第10話 オワカレ
花火を見に行って、一週間後くらいだった。
零菜からLINEで別れたいというメッセージが来た。
嫌われたということよりも、零菜を何か傷つけてしまったのだという考えが先に来た。
理由を教えて欲しいというメッセージをすぐに送ったが返事は来なかった。
それから一週間くらいが経った。
零菜と直接話すことになった。そして、僕達は零菜の家でゆっくりと話した。
◇
「…………」
「ゆーと?」
言葉を話そうとしているのに、何かが引っかかてるかの様な感覚がして、上手く声が出ない。それでも、僕は声を絞り出すかのようにして話を続けた。
「……そこで言われたんだ。零菜は……癌を患っていた」
「それが理由で別れたの?」
「分からない。単純に嫌われたのもあると思う。もっと、私だけに優しくして欲しかったとかも言われたし」
「ゆーとちゃん友達全員大事にしちゃうからね」
「ちょっと零菜さんの気持ちわかるかも」
「零菜は、夏には地元に戻って入院が決まってたんだ。そこから大学に戻ってこれるかは分からなかった」
「……それで零菜ちゃんさんは別れる決断をしたんだね」
苺が頷きながら話すが、朱里などはピンと来ないような様子だった。それを見て、苺が言葉を続ける。
「花火の時にゆーと君が言った理想の彼女の話だと思うよ? そばに居てくれる人。零菜ちゃんさんはそれが自分にはできない事だったんだもんね」
「悠翔君の彼女にして欲しい事が零菜ちゃんにはできないから、自分が彼女じゃダメだっ思っちゃったのか」
それを聞いて朱里は何も言わずに何度か頷いた。苺が言っていることは僕も正しいと思う。僕のあの言葉が、零菜を追い詰めてしまった。
「それを聞いて、ゆーとちゃんはどうしたんだ?」
「何も出来なかったよ。頭が追いつかなくて、ただ聞いていることしか出来なかった。話終わって苦しんでる零菜をぎゅーってしてあげたかったけど、泣くからしないでって断られた」
「それで二人はどうなったの?」
「零菜に親友って形でいて欲しいって言われて、零菜が入院する夏まで遊ぶ約束をいっぱいした」
「それがゆうちゃんの愛の形だったのね」
「……うん」
「……その後、俺と零菜はさ、約束通りいっぱい遊んだんだ」
僕は顔を上げ続きを話した。
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