第84話 回想・正宗白鳥(旧字旧仮名)

今日きょう伏字ふせじ漢字かんじ

いちからろく小1しょういちから小6しょうろくなな中学ちゅうがくおぼえる常用じょうよう漢字かんじです。

日本にほんらすすべてのひとは、すべからく此等これら常用じょうよう漢字かんじっておくべきとされています。

小2,❷: 回 , 止

小4,❹: 周

小6,❻: 批 , 難

中学,❼: 宰 , 捉 , 排 , 攻 , 斥


学習がくしゅうコンテンツ

仮名がな漢字『かんじ』(『かんじ』)のよう括弧かっこいた漢字かんじ原書げんしょ仮名がないている漢字かんじです。此等これら伏字ふせじから除外じょがいします。

きゅう仮名かなづかいはしん仮名かなづかいにえている場合ばあいもあります。


作品さくひんめい回想かいそう

著者ちょしゃめい正宗まさむね 白鳥はくちょう


 わたくし日露にちろかいせん前年ぜんねん讀賣よみうり新聞しんぶんしゃ入社にゅうしゃして、滿まんしちねんかん勤務きんむつづけたのであったがちは、しゅとして美術びじゅつ文學ぶんがく方面ほうめん消息しょうそくつたへることと、作品さくひん❻評ひひょうをすることで、演劇えんげき❻評ひひょうもしてた。今日きょう文化ぶんからん主❼しゅさいしてたのだが、なにもかも一人ひとりでやってうなものであった。當時とうじ讀賣よみうりは、美術びじゅつ新聞しんぶんであり文學ぶんがく新聞しんぶんであったものだが、うい新聞しんぶんいて年少ねんしょうわたくし一人ひとり自由じゆう自在じざいほとんどなん束縛そくばくもなく、藝術げいじゅつ全般ぜんぱん❻評ひひょうこころみてたことは、❷顧かいこしてわたくし不思議ふしぎおもとともに、痛快つうかいことであったとおもってる。

 そのみちなん素養そようもなかったわたくしが、とうだいのさま/″\ざま美術びじゅつ作品さくひん❻判ひはんするなんか、僭越せんえつ至極しごくであったが、でんとうとらへられず、しゅう情勢じょうせいをも顧慮こうりょせず、自分じぶんかんずるところをそのままにちまけたところに、なにかの新味しんみがあったのではないかとおもったりしてる。

 とにかくあのときの、讀賣よみうり文化ぶんからん特色とくしょくがあったのである。いい意味いみわる意味いみか、ほか新聞しんぶんおんけん平板へいばん文化ぶんからんとはちがってことは、えず非❻ひなん❼撃こうげきけてたことによってもしょうめいされるのである。わたくし非❻ひなんそらかぜながして、自己じこ發揮はっきしてたのだが、當時とうじ主筆しゅひつは、時々ときどきにがいかおをしてながらも、わたくし警告けいこくもせず、わたくし❼❼はいせきもしなかったのであった。こんにち新聞しんぶんありようからと、想像そうぞうおよばぬことである。わたくし美術びじゅつ❻評ひひょうをもげきひょうをもめることになったのは、自責じせきねんもとづいたので、こんなぼうひょう新聞しんぶんのためによろしくないと自分じぶんいたためであった。わたくしげいじゅつかん人生じんせいかんがおのから生長せいちょうしたためであう。あのころ政治せいじろんでもしゃかいかく方面ほうめん論評ろんぴょうでも、わたくしうな態度たいどのものが、どこかにあったかもれない。

