第363話 将来を共にするのが異性だとは限らない
いつも通り昼休みに
「それにしてもカノちゃんって男っ気無いよね」
「彼氏候補とか居ないの〜?」
「気になる」
「お、男の子はちょっと苦手ですぅ……」
どうやら花音の恋人候補について話しているらしい。当の本人は恋愛なんて考えたことも無いと言った感じで、むしろ困っているようだけど。
そして、そんな彼女を恋バナ三人衆から守るのは、もちろん花音のお母さん的存在である
部外者である唯斗の部外者的見解からすれば、もはや彼女が彼氏になってあげればいいのにとさえ思っていることは内緒だ。
「おいおい、花音に彼氏はまだ早いだろ」
「そうです! 私には皆さんだけで十分です!」
「そう言ってくれるのは夕奈ちゃん嬉しい!って感じだけどさ。この人となら仲良くなれそうみたいなのは無いわけ?」
「仲良く、ですか? うーん……」
花音は4人から見つめられながらしばらく悩んだ後、「強いて言うなら、唯斗さんですかね?」と首を傾げる。
この言葉には恋バナ三人衆の内の2人が目の色を変え、「その話、詳しく聞かせてもらおうじゃないの」「聞かせて」と詰め寄り始めた。
「お、お友達としてですよぉ……!」
「カノちゃんと唯斗君は性格的に合わないよ!」
「それな」
「カノちゃんにはもっといい人がいるって! 唯斗君で妥協は勿体な―――――――――いてっ」
唯斗が心の中で『夕奈の方がもっと合わないんだけど』と呟いた矢先、仲間であったはずのこまるが彼女の頭を叩く。
どうやら『唯斗をバカにするな』という意思表示らしい。おかげで溜め込みそうだった
「……ふぅ。冗談はさておき、夕奈ちゃんはカノちゃんのことを心配してるのだよ」
「私を心配ですか?」
「そう。男の子に耐性のないまま大学生になったとしたら、チャラ男に狙われちゃうかんね」
「そ、それは恐ろしいですぅ……」
「ついでに夕奈ちゃんも狙っちゃう」
「どうしてですか?!」
「
「んなことさせるわけないだろ」
今度は割と強めに瑞希に叩かれ、「そんな怒らなくても……」と夕奈も拗ねてしまう。
そんな彼女に「悪い、やり過ぎた」と謝った瑞希は、花音の方へ向き直ると頭を撫でながら微笑んで見せた。
「花音さえ許してくれるなら、私はお前と同じ大学に行く」
「ほ、本当ですか……?」
「花音が信頼出来る男が現れるまでは、私が守ってやらないとだからな」
「もちろんお願いしたいです! 大歓迎ですっ!」
「おいおい、はしゃぎ過ぎだ。同じところに行くからには、ちゃんと勉強もさせるからな?」
「えへへ、分かってますよぉ♪」
心底嬉しそうに笑いながら瑞希に抱きつく花音。彼女が「大好きです!」と口にすると、瑞希は少し照れながら「私もだ」と返す。
そんな少し見慣れた光景にほっこりしていると、花音がふと思ったことなのかボソッと言葉をこぼした。
「もし、男の子が現れなかったら、一生瑞希ちゃんと一緒ですね♪」
「そ、その未来も……アリかもな……」
「えへへ、照れてます?」
「……ああ、少しだけな」
「そういうところも好きです!」
「お、おい、好きを安売りするなよ……」
「どんどん溢れてくるからいいんです♪」
「……はぁ、仕方の無いやつだな」
ため息なんてつきながらも満更でもないと言った表情を見せる瑞希は、花音の頭を撫でながら「大好きだ」と呟く。
それからしばらくの間、2人のどちらが先に好きと言われて照れるかの勝負を始めたところ、2回目で瑞希が顔を真っ赤にして敗北した。
「眼福ってこういうことを言うんだろうね」
唯斗はそんなことを呟きつつ、今度こそちゃんと昼寝をしようと目を閉じ、同時にチャイムの音を聞くことになるのであった。
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