人の流れに逆らい生きる

 日が暮れて、たいていの人間や鳥でさえ、家路を急ぐ夕暮れ時に、私、雨宮理子あめみやりこは職場へ向かう。


 と言っても一人ではなく、妻子がこの仕事のアルバイトをしており、私たちの目線で見てくれる優しい秋田課長代理の計らいで、私に休憩時間を教えてくれるおじさま、小野行人おのゆきとが一緒にいる。


 なんのこっちゃわからない人に説明すると、私、雨宮理子あめみやりこは仕事に夢中になるあまり休憩時間を忘れてしまう社畜としては褒め言葉なのか判断できずらい習性がある。


 秋田課長代理には休憩時間忘れるのは私に問題があるから気にしないで下さいとお願いしたけど、それは無理な話で、元サラリーマンで、真面目であり、上司たちの信頼の厚い自称福山雅治似の腹のでた中年の禿げたおじさまの小野さんが、自分の休憩ついでに私の声かけをすることになったのだ。

 

 なんで、一緒に職場へ向かっているかと言えば最寄り駅が一緒だったり、ミステリーが小野さんも好きで、録画忘れた浅見光彦のテレビドラマのDVDをいただいたりして、早10年あまりいつの間にそばにいるのが当たり前な存在になったのだ。


 ちなみに小野さんはずっと独身だから、援助交際的な白い目や好奇の眼差しをうけることはあれども健全なつもりだし、この世で私が一番嫌いな不倫でもないということだけは力説したいと思う。


 ともかく、まだこの時点ではあのカードのことは知らなかった。

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