隣の席の美少女が何故か憐れむような目でこちらを見ているけど、僕には関係がないのでとりあえず寝る ―――ひとりが好きなぼっちだっているんですよ?―――
第275話 終わりよければすべてよしとはよく言うが、始まりが最悪なのは辛い
第275話 終わりよければすべてよしとはよく言うが、始まりが最悪なのは辛い
水族館では色々あったが、最後にはみんな無事にバスに乗りこんでホテルへと向かうことが出来た。
「……で、どうしてマルちゃんが唯斗君の隣なの」
「行きは
「水族館ではマルちゃんがべったりだったし!」
「最後に迷惑をかけたのは誰だ?」
「ぐぬぬ……」
「観念したなら私で我慢しといてくれ」
「……まあ、不満はないけどさ」
「なんなら
「無理無理、瑞希はカッコよすぎるし」
後ろの席から聞こえてくるそんな会話に心の中でツッコミつつ、唯斗は自分もウトウトしながら既に寝息を立てているこまるの頭を撫でる。
たくさん歩いたから疲れてしまったらしい。寝言で「いるか……」と言っている辺り、イルカショーが見れなかったのは心残りなのかな。
時間が合わなくて見れなかったのだ。いつか、近くの水族館にでも行ってイルカを見せてあげたいね。またここに来るのもアリだけど。
「ん、唯斗……」
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
「すぅ……すぅ……」
どうやら今のも寝言だったらしい。こまるは彼の腕を抱きしめながら、幸せそうな表情で眠っている。
その横顔は驚くほど綺麗で、つい頬をぷにぷにとしてみたくなってしまう。
「よしよし」
ただ、あの時に感じたモヤモヤはもう感じられず、胸もドキドキとはしない。突発的な何かだったのだろうか。
唯斗はそう思いながらもう一度彼女の頭を撫でると、自分もそっと目を閉じて夢の世界へと浸るのだった。
「夢の国……切符……」
まあ、突如現れた大きなネズミの着ぐるみを着た夕奈に切符を売らないと言われたせいで、何度か夢の国への入場を拒否されてしまったけれど。
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バスに揺られること1時間弱。一度のトイレ休憩を挟みながら到着したのは、沖縄感溢れる宿泊施設。
オレンジ色の瓦屋根にシーサーを乗せた建物の中で、支配人や従業員さんへのよろしくお願いしますを伝える式が執り行われた。
「では、班ごとに部屋の鍵を取りに来て下さい」
先生の言葉を聞いた唯斗は、クラスの集団から抜けて少し後ろの方に立つ。だって、彼はどの班にも所属していないから。
自由行動の際は夕奈たちと一緒に動くと勝手に決められたものの、部屋だけはそうはいかないと先生と同じにされたのである。
「皆さん、鍵は持ちましたね。では、夕食の時間まで部屋で荷物の整理などをしておいて下さい」
解散の合図でバラバラに歩き出したクラスメイトたちは、マップで部屋の場所を確認してから本部であるこの建物を出ていった。
この宿泊施設はいくつもの建物が点在している状態で、その中のA群とC群を唯斗たちの学校が使えることになっている。
ちなみに、どうしてAとCなのかと言うと、その2つが最も距離が離れており、男女で分けるには最適だと考えられたからなんだとか。
「小田原君、私たちも行きましょうか」
「本当に先生と同じ部屋なんですね」
「ひとりぼっちにはさせられませんよ」
「慣れっこですけど」
「どの道、ピッタリ部屋は埋まってるんです。小田原君を襲ったという男子生徒と同じ部屋でもいいなら、私と離れることは出来ますが……」
「同じでお願いします」
「そう言うと思いましたよ」
あの時の出来事は、唯斗の中で小さな恐怖体験として残っている。
同性であると言えど、絶対に勝てないと思えてしまうほど力任せに掴まれるなんて、他に経験したことがなかったから。
「ここです」
「角部屋なんですね」
「先生の部屋はわかりやすい方がいいですから」
「なるほど」
先生に鍵を開けてもらい、靴を脱いで木造の廊下を進んでいくと、スライド式のドアが目の前に現れた。
彼はそれを何の疑いもなしに開いてしまう。手を止めるべきだったのだ、どうして廊下の電気がついていたのかという違和感に気がついた瞬間に。
「思ったよりも広い部屋で―――――――――」
「っ……の、覗き魔ぁぁぁぁぁ!」
「いや、僕は怪しい者じゃ……」
「出ていって! 変態! 消えろ! 爆ぜろ!」
「……痛い、痛いからもう勘弁して」
数秒後、唯斗は着替え途中だったのか下着姿の女の子に枕で滅多打ちにされていた。
何が起きているのかも分からず混乱していると、攻撃を止めてくれた先生に向かって、その女の子は予想外の言葉を放ったのである。
「お姉ちゃん、この人誰なの!」
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