第218話 大きさにこだわるのは時代遅れ
「最後は
彼女の仮装はもちろんミニスカポリス……なのだが、記憶にあるものより随分とスカート丈が際どくなっていた。
「お店でお直ししてもらったら、こんなになっちゃいました……」
「これは……大丈夫なの?」
「普通にしている分には見えないかと……」
そう言ってはいるが、今の晴香の露出はこまるのショートパンツと大差ないレベル。
しゃがんだりすれば絶対に見えるし、もしかするとイスに座るだけでも大変なことになるかもしれない。
唯斗がこれはスパッツを履かせるか着替えさせるかした方がいいだろうと考えていると、ここで夕奈が余計なことを言い始めた。
「晴香ちゃん、アレやってよ!」
「アレですか?」
「ほら、ポリスと言えばのやつ!」
確かにこのコスプレには定番のセリフがある。ただ、晴香には荷が重すぎるのは明らかだ。
それでも女子たちからのキラキラとした視線に追い詰められてしまった彼女は、逃げ場を失って清水の舞台から飛び降りてしまった。
「た、逮捕しちゃうぞ……?」
最後に疑問符が付いているような気がしないでもないが、しっかり腰につけていた手錠も構えるという真面目さ。
そこはかなりポイントが高かったようで、観客たちもみんな満足げに頷いていた。
「これはなかなかいいな」
「右に同じだよ〜♪」
「それな」
「かわいいです!」
夕奈は「まだ羞恥心が抜けとらん!」なんて偉そうに言っているが、お前に羞恥心が足りないだけだろと心の中でツッコミを入れてスルーしておく。
「恥ずかしいです……」
「似合ってるから自信持って」
「ほ、本当ですか?」
「うん。逮捕されちゃいたいくらい」
「うぅ……」
素直な感想を伝えたつもりなのに、晴香は何故か顔を真っ赤にして座り込んでしまった。
彼はなるべく太もも辺りを見ないようにしながら立ち上がらせると、ソファーまで支えて連れて行ってあげる。
「みんな似合ってるね、さすが」
「そう言う
「これは夕奈が選んだやつだから」
「よく理解してもらえてるってことだな」
「えっ?」
「……そんな嫌そうな顔はするなよ」
夕奈が「いやぁ、唯斗君博士になれちゃうなー!」なんてヘラヘラしていたから、とりあえず簡単な問題を出してみることにした。
「僕の身長は?」
「夕奈ちゃんより高い!」
「そういうことを聞いてるんじゃないよ」
「ふっ、身長なんて気にしてる男は小さいぜ」
「博士って言うくらいならそれくらい答えようね?」
正直、自分でも今の身長なんて覚えていないので、「答えは自分で考えなさい」と適当に誤魔化しておく。
花音が優しさでメジャーを取りに行こうとしたけれど、そっと止めて座り直してもらった。
「あちゃー! 唯斗君クイズ間違えたから、罰ゲームで血吸われちゃうなぁ」
「何そのルール」
「吸血鬼の仮装なんだからなり切ってよ」
「バカの血は不味いから吸いたくない」
「バカでも美少女やろがい!」
「ふっ、顔なんて気にしてる女は小さいぜ」
「誰がぺたんこ絶壁神美少女やねん!」
「誰もそんなこと言ってない」
小さいのは器であって胸ではないのだが、周りを見回してみれば確かに器の大きさと比例している可能性があるかもしれないと口にはしないでおいた。
心が広ければ胸部の成長が促進される……もしこれが事実だとしたら、世界の半数はものすごく穏やかになるだろうね。
そして少数派の胸が小さい人が『短気』『器が小さい』と虐められ、第二次胸部戦争が勃発したことで世界は巨乳派と貧乳派に分割されることに……。
「唯斗君、聞こえてる?」
「あ、貧乳派閥の総長」
「誰がキングオブぺたんこじゃ」
「……ごめん、今のは忘れて」
余計な妄想は横に置いておくとして、とりあえず本題をパーティに戻さなければならない。
そう考えた唯斗はブンブンと首を振って正気を取り戻すと、「キングじゃなくてクイーンだね」と訂正してからパンと両手を叩いた。
「そろそろハロウィンパーティを始めよっか」
「パリピの血が騒ぐぜ!」
「僕、パリピって世界一嫌い」
「目の前で言えるメンタルすごいね?」
「特に夕奈って名前のパリピが……」
「それ以上言ったら泣くかんな?!」
結局、言われたけれど泣かなかったらしい。涙はそう簡単に流せるものじゃないね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます