■ 今日（きょう）の伏字（ふせじ）漢字（かんじ）（❶（いち）～（から）❻（ろく）は（わ）小１（しょういち）～（から）小６（しょうろく）、❼（なな）は（わ）中学（ちゅうがく）で覚（おぼ）える常用（じょうよう）漢字（かんじ）です）

　※ 日本（にほん）で暮（く）らす全（すべ）ての人（ひと）は、すべからくこれらの常用（じょうよう）漢字（かんじ）を知（し）っておくべきとされています。

小１,❶：下,手,目,赤

小２,❷：形,紙

小３,❸：物

中学,❼：煙,突,贈

■ 学習（がくしゅう）コンテンツ

　※ 読（よ）み仮名（がな）で漢字（『かんじ』）（『かんじ』）の様（よう）に括弧（かっこ）の付（つ）いた漢字（かんじ）は原書（げんしょ）で読（よ）み仮名（がな）が付（つ）いている漢字（かんじ）です。これらは伏字（ふせじ）から除外（じょがい）します。

作品（さくひん）名（めい）：クリスマスの❼❸（おくりもの）

著者（ちょしゃ）名（めい）：竹久（たけひさ）夢二（ゆめじ）

「ねえ、かあさん」

　みっちゃんは（わ）、お三時（『やつ』）のとき、二（ふた）つ❶（め）の木（こ）の葉（は）パンを半分（はんぶん）頬（『ほお』）ばりながら、母様（かあさま）にいいました。

「ねえ、かあさん」

「なあに、みっちゃん」

「あのね、かあさん。もうじきに、クリスマスでしょ」

「ええ、もうじきね」

「どれだけ？」

「みっちゃんの年（とし）ほど、おねんねしたら」

「みっちゃんの年（とし）ほど？」

「そうですよ」

「じゃあ、かあさん、一（ひと）つ二（ふた）つ三（みっ）つ……」とみっちゃんは（わ）、自分（じぶん）の年（とし）の数（かず）ほど、テーブルの上（うえ）に❶（て）をあげて、指（ゆび）を折（お）りながら、勘定（かんじょう）をはじめました。

「ひとつ、ふたあつ、みっつ、そいから、ね、かあさん。いつつ、ね、むっつ。ほら、むっつねたらなの？　ね、かあさん」

「そうですよ。むっつねたら、クリスマスなのよ」

「ねえ、かあさん」

「まあ、みっちゃん、お茶（ちゃ）がこぼれますよ」

「ねえ、かあさん」

「あいよ」

「クリスマスには（わ）ねえ。ええと、あたいなにがほしいだろう」

「まあ、みっちゃんは（わ）、クリスマスの❼❸（おくりもの）のことを考（かんが）えていたの」

「ねえ、かあさん、何（なん）でしょう」

「みっちゃんのことだもの。みっちゃんが、ほしいとおもうものなら、何（なん）でも❶（くだ）さるでしょうよ。サンタクロスのお爺（『じい』）さんは（わ）」

「そう？　かあさん」

「ほら、お口（くち）からお茶（ちゃ）がこぼれますよ。さ、ハンカチでおふきなさい。えエえエ、なんでも❶（くだ）さるよ。みっちゃん、何（なに）がほしいの」

「あたいね。金（きん）の服（ふく）をきたフランスの女王様（じょおうさま）とね、そいから❶（あか）い頬（『ほっ』）ぺをした白（しろ）いジョーカーと、そいから、お伽（『とぎ』）ばなしの御本（ごほん）と、そいから、なんだっけそいから、ピアノ、そいから、キュピー、そいから……」

