2人目 倉山桃花
「怪我だろうが、骨折だろうが、生きてれば、治る。だから、自分の事なんてどうでもいい」
あの日、君が言った言葉です。
*
その日はサイレンの音が暗くなった街中に鳴り響いていました。
人身事故により、電車が遅れるというアナウンスが駅のホームに流れています。
一本早く乗ったので、遅れずに目的の駅に着くことができました。ほっとして少し息を吐くと、もう白くなる季節です。
私は二時間後に友人と居酒屋で会う約束をしています。少し天気が怪しかったので早めに家を出たのですが、あろうことか家の鍵を落としてしまいました ! 幸い電車が遅れている影響か人はそんなにいないので、ゆっくりと探せそうです。
……全然見つかりません。私は駅の椅子に座り考え事をしました。
さきほどのアナウンスのことです。
自殺……だよね。
私は二年前友達を失っています。そんなに話したり遊んだりする関係ではありませんでした。亡くなった日に色々あって友達の男の子とその場にもいましたが、泣きませんでした。
それでも、少し日にちが経ってから私は泣いてしまいました。
今でも忘れられない出来事です。
自殺したというアナウンスを聞いて、考えてしまったことは残された人の気持ちです。
どれだけ苦しむのでしょうか。
どれだけ辛いのでしょうか。
どれだけ傷つくのでしょうか。
どれだけ考えるのでしょうか。
どれだけ迷うのでしょうか。
どれだけ頑張るのでしょうか。
そんな事を考えても大切な人を失っていない私に本当の辛さは分からないと思います。
それでも寄り添えたらなって思います。あまり仲が良かったとは言えない友達が亡くなっただけで、涙が止まらなくなってしまうのです。
では、仲が良かったら? 大切な人だったら?
その辛さが、私が感じた辛さよりも重く、計り知れないということだけは分かります。
死んでしまった人はどうか苦しみから解放されて欲しい。残された人はどうか苦しみに押し潰されないで欲しい。
私はそう思います。
ふぅー、っと一息ついて考えるのは終わりにして鍵を探すことにしました。
この時は、何で落としてしまったのだろうって後悔してました。
けど、この日鍵を落としてしまったことによって、ある男の子と久しぶりに会うことが出来ました。
それは、苦しみに押し潰されないで欲しい1人です。
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