隣の席の美少女が何故か憐れむような目でこちらを見ているけど、僕には関係がないのでとりあえず寝る ―――ひとりが好きなぼっちだっているんですよ?―――
第219話 パーティの終わりがいつなのかが分からない
第219話 パーティの終わりがいつなのかが分からない
パーティは順調だった。美味しいスイーツに談笑、普段はこんなことを嫌う
しかし、そんな時間も長くは続かない。
「……そろそろ帰ろうかな」
「ちょっと待てい!」
嫌な予感とはよく当たるもので、早めの退散を試みるも捉えられてイスに座らされてしまう。
時刻は9時を回った頃、本当にそろそろ帰らないと明日の授業で居眠りしちゃうよ。……あ、いつものことか。
「えっと、もう天音を連れて帰らないと……」
「なら泊まっていってよ」
「絶対に嫌だ」
「なぜに拒む」
絶対に帰りたい唯斗と絶対に帰らせたくない夕奈の睨み合いはしばらく続くが、どちらも引く気はさらさらない。
彼からすれば妹のためという大義名分があるため、胸を張ってこの腕を振り切ることができるのだ。
ピンポーン♪
そんな(当事者たちにとっては)緊迫感のあるシーンの最中、家の中にインターホンの音が鳴り響く。
一時休戦ということで夕奈は仕方なく手を離すと、玄関へと向かって走っていった。
「はーい……って、お義母様?!」
「ふふふ、普通にママって呼んでいいのよ?」
唯斗は聞こえてきたその声に背筋がゾクリとする。だって、ものすごく聞き覚えのある声だったから。
そもそもの話、夕奈が『お義母様』なんて呼び方をする相手は、あの人しかいないわけで……。
「か、母さん……」
確認してみれば、やはり玄関に立っていたのは自分の母親……もといハハーンだった。
大魔王ハハーンが息子を助けに来た訳では無いことは明らか。ヤツは
「唯斗、そこの袋に制服が入ってるから。今夜は帰ってくるんじゃないわよ」
無情にも助かる可能性を全て踏みにじった上で、「いい報告を待ってるわ」と親指を立てて帰って行った。
「さすがハハーン、残虐非道だよ……」
「よく分からないけど、とりあえず唯斗君が帰る理由はなくなったんだよね?」
「僕が家に帰りたい、それが理由」
「可愛い女の子が帰らないでって言ってるんだよ? これで帰ったら男じゃないっしょ!」
「……女になれば帰っていいってこと?」
「いや、そこまでしなくていいかんね?!」
夕奈は何やら「むしろ私が困る……」なんて呟いた後、「どうせ帰ったらお義母様が、ね?」と強引に部屋の中へと連れ戻す。
確かに言われてみれば、いくら帰りたくとも今夜ばかりは帰れないのだ。ハハーンのことだから、朝まで家に入れてくれない可能性もあるし。
一体何が目的なのかはさっぱり分からないが、悲しいことに残された道は夕奈に従う以外に無さそうだった。
「わかったよ。でも、眠くなったら寝るからね」
「その度にビンタして起こす!」
「ちょっとハンマー借りてもいい?」
「仕返しが重すぎない?!」
「安心して、一発で終わらせるから」
こめかみの部分をツンツンとやると、怖くなったのか夕奈は「ご、ご自由にお眠り下さい……」と大人しくなってくれる。
昔の人が恐怖で民を支配した気持ちがよくわかるよ。バカ相手だとすごく簡単だし。
「まあ、とりあえずは遊ぼ?」
「内容による」
「パーティって言ったら、ひとつしかないっしょ!」
「え、バ〇リーダンス?」
「いつの時代じゃ」
唯斗の肩を軽くペシッと叩いた彼女は、先程持ってきた割り箸を手に取るとその中から一本を引く。
そして先に付けられた赤い印と、他の割り箸に書かれた数字を見せながら、ドヤ感溢れる表情で言ったのだった。
「王様ゲームだよ!」
そう、パリピ御用達のあのゲームのことである。
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