「まあ、ずいぶんたくさんなのね」

「ええ、かあさん、もっとたくさんでもいい？」

「えエ、えエ、よござんすとも。だけどかあさんは（わ）そんなにたくさんとてもおぼえきれませんよ」

「でも、かあさん、サンタクロスのお爺（じい）さんが持（も）ってきて❶（くだ）さるのでしょう」

「そりゃあ、そうだけれどもさ、サンタクロスのお爺（じい）さんも、そんなにたくさんじゃ、お忘（わす）れなさるわ」

「じゃ、かあさん、書（か）いて頂戴（『ちょうだい』）な。そして、サンタクロスのお爺（じい）さんに❶❷（てがみ）だして、ね」

「はい、はい、さあ書（か）きますよ、みっちゃん、いってちょうだい」

「ピアノよ、キュピーよ、クレヨンね、スケッチ帖（『ちょう』）ね、きりぬきに、❶袋（てぶくろ）に、リボンに……ねえかあさん、お家（『うち』）なんかくださらないの」

「そうね、お家（『うち』）なんかおもいからねえ。サンタクロスのお爺（『じい』）さんは（わ）、お年寄（としよ）りだから、とても持（も）てないでしょうよ」

「では（わ）、ピアノも駄❶（だめ）かしら」

「そうね。そんなおもいものは（わ）駄❶（だめ）でしょ」

「じゃピアノもお家（うち）もよすわ、ああ、ハーモニカ！　ハーモニカならかるいわね。そいからサーベルにピストルに……」

「ピストルなんかいるの、みっちゃん」

「だって、おとなりの二郎（『じろう』）さんが、悪漢（『わるもの』）になるとき、いるんだっていったんですもの」

「まあ悪漢（わるもの）ですって。あのね、みっちゃん、悪漢（わるもの）なんかになるのは（わ）よくないのよ。それにね、もし二郎（じろう）さんが悪漢（わるもの）になるのに、どうしてもピストルがいるのだったら、きっとサンタクロスのお爺（じい）さんが二郎（じろう）さんにももってきて❶（くだ）さるわ」

「二郎（じろう）さんとこへ（え）も、サンタクロスのお爺（じい）さんくるの」

「二郎（じろう）さんのお家（うち）へ（え）も来（き）ますよ」

「でも二郎（じろう）さんとこに、❼❼（えんとつ）がないのよ」

「❼❼（えんとつ）がないとこは（わ）、天窓（てんまど）からはいれるでしょう」

「そうお、じゃ、ピストルは（わ）よすわ」

「さ、もう、お茶（ちゃ）もいいでしょ。お庭（にわ）へ（え）いってお遊（あそ）びなさい」

　みっちゃんは（わ）すぐにお庭（にわ）へ（え）いって、二郎（じろう）さんを呼（よ）びました。

「二郎（じろう）さん、サンタクロスのお爺（じい）さんにお❶❷（てがみ）かいて？」

「ぼく知（し）らないや」

「あら、お❶❷（てがみ）出（だ）さないの。あたしかあさんがね、お❶❷（てがみ）だしたわよ。ハーモニカだの、お人❷（にんぎょう）だの、リボンだの、ナイフだの、人❷（にんぎょう）だの、持（も）ってきて❶（くだ）さいって出（だ）したわ」

「お爺（じい）さんが、持（も）ってきてくれるの？」

「あら、二郎（じろう）さん知（し）らないの」

「どこのお爺（じい）さん？」

「サンタクロスのお爺（じい）さんだわ」

「サンタクロスのお爺（じい）さんて、どこのお爺（じい）さん？」

「天（てん）からくるんだわ。クリスマスの晩（ばん）にくるのよ」

「ぼくんとこは（わ）来（こ）ないや」

「あら、どうして？　じゃきっと❼❼（えんとつ）がないからだわ。でも、かあさんいったわ、❼❼（えんとつ）のないとこは（わ）天窓（てんまど）からくるって」

「ほう、じゃくるかなあ、何（なに）もってくる？」

「なんでもよ」

「ピストルでも？」

「ピストルでもサーベルでも」

「じゃ、ぼく❶❷（てがみ）をかこうや」

　二郎（『じろう』）さんは（わ）、大急（おおいそ）ぎで家（『うち』）へ（え）飛（と）んで帰（かえ）りました。二郎（じろう）さんの綿入（わたいれ）をぬっていらした母（かあ）さんにいいました。

「サンタクロスに❶❷（てがみ）をかいてよ、かあさん」

「なんですって、この子（こ）は（わ）」

「ピストルと、靴（くつ）と、洋服（ようふく）と、ほしいや」

「まあ、何（なに）を言（い）っているの」

「みっちゃんとこのかあさんも❶❷（てがみ）をかいて、サンタクロスにやったって、人❷（にんぎょう）だの、リボンだの、ハーモニカだの、ねえかあさん、ぼく、ピストルとサーベルと、ね……」