 とにかく今日きょう新聞しんぶん論調ろんちょうは、どの方面ほうめんででも、しゅう顧慮えんりょしてるものばかりであるうだ。


コンテンツこんてんつ


作品さくひんめい回想かいそう

著者ちょしゃめい正宗まさむね 白鳥はくちょう


 わたくし日露にちろかいせん前年ぜんねん讀賣よみうり新聞しんぶんしゃ入社にゅうしゃして、滿まんしちねんかん勤務きんむつづけたのであったがちは、しゅとして美術びじゅつ文學ぶんがく方面ほうめん消息しょうそくつたへることと、作品さくひん批評ひひょうをすることで、演劇えんげき批評ひひょうもしてた。今日きょう文化ぶんからん主宰しゅさいしてたのだが、なにもかも一人ひとりでやってうなものであった。當時とうじ讀賣よみうりは、美術びじゅつ新聞しんぶんであり文學ぶんがく新聞しんぶんであったものだが、うい新聞しんぶんいて年少ねんしょうわたくし一人ひとり自由じゆう自在じざいほとんどなん束縛そくばくもなく、藝術げいじゅつ全般ぜんぱん批評ひひょうこころみてたことは、回顧かいこしてわたくし不思議ふしぎおもとともに、痛快つうかいことであったとおもってる。

 そのみちなん素養そようもなかったわたくしが、とうだいのさま/″\ざま美術びじゅつ作品さくひん批判ひはんするなんか、僭越せんえつ至極しごくであったが、でんとうとらへられず、しゅう情勢じょうせいをも顧慮こうりょせず、自分じぶんかんずるところをそのままにちまけたところに、なにかの新味しんみがあったのではないかとおもったりしてる。

 とにかくあのときの、讀賣よみうり文化ぶんからん特色とくしょくがあったのである。いい意味いみわる意味いみか、ほか新聞しんぶんおんけん平板へいばん文化ぶんからんとはちがってことは、えず非難ひなん攻撃こうげきけてたことによってもしょうめいされるのである。わたくし非難ひなんそらかぜながして、自己じこ發揮はっきしてたのだが、當時とうじ主筆しゅひつは、時々ときどきにがいかおをしてながらも、わたくし警告けいこくもせず、わたくし排斥はいせきもしなかったのであった。こんにち新聞しんぶんありようからと、想像そうぞうおよばぬことである。わたくし美術びじゅつ批評ひひょうをもげきひょうをもめることになったのは、自責じせきねんもとづいたので、こんなぼうひょう新聞しんぶんのためによろしくないと自分じぶんいたためであった。わたくしげいじゅつかん人生じんせいかんがおのから生長せいちょうしたためであう。あのころ政治せいじろんでもしゃかいかく方面ほうめん論評ろんぴょうでも、わたくしうな態度たいどのものが、どこかにあったかもれない。

 とにかく今日きょう新聞しんぶん論調ろんちょうは、どの方面ほうめんででも、しゅう顧慮えんりょしてるものばかりであるうだ。



■ 原書情報(青空文庫)

図書カード:No.58961(旧字旧仮名)

https://www.aozora.gr.jp/cards/001581/card58961.html

https://www.aozora.gr.jp/cards/001581/files/58961_67320.html

底本:「正宗白鳥全集第二十九卷」福武書店

   1984(昭和59)年3月31日発行

底本の親本:「読売新聞から見た日本文化の八十年」読売新聞社

   1955(昭和30)年3月20日

初出:「読売新聞から見た日本文化の八十年」読売新聞社

   1955(昭和30)年3月20日

入力:山村信一郎

校正:フクポー




今日きょう漢字かんじ説明せつめい(カタカナはおんみ、平仮名ひらがなくんみです)


❷: 回 :カイ・㋙エ・まわる・まわす・▲めぐらす【 counterかうんた forふぉー occurrencesぁかーんしずrotationろうてぃしゃんspinすぴん

❷: 止 :シ・まる・める・▲とどまる・▲とどめる・▲める・▲む・▲す・▲す【 stopすたぷhaltほーると

❹: 周 :シュウ・▲ス・まわり・▲めぐる・▲あまねく【 circumferenceさかむふぁらんすwidelyわいどりextensivelyいくすてんしゔりeverywhereえゔりぅえぁuniversallyゆーなゔぁーさり

❻: 批 :ヒ・▲つ・▲ただす【 criticismくりたしずむcommentaryかまんてり

❻: 難 :ナン・▲ダン・㋙かたい・むずかしい・▲にくい【 difficultでぃふぃかるとdifficultyでぃふぃかるてぃdefectでぃふぇくとhardshipsはーどしぷす

