隣の席の美少女が何故か憐れむような目でこちらを見ているけど、僕には関係がないのでとりあえず寝る ―――ひとりが好きなぼっちだっているんですよ?―――
第291話 比喩表現って現実的に考えるとおかしいよね
第291話 比喩表現って現実的に考えるとおかしいよね
「ところで、
「
「さっき、夕奈からみんなの二つ名を聞いたんだ」
「私たちの二つ名?」
「そう。だから、夕奈にもあるんじゃないかなって」
彼がそう言うと、
特に隠す意味も無いだろうと全員分教えてあげると、みんな口元を緩めながらお互いに目を見合せた。
「べ、別に私は女らしさとかは苦手だけどな?」
「軽い女だと思われたくないからね〜」
「ま、守れる強い人になりたいです!」
少し口調が早いところから察するに、3人とも満更でもないのだろう。
本人がこんなに喜ぶ二つ名を付けられているのだ。きっと夕奈にもいいのがあるはずと、唯斗たちの期待は高まる一方。
「ゆ、夕奈ちゃんのは無いかも……」
「そんなわけないよ、夕奈だし」
「こんな美少女をスルーするはずないって?」
「いや、二つ名付けやすそうだから」
「誰が分かりやすい女選手権前回チャンピオンや!」
「そんなことは言ってないけど」
「とにかく私みたいにミステリアスな掴みどころのない超美少女にはついてないの!」
「……確かに掴めないね」
「胸見ながら言うなし!」
そう言いながら彼女がサッと胸元を隠すので、唯斗は「そんなの見てないよ」と首を横に振る。
そして「顎を見てたんだから」と付け加えると、夕奈が「誤魔化さなくていいよー?」とニヤニヤしながら人差し指でつついてきた。
「ていうか、顎なら掴めるやん?」
「そういう意味じゃないんだけど……」
「何なら掴んでみる? ほれほれ、夕奈ちゃんに触れるチャンスやで?」
「……はぁ」
何やら勘違いをしているらしいが、得意げな顔で顎を突き出してくる様子は無性にイラッとする。
さっさと解決してしまおうと心の中で頷いた彼は、言われた通り夕奈の顎を掴んでみた。
「っ……ほ、本当にするんだ……」
「やれっていったじゃん」
「私はからかっただけだし」
「ならやめるけど」
「ま、待って!」
唯斗が離そうとした手は夕奈の両手によって引き止められ、「あと1分だけ」と言うので仕方なく従ってあげることに。
腹時計で1分をカウントし終われば、「時間だよ」と物足りなそうな表情は見ないようにしつつ、今度こそ手を離した。
「顎を掴まれたいなんて変わってるね」
「それは唯斗君が見てきたから……」
「別に掴みたくて見てたわけじゃないよ」
「ならどうして掴めないなんて言ったのさ!」
「だから、そういう意味じゃないって」
彼は「話はちゃんと聞いて」と言いながら、先程顎に触れた時に拭ってあげていたクリームを見せる。
視線が顎に向いたのはこの存在に気付いたからであって、『確かに掴めない』という言葉とは何の関係もなかったのだ。
「じゃ、じゃあ、掴めないってやっぱり胸の……」
「どうしてそうなるのかな。夕奈は性格が掴めないって言ってるだけなのに」
「私が……掴めない……?」
「だって、いつもにこにこしてるかと思えば急に真面目になるし、かと思えばやっぱりバカだし。理解しようとしても難しいよ」
「夕奈ちゃんのこと、理解する努力してくれてるんだ?」
「友達なんだから当たり前でしょ」
「へ、へぇ……」
先程まで盛大に勘違いをして騒いでいたというのに、今度は突然静かになって視線を泳がせ始める。
やっぱり掴みどころがないなとため息をついた唯斗は、そろそろ食べようと正面を向いた瞬間、夕奈とは反対側の隣に座っているこまるが視界の端に写った。
「……何してるの?」
そう聞いてみると、彼女はしまったと言いたげな表情で手を止め、夕奈と同じように視線を逸らす。
そんなこまるの顎には、まさに今わざと自分で付けたクリームが付着していた。
「もしかして、夕奈が拭いてもらったのを見て羨ましかったとか?」
「……そう」
「僕は綺麗に食べれる人の方が好きだけどね」
「わざと、だから。綺麗に、食べれる」
からかうつもりで口にした言葉を聞いた彼女は、慌ててお手拭きで顎を拭き取ろうとする。
しかし、唯斗はその手を掴んで止めると、もう片方の手で先程と同じようにクリームを拭ってあげた。
「真似をしてもバレるからね。自分らしくいてくれるこまるが、一番自然体で僕は好きだよ」
「……ごめん」
「謝らないでよ。夕奈の相手ばかりだから、気にかけて欲しかったんだよね」
「そう。私も、イチャつきたい」
「別にイチャついてはないんだけど」
「ううん。傍から、見たら、カップル」
「え、イヤだな」
「イヤとはなんやイヤとは!」
「びっくりした、急に叩かないでよ」
その後、夕奈とこまるは美味しいからと、自分の注文したお菓子を唯斗に食べさせ始める。
そんな様子を楽しそうに眺めていた瑞希たちは、ウンウンと頷きながら微笑むのだった。
「いいな、青春って感じで」
「私も好きな人がいたらいいのに〜♪」
「いつかは私も出来るでしょうか……」
「
「何なら私たちと特訓する〜?」
「お、お願いしたいです!」
「やる気があるならやってみるか」
「はいです!」
「ネガティブ克服チャレンジだね〜♪」
この数週間後に行われたチャレンジが、花音が目眩を起こしたによって失敗に終わってしまったということはまた別のお話。
聞いた話によれば、褒められる度に「そんなことないです」と首を振り続けたせいで、脳が軽く揺れてしまったことが原因なんだとか。
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