「それはね二郎（じろう）さん、お隣（となり）のお家（うち）には（わ）❼❼（えんとつ）があるからサンタクロスのお爺（『じい』）さんが来（く）るのです」

「でもいったよ、みっちゃんのかあさんがね、❼❼（えんとつ）がないとこは（わ）天窓（てんまど）がいいんだって」

「まあ。それじゃお❶❷（てがみ）をかいてみましょうね。坊（ぼう）や」

「嬉（『うれ』）しいな。ぼくピストルにラッパもほしいや」

「そんなにたくさん、よくばる子（こ）には（わ）、❶（くだ）さらないかも知（し）れませんよ」

「だってぼく、ラッパもほしいんだもの」

「でもね、サンタクロスのお爺様（じいさま）は（わ）、世界（せかい）中（ちゅう）の子供（こども）に❼❸（おくりもの）をなさるんだから、一人（ひとり）の子供（こども）が欲（よく）ばったら貰（『もら』）えない子供（こども）ができると悪（わる）いでしょう」

「じゃあぼく一（ひと）つでいいや、ラッパ。ねえかあさん」

「そうそう二郎（じろう）さんは（わ）好（『よ』）い子（ご）ね」

「❶（あか）い房（ふさ）のついたラッパよ、かあさん」

「えエえエ、❶（あか）い房（ふさ）のついたのをね」

「うれしいな」

　クリスマスの夜（よる）があけて、眼（『め』）をさますと、二郎（じろう）さんの枕（『まくら』）もとには（わ）、立派（りっぱ）な黄色（きいろ）く光（ひか）って❶（あか）い房（ふさ）のついたラッパが、ちゃんと二郎（じろう）さんを待（ま）っていました。二郎（じろう）さんは（わ）大喜（おおよろこ）びでかあさんを呼（よ）びました。

「かあさん、ぼく吹（ふ）いてみますよ。チッテ、チッテタ、トッテッ、チッチッ、トッテッチ」

　ところが、みっちゃんの方（ほう）は（わ）、朝（あさ）、❶（め）をさまして見（み）ると、リボンと鉛筆（えんぴつ）とナイフとだけしかありませんでした。

　みっちゃんは（わ）ストーブの❼❼（えんとつ）をのぞいて見（み）ましたが、外（そと）には（わ）何（なに）も出（で）てきませんでした。みっちゃんは（わ）泣（な）き出（だ）しました。いくらたくさん❼❸（おくりもの）があっても、みっちゃんを喜（よろこ）ばせることが出来（でき）ないのでした。みっちゃんは（わ）いくらでもほしい子（こ）でしたから。

（一九（せんきゅうひゃく）二五（にじゅうごねん）、九（くがつ）、二五（にじゅうごにち））

■ コンテンツ（こんてんつ）

作品（さくひん）名（めい）：クリスマス（くりすます）の贈物（おくりもの）

著者（ちょしゃ）名（めい）：竹久（たけひさ）夢二（ゆめじ）

「ねえ、かあさん」

　みっちゃんは（わ）、お三時（やつ）のとき、二（ふた）つ目（め）の木（こ）の葉（は）パン（ぱん）を半分（はんぶん）頬（ほお）ばりながら、母様（かあさま）にいいました。

「ねえ、かあさん」

「なあに、みっちゃん」

「あのね、かあさん。もうじきに、クリスマス（くりすます）でしょ」

「ええ、もうじきね」

「どれだけ？」

「みっちゃんの年（とし）ほど、おねんねしたら」

「みっちゃんの年（とし）ほど？」

「そうですよ」

「じゃあ、かあさん、一（ひと）つ二（ふた）つ三（みっ）つ……」とみっちゃんは（わ）、自分（じぶん）の年（とし）の数（かず）ほど、テーブル（てーぶる）の上（うえ）に手（て）をあげて、指（ゆび）を折（お）りながら、勘定（かんじょう）をはじめました。