❼: 宰 :サイ・▲つかさどる【 supervisionすーぱゔぃじゃんsuperintendentすーぷりんてんだんとpresidencyぷれざだんしsuperintendenceすーぷりんてんだんす

❼: 捉 :ソク・とらえる・▲つかまえる・▲る【 captureきゃぷちゃ

❼: 排 :ハイ・▲おしのける・▲つらねる【 exclusionいくすくるーじゃんdisposalでぃすぽうざるcollocationからけぃしゃん

❼: 攻 :コウ・める・▲みがく・▲おさめる【 attackぁたくonslaughtあんすろーとonsetあーんせとonrushあーんらしゅoffensiveぁふぇんしゔ

❼: 斥 :セキ・▲しりぞける・▲うかがう【 repulsionりぱるしゃんscoutすかうとpatrolぱとろうるexclusionいくすくるーじゃん


※ ▲は常用じょうようがいかたです。㊥は中学ちゅうがくで、㋙は高校こうこうならかたです。漢検かんけん漢字かんじ辞典じてん記載きさい準拠じゅんきょしています。

漢字かんじ説明せつめいOxfordおっくすふぉーど Languagesらんげーじず , 漢字かんじペディア, 漢字かんじじゅん辞典じてん, モジナビ, その他のかくページを参考さんこうにしています。


今日きょう漢字かんじじゅんくわしい説明せつめいりたいかた此方こちらをどうぞ。

小2,❷: 回 :https://mojinavi.com/d/u56de

小2,❷: 止 :https://mojinavi.com/d/u6b62

小4,❹: 周 :https://mojinavi.com/d/u5468

小6,❻: 批 :https://mojinavi.com/d/u6279

小6,❻: 難 :https://mojinavi.com/d/u96e3

中学,❼: 宰 :https://mojinavi.com/d/u5bb0

中学,❼: 捉 :https://mojinavi.com/d/u6349

中学,❼: 排 :https://mojinavi.com/d/u6392

中学,❼: 攻 :https://mojinavi.com/d/u653b

中学,❼: 斥 :https://mojinavi.com/d/u65a5



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https://www.aozora.gr.jp/

青空あおぞら文庫ぶんことは?

 青空あおぞら文庫ぶんこは、だれにでもアクセスあくせすできる自由じゆう電子でんしほんを、図書館としょかんのようにインターネットいんたーねっとじょうあつめようとする活動かつどうです。著作ちょさくけん消滅しょうめつした作品さくひんと、「自由じゆうんでもらってかまわない」とされたものを、テキストてきすとえっくすHTMLえいちてぃえむえる一部いちぶHTMLえいちてぃえむえる形式けいしき電子でんししたうえそろえています。

https://www.aozora.gr.jp/guide/aozora_bunko_faq.html

きゅー青空あおぞら文庫ぶんこって、なにですか?

えー1997せんきゅうひゃくきゅうじゅうななねんはじまったボランティアぼらんてぃあ活動かつどうで、だれにでもアクセスあくせすできる自由じゆう電子でんしぼんを、共有きょうゆう可能かのうなものとして図書館としょかんのようにインターネットいんたーねっとじょうあつめようとしております。現在げんざいは、日本にっぽん国内こくない著作ちょさくけん保護ほご期間きかん満了まんりょうした作品さくひん中心ちゅうしんに、ボランティアぼらんてぃあのみなさんのちからによって電子でんし作業さぎょうすすめています。青空あおぞら文庫ぶんこはそういった電子でんし活動かつどうのための、またその成果せいかぶつアーカイヴあーかいゔしておくためのでもあり、そこからコピーこぴーされたほん集成しゅうせい活用かつよう事例じれいもまた〈青空あおぞら文庫ぶんこ〉とばれることがあります。くわしくは「青空あおぞら文庫ぶんこのしくみ」( http://www.aozora.gr.jp/aozora_bunkono_shikumi.html )をご一読いちどくください。

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