第216話 仮装にも個性が出る
「よし、お菓子はこれで完成だな」
パンプキンケーキにパンプキンクッキー、カップケーキやパンケーキのトッピングにもかぼちゃが使われている。
特段かぼちゃが好きと言う訳では無いが、今日という雰囲気がそうするのか
「あとはあの2人が到着するのを待つだけだね」
あの二人というのは他でもない、
元々天音の方は参加する予定は無かったのだが、みんながせっかくなら呼ぼうと言うので参加してもらうことにしたのである。
ピンポーン♪
インターホンが鳴ると、
少ししてリビングへ入ってきた天音は、既にあのおばけの仮装をしている。この格好で歩いてきたのかと思うと少し恥ずかしいが、可愛いので良しとしよう。
「天音、久しぶりだな」
「瑞希ちゃん、おひさ!」
「随分と可愛い格好だな」
「えへへ、夕奈師匠から貰ったの♪」
「ほう、いいチョイスだと思うぞ」
以前のように警戒する様子はなく、目が合うなりすぐに甘えにいく天音。
「天音、念の為に聞くけど服は?」
「ちゃんと着たよ、怒られちゃうもん」
「えらい、よく出来たね」
「もぅ、子供扱いしないでよ!」
ちゃんと成長してくれている妹を撫でてあげる唯斗。口では迷惑そうにしながらも、抵抗しないところを見るに嫌がってはいないのだろう。
「ハルちゃん、連れてきてくれてありがとう」
「いえいえ。ゆーくんのことも色々と聞けたので、むしろ任せてもらえて良かったです」
「どんなことを聞いたの?」
「何歳までお母さんとお風呂に入っていただとか、寝ることが大好きだとかですね」
「その情報、何か役に立った?」
「私も一緒にお昼寝したいなと」
「……まあ、それは魅力的な提案だね」
普段は一人で寝ているが、誰かと一緒というのもたまにはいいかもしれない。
とりあえずその約束はまた今度するとして、今はとりあえずパーティ開始に向けてことを進めることにした。
「じゃあ、私たちも着替えるか」
「そうしよ〜♪」
「りょ」
更衣場所は女子が2階の夕奈の部屋、唯斗はリビングを割り当てられた。
彼が既に着替え終えている天音に手伝ってもらいつつドラキュラの衣装を身に纏った後、ソファーに座って待つこと15分ほど。
「お待たせ〜♪」
最初に戻ってきたのは、魔女の格好をした夕奈だった。相変わらず綺麗に着こなしているが、やはり魔女になるには少し若すぎる見た目だね。
「どう? 似合ってる?」
「コメントはこの前言ったよ」
「わかってないねぇ、何度でも言うのだよ!」
「はいはい、かわいいかわいい」
「心を込めて!」
「ウザい」
しっかり気持ちの込められた言葉に、しゅんとしてソファーに腰を下ろす彼女。
こんな日に落ち込んだ顔をされていても困るので、「まあ、それなりに可愛いよ」と励ましておいた。その後はもっとウザくなったけど。
「次は私だよ〜」
そう言って手を振りながら入ってきたのは、ナース服を着た風花。現代では呼び方が看護師に統一されたが、ナースと言った方がしっくりくる昔ながらのコスプレだ。
「風花、似合うね」
「そう? 嬉しいなぁ〜♪」
「注射上手そう」
「ほ、褒め言葉として受け取っておくね〜?」
「ていうか、どうして順番に出てくるの?」
「それはエンターテインメントだよ〜」
「ちょっと何言ってるか分からないけど」
「分かろうね〜♪」
にっこりと笑いながら夕奈の隣に腰を下ろした風花が合図をすると、待機していた次の人が部屋に入ってくる。
しかし、彼女……というよりうさぎの着ぐるみを着たその人物は、部屋に入ってくるなりその場で倒れてしまった。
「ちょ、カノちゃん大丈夫?!」
夕奈が慌てて起こしに駆け寄ると、頭の部分が転がり落ちて
彼女の顔は真っ赤になっていて、ダラダラと汗もかいていた。さすがに家の中でこの格好は暑すぎるのだろう。
「よくこんなの買ったね」
「お買い得だったので……」
「売れなそうだもん、そりゃ安くなるよ」
「し、失敗しましたぁ……」
結局、着ぐるみでは色々と支障が出るということで、夕奈の持っていたうさぎがプリントされたTシャツに着替えるという妥協案が採用された。
これでは仮装らしくないからと天使の輪っかも付けてもらったのだけれど、頭上以外は人間界に溶け込んでいる天使みたいになっちゃったよ。
「うぅ、パンダの着ぐるみもセットだったのに……」
「冬になったら着ようね」
「チャンスありますか?」
「チャンスは自分で作るものだよ」
「な、なんだか深いです……」
自分でもよくわからなかったものの、花音が元気になってくれたので良しとしよう。
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