「ひとつ、ふたあつ、みっつ、そいから、ね、かあさん。いつつ、ね、むっつ。ほら、むっつねたらなの？　ね、かあさん」

「そうですよ。むっつねたら、クリスマス（くりすます）なのよ」

「ねえ、かあさん」

「まあ、みっちゃん、お茶（ちゃ）がこぼれますよ」

「ねえ、かあさん」

「あいよ」

「クリスマス（くりすます）には（わ）ねえ。ええと、あたいなにがほしいだろう」

「まあ、みっちゃんは（わ）、クリスマス（くりすます）の贈物（おくりもの）のことを考（かんが）えていたの」

「ねえ、かあさん、何（なん）でしょう」

「みっちゃんのことだもの。みっちゃんが、ほしいとおもうものなら、何（なん）でも下（くだ）さるでしょうよ。サンタクロス（さんたくろす）のお爺（じい）さんは（わ）」

「そう？　かあさん」

「ほら、お口（くち）からお茶（ちゃ）がこぼれますよ。さ、ハンカチ（はんかち）でおふきなさい。えエ（え）えエ（え）、なんでも下（くだ）さるよ。みっちゃん、何（なに）がほしいの」

「あたいね。金（きん）の服（ふく）をきたフランス（ふらんす）の女王様（じょおうさま）とね、そいから赤（あか）い頬（ほっ）ぺをした白（しろ）いジョーカー（じょーかー）と、そいから、お伽（とぎ）ばなしの御本（ごほん）と、そいから、なんだっけそいから、ピアノ（ぴあの）、そいから、キュピー（きゅぴー）、そいから……」

「まあ、ずいぶんたくさんなのね」

「ええ、かあさん、もっとたくさんでもいい？」

「えエ（え）、えエ（え）、よござんすとも。だけどかあさんは（わ）そんなにたくさんとてもおぼえきれませんよ」

「でも、かあさん、サンタクロス（さんたくろす）のお爺（じい）さんが持（も）ってきて下（くだ）さるのでしょう」

「そりゃあ、そうだけれどもさ、サンタクロス（さんたくろす）のお爺（じい）さんも、そんなにたくさんじゃ、お忘（わす）れなさるわ」

「じゃ、かあさん、書（か）いて頂戴（ちょうだい）な。そして、サンタクロス（さんたくろす）のお爺（じい）さんに手紙（てがみ）だして、ね」

「はい、はい、さあ書（か）きますよ、みっちゃん、いってちょうだい」

「ピアノ（ぴあの）よ、キュピー（きゅぴー）よ、クレヨン（くれよん）ね、スケッチ（すけっち）帖（ちょう）ね、きりぬきに、手袋（てぶくろ）に、リボン（りぼん）に……ねえかあさん、お家（うち）なんかくださらないの」

「そうね、お家（うち）なんかおもいからねえ。サンタクロス（さんたくろす）のお爺（じい）さんは（わ）、お年寄（としよ）りだから、とても持（も）てないでしょうよ」

「では（わ）、ピアノ（ぴあの）も駄目（だめ）かしら」

「そうね。そんなおもいものは（わ）駄目（だめ）でしょ」

「じゃピアノ（ぴあの）もお家（うち）もよすわ、ああ、ハーモニカ（はーもにか）！　ハーモニカ（はーもにか）ならかるいわね。そいからサーベル（さーべる）にピストル（ぴすとる）に……」

「ピストル（ぴすとる）なんかいるの、みっちゃん」

「だって、おとなりの二郎（じろう）さんが、悪漢（わるもの）になるとき、いるんだっていったんですもの」

「まあ悪漢（わるもの）ですって。あのね、みっちゃん、悪漢（わるもの）なんかになるのは（わ）よくないのよ。それにね、もし二郎（じろう）さんが悪漢（わるもの）になるのに、どうしてもピストル（ぴすとる）がいるのだったら、きっとサンタクロス（さんたくろす）のお爺（じい）さんが二郎（じろう）さんにももってきて下（くだ）さるわ」

「二郎（じろう）さんとこへ（え）も、サンタクロス（さんたくろす）のお爺（じい）さんくるの」

「二郎（じろう）さんのお家（うち）へ（え）も来（き）ますよ」

「でも二郎（じろう）さんとこに、煙突（えんとつ）がないのよ」

「煙突（えんとつ）がないとこは（わ）、天窓（てんまど）からはいれるでしょう」

「そうお、じゃ、ピストル（ぴすとる）は（わ）よすわ」

「さ、もう、お茶（ちゃ）もいいでしょ。お庭（にわ）へ（え）いってお遊（あそ）びなさい」

　みっちゃんは（わ）すぐにお庭（にわ）へ（え）いって、二郎（じろう）さんを呼（よ）びました。

「二郎（じろう）さん、サンタクロス（さんたくろす）のお爺（じい）さんにお手紙（てがみ）かいて？」

「ぼく知（し）らないや」

「あら、お手紙（てがみ）出（だ）さないの。あたしかあさんがね、お手紙（てがみ）だしたわよ。ハーモニカ（はーもにか）だの、お人形（にんぎょう）だの、リボン（りぼん）だの、ナイフ（ないふ）だの、人形（にんぎょう）だの、持（も）ってきて下（くだ）さいって出（だ）したわ」

「お爺（じい）さんが、持（も）ってきてくれるの？」

「あら、二郎（じろう）さん知（し）らないの」

「どこのお爺（じい）さん？」

「サンタクロス（さんたくろす）のお爺（じい）さんだわ」

「サンタクロス（さんたくろす）のお爺（じい）さんて、どこのお爺（じい）さん？」

「天（てん）からくるんだわ。クリスマス（くりすます）の晩（ばん）にくるのよ」

「ぼくんとこは（わ）来（こ）ないや」

「あら、どうして？　じゃきっと煙突（えんとつ）がないからだわ。でも、かあさんいったわ、煙突（えんとつ）のないとこは（わ）天窓（てんまど）からくるって」

「ほう、じゃくるかなあ、何（なに）もってくる？」

「なんでもよ」

「ピストル（ぴすとる）でも？」

「ピストル（ぴすとる）でもサーベル（さーべる）でも」

「じゃ、ぼく手紙（てがみ）をかこうや」

　二郎（じろう）さんは（わ）、大急（おおいそ）ぎで家（うち）へ（え）飛（と）んで帰（かえ）りました。二郎（じろう）さんの綿入（わたいれ）をぬっていらした母（かあ）さんにいいました。

「サンタクロス（さんたくろす）に手紙（てがみ）をかいてよ、かあさん」

「なんですって、この子（こ）は（わ）」

「ピストル（ぴすとる）と、靴（くつ）と、洋服（ようふく）と、ほしいや」

「まあ、何（なに）を言（い）っているの」

「みっちゃんとこのかあさんも手紙（てがみ）をかいて、サンタクロス（さんたくろす）にやったって、人形（にんぎょう）だの、リボン（りぼん）だの、ハーモニカ（はーもにか）だの、ねえかあさん、ぼく、ピストル（ぴすとる）とサーベル（さーべる）と、ね……」

「それはね二郎（じろう）さん、お隣（となり）のお家（うち）には（わ）煙突（えんとつ）があるからサンタクロス（さんたくろす）のお爺（じい）さんが来（く）るのです」

「でもいったよ、みっちゃんのかあさんがね、煙突（えんとつ）がないとこは（わ）天窓（てんまど）がいいんだって」

「まあ。それじゃお手紙（てがみ）をかいてみましょうね。坊（ぼう）や」

「嬉（うれ）しいな。ぼくピストル（ぴすとる）にラッパ（らっぱ）もほしいや」

「そんなにたくさん、よくばる子（こ）には（わ）、下（くだ）さらないかも知（し）れませんよ」

「だってぼく、ラッパ（らっぱ）もほしいんだもの」

「でもね、サンタクロス（さんたくろす）のお爺様（じいさま）は（わ）、世界（せかい）中（ちゅう）の子供（こども）に贈物（おくりもの）をなさるんだから、一人（ひとり）の子供（こども）が欲（よく）ばったら貰（もら）えない子供（こども）ができると悪（わる）いでしょう」

「じゃあぼく一（ひと）つでいいや、ラッパ（らっぱ）。ねえかあさん」

「そうそう二郎（じろう）さんは（わ）好（よ）い子（ご）ね」

「赤（あか）い房（ふさ）のついたラッパ（らっぱ）よ、かあさん」

「えエ（え）えエ（え）、赤（あか）い房（ふさ）のついたのをね」

「うれしいな」

　クリスマス（くりすます）の夜（よる）があけて、眼（め）をさますと、二郎（じろう）さんの枕（まくら）もとには（わ）、立派（りっぱ）な黄色（きいろ）く光（ひか）って赤（あか）い房（ふさ）のついたラッパ（らっぱ）が、ちゃんと二郎（じろう）さんを待（ま）っていました。二郎（じろう）さんは（わ）大喜（おおよろこ）びでかあさんを呼（よ）びました。

「かあさん、ぼく吹（ふ）いてみますよ。チッテ（ちって）、チッテタ（ちってた）、トッテッ（とってっ）、チッチッ（ちっちっ）、トッテッチ（とってっち）」

　ところが、みっちゃんの方（ほう）は（わ）、朝（あさ）、目（め）をさまして見（み）ると、リボン（りぼん）と鉛筆（えんぴつ）とナイフ（ないふ）とだけしかありませんでした。

　みっちゃんは（わ）ストーブ（すとーぶ）の煙突（えんとつ）をのぞいて見（み）ましたが、外（そと）には（わ）何（なに）も出（で）てきませんでした。みっちゃんは（わ）泣（な）き出（だ）しました。いくらたくさん贈物（おくりもの）があっても、みっちゃんを喜（よろこ）ばせることが出来（でき）ないのでした。みっちゃんは（わ）いくらでもほしい子（こ）でしたから。

（一九（せんきゅうひゃく）二五（にじゅうごねん）、九（くがつ）、二五（にじゅうごにち））

■ 原書情報（青空文庫）

図書カード：No.46421（新字新仮名）

https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/card46421.html

https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46421_23631.html

底本：「童話集　春」小学館文庫、小学館

　　　2004（平成16）年8月1日初版第1刷発行

底本の親本：「童話　春」研究社

　　　1926（大正15）年12月

入力：noir

校正：noriko saito

■ 今日（きょう）の漢字（かんじ）の説明（せつめい）（カタカナは（わ）音（おん）読（よ）み、平仮名（ひらがな）は（わ）訓（くん）読（よ）みです）

❶：下：カ・ゲ・下（もと）・下（した）・下（しも）・㊥下（もと）・下（さ）げる・下（さ）がる・下（くだ）る・下（くだ）す・下（くだ）さる・下（お）ろす・下（お）りる【位（くらい）や地位（ちい）や身分（みぶん）が他（ほか）より低（ひく）い／卑（いや）しいもの】

❶：手：シュ・▲ズ・手（て）・㊥手（た）【人体（じんたい）の肩（かた）や腕（うで）や手首（てくび）から先（さき）の部分（ぶぶん）】

❶：目：モク・㊥ボク・目（め）・㋙目（ま）・目（まなこ）・目（かなめ）【目玉（めだま）／物（もの）を見（み）る働（はたら）きをする器官（きかん）／物事（ものごと）の境（さかい）となる情況（じょうきょう）】

❶：赤：セキ・㋙シャク・赤（あか）・赤（あか）い・赤（あか）らむ・赤（あから）める【人の血や夕焼け空や火のような色／紛（まぎ）れも無（な）いこと／真心（まごころ）／真実（しんじつ）】

❷：形：ケイ・ギョウ・形（かた）・形（かたち）・▲形（なり）【表（おもて）に現（あらわ）れた姿（すがた）／似（に）た個々（ここ）の形（かたち）から抽象（ちゅうしょう）したもの】

❷：紙：シ・紙（かみ）【字（じ）や絵（え）を書（か）いたり物（もの）を包（つつ）んだりするのに使（つか）う漉（す）いて作（つく）るもので主（おも）に植物（しょくぶつ）性（せい）繊維（せんい）を材料（ざいりょう）とする／文字（もじ）が書（か）いてある紙（かみ）】

❸：物：ブツ・モツ・物（もの）【この世（よ）にある有形（ゆうけい）無形（むけい）の一切（いっさい）のもの／立派（りっぱ）な事柄（ことがら）や状態（じょうたい）】

❼：煙：エン・煙（けむ）る・煙（けむり）・煙（けむ）い・▲煙（けぶ）る・▲煙（けむ）【火（ひ）を焚（た）く時（とき）に空中（くうちゅう）に立（た）ち昇（のぼ）るもの／煙草（たばこ）／霞（かすみ）／靄（もや）】

❼：突：トツ・突（つ）く【勢（いきよ）いよく出（で）る／突（つ）き出（で）る／抜（ぬ）きん出（で）る／出（だ）し抜（ぬ）けに／急（きゅう）に】

❼：贈：ゾウ・ソウ・贈（おく）る【お礼（れい）や祝福（しゅくふく）や敬意（けいい）といった気持（きも）ちを示（しめ）すためにものを渡すこと】

　※ ▲は常用（じょうよう）外（がい）の読（よ）み方（かた）です。㊥は中学（ちゅうがく）で、㋙は高校（こうこう）で習（なら）う読（よ）み方（かた）です。漢検（かんけん）・漢字（かんじ）辞典（じてん）の記載（きさい）に準拠（じゅんきょ）しています。

　※ 漢字（かんじ）説明（せつめい）はモジナビ https://mojinavi.com/ の各（かく）ページを参考（さんこう）にしています。

■ 今日（きょう）の漢字（かんじ）の書（か）き順（じゅん）や詳（くわ）しい説明（せつめい）を知（し）りたい方（かた）は此方（こちら）をどうぞ。

小１,❶：下 https://mojinavi.com/d/u4e0b

小１,❶：手 https://mojinavi.com/d/u624b

小１,❶：目 https://mojinavi.com/d/u76ee

小１,❶：赤 https://mojinavi.com/d/u8d64

小２,❷：形 https://mojinavi.com/d/u5f62

小２,❷：紙 https://mojinavi.com/d/u7d19

小３,❸：物 https://mojinavi.com/d/u7269

中学,❼：煙 https://mojinavi.com/d/u7159

中学,❼：突 https://mojinavi.com/d/u7a81

中学,❼：贈 https://mojinavi.com/d/u8d08

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★★★ 姉妹シリーズ（しりーず） ★★★

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★ ひらがなルビ（るび）版（ばん）『全部（ぜんぶ）の漢字（かんじ）にルビ（るび）を振（ふ）ってみたくはありませんか？』

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青空（あおぞら）文庫（ぶんこ）とは（わ）？

　青空（あおぞら）文庫（ぶんこ）は（わ）、誰（だれ）にでもアクセス（あくせす）できる自由（じゆう）な電子（でんし）本（ほん）を、図書館（としょかん）のようにインターネット（いんたーねっと）上（じょう）に集（あつ）めようとする活動（かつどう）です。

　著作（ちょさく）権（けん）の消滅（しょうめつ）した作品（さくひん）と、「自由（じゆう）に読（よ）んでもらってかまわない」とされたものを、テキスト（てきすと）とＸ（えっくす）ＨＴＭＬ（えいちてぃえむえる）（一部（いちぶ）は（わ）ＨＴＭＬ（えいちてぃえむえる））形式（けいしき）に電子（でんし）化（か）した上（うえ）で揃（そろ）えています。

https://www.aozora.gr.jp/guide/aozora_bunko_faq.html

Ｑ（きゅー）：青空（あおぞら）文庫（ぶんこ）って、何（なに）ですか？

Ａ（えー）：1997（せんきゅうひゃくきゅうじゅうなな）年（ねん）に始（はじ）まったボランティア（ぼらんてぃあ）活動（かつどう）で、誰（だれ）にでもアクセス（あくせす）できる自由（じゆう）な電子（でんし）本（ぼん）を、共有（きょうゆう）可能（かのう）なものとして図書館（としょかん）のようにインターネット（いんたーねっと）上（じょう）に集（あつ）めようとしております。現在（げんざい）は（わ）、日本（にっぽん）国内（こくない）で著作（ちょさく）権（けん）保護（ほご）期間（きかん）の満了（まんりょう）した作品（さくひん）を中心（ちゅうしん）に、ボランティア（ぼらんてぃあ）のみなさんの力（ちから）によって電子（でんし）化（か）作業（さぎょう）を進（すす）めています。青空（あおぞら）文庫（ぶんこ）は（わ）そういった電子（でんし）化（か）活動（かつどう）のための、またその成果（せいか）物（ぶつ）をアーカイヴ（あーかいゔ）しておくための場（ば）でもあり、そこからコピー（こぴー）された本（ほん）の集成（しゅうせい）や活用（かつよう）事例（じれい）もまた〈青空（あおぞら）文庫（ぶんこ）〉と呼（よ）ばれることがあります。詳（くわ）しくは（わ）「青空（あおぞら）文庫（ぶんこ）のしくみ」（http://www.aozora.gr.jp/aozora_bunkono_shikumi.html）をご一読（いちどく）ください。