は自分にそう言い聞かせると、深呼吸をしてから晴香と視線を交わらせた。
そう、全てを受け入れるだけ。それなら傷つけてしまうことも、失敗することもありえない。
「突然お邪魔してすみません」
「ううん、大丈―――――――ん?」
いや、早速壁にぶち当たった。
『ううん、大丈夫だよ』と伝えようとした彼は、ふと思ってしまったのだ。日本人は気遣う時、大抵否定から入るのではなくないか……と。
「どうかしましたか?」
「いや、何でもな……いこともないけど……」
「そんなに見つめられると照れちゃいますよ。私の顔に何かついてますか?」
「付いてな――――くない。間違いなく付いてるよ」
「ほ、ほんとですか?! 朝に食べたご飯粒かも知れません、取ってもらえますか?」
「……うん、わかった」
そう答えた唯斗が存在しないご飯粒を取る演技をする中、先程までガチガチに緊張していたはずの夕奈が笑いをこらえているのを見て、絶対に後でビリビリしてやろうと思ったことは言うまでもない。
「どんなのが付いてました?」
「あ、えっとね……ごめん、落としちゃったみたい」
「それは残念です。掃除機はどこにあります?」
「いやいや、大丈夫。自分でやっておくから、ね?」
「いえ、責任を撮らせてください!」
その後、どうしても見つけると言って聞かない彼女を、偶然落ちていたポテチの欠片で誤魔化し切ったことはまた別のお話。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます