第77話 王都への道!!

 騎士とのはっきりしない決着から、一週間が経った。あれから、夜の一時間位をメアリーさんのところで過ごしていた。おかげで、地底言語をマスターする事が出来た。

 でも、古代言語は、まだまだあるみたいで、二つの古代言語をマスターしたくらいじゃ、本の全てを読むことは出来なかった。そもそも、天界言語が混じっている時点で、全てを読むことは出来ないんだけど。

 そして、今日はソル達と一緒に、王都への道を攻略する予定だ。そのために私は、アトランティス港の入口に立っていた。


「いたいた。ルナちゃん!」


 ぼーっと立っていると、アトランティス港の中から、ソル、シエル、メレが歩いてきた。


「待たせちゃった?」

「ううん。全然、待ってないよ」


 いつも先にいるからか、待たせたと思われてしまう。実際には、集合時間の五分くらい前に、来るようにしているから、大して待ったことなんて、そんなにないんだけどね。


「皆、揃ったし、早速行ってみよ。このまま歩いていく?」

「それ以外に、移動方法があるの?」


 ソルは、そう言って首を捻った。


「え? プティに乗るっていうのがあるじゃん」

「プティは、タクシーじゃないよ。でも、それは有りかもしれないね。移動時間を短縮出来るし、モンスターとの戦闘も減らせる気がするし『起きて』」


 シエルはそう言って、プティを巨大化する。


「じゃあ、皆、乗って」


 私達は、全員プティの上に乗る。


「私達、全員が乗っても大丈夫なんですか?」


 メレは、プティに乗りながら、少し不安そうにそう言った。


「大丈夫だよ。四人くらいならギリギリいけるはず。プティ、行って!」


 シエルの掛け声で、プティが走り出す。私達は、背中に掴まる。シエルの言うとおり、ギリギリ大丈夫みたいだ。私とソルは戦闘職だから、普通に大丈夫だし、シエルの騎乗スキルがあるから大丈夫。ただ、メレは、すごく頑張ってしがみついていた。


「メレ、大丈夫?」

「だ、大丈夫……だと思います……」

「ソル、メレを支えておいてくれる?」

「うん、分かった」


 ソルが、メレの傍に移動して、メレを支える。本当なら、私が支えてもよかったんだけど、この中でまともな遠距離攻撃を持っているのが、私だけだから、私はフリーでいた方がいい。


「すみません。ありがとうございます」

「ううん。支援職だと、これは仕方ないよ。それより、しっかり掴まっててね」


 私達を乗せたプティは、すごい速度で王都を目指していく。


「何か、プティの速度上がった?」

「よく気付いたね。一人で冒険してたら、プティの強化用の布を見つけてね。全体的に強くなってるんだ」

「強化用の布かぁ。私も強化用パーツとかあるのかな? 『夜烏』」


 会話の途中だったけど、敵の気配を感じた私は、吉祥天を取り出して、夜烏を撃ち出した。吉祥天に込めていた弾は、麻酔弾だ。そのため、夜烏によって効力の上がった麻酔弾が撃ち出されていった。草原の影から突撃をしようとしてきていた羊に命中して、瞬時に眠らせた。羊は、顔面を擦りながら止まった。


「強化パーツなら、アーニャさんが作ってくれるんじゃない?」

「ああ、その可能性があったかぁ。ということは……また出費が重なるなぁ……」

「ルナって、いつも金欠だよね」

「最初の頃は、そんなでもなかったんだけどなぁ」


 シエルの言うとおり、最近はいつも金欠の状態だ。色々やることがかさんでいるということもあるが、装備の修理などに、ほとんど消えていっている。


「戦い方が荒いからかな?」

「ルナさんは、結構丁寧に戦っているように見えますけど……」

「いや、あの時は、メレの付加があったから、すぐに倒せただけだし。普段は、もっと無茶な事ばかりしているからね」


 得に、この前の黒騎士戦は、かなり無茶をした。銃も防具もボロボロになったし。


「つまり、一人で戦うから、無茶をせざるを得なかったって事だね」


 ソルの指摘に何も言えなくなる。


「まぁ、それは置いておこう。そろそろ、ボスのエリアだと思うよ」


 私は、通っている道の景色が、馬車で通った時に気配を感じた場所に近づいている事に気が付いて、そう言った。ソル達がすぐに臨戦態勢に移った。


 そして、メレ以外の全員の気配感知に、多数の反応が発生する。


「もしかしてだけど、ここのボスって複数体!?」

「さぁ?」


 シエルが、動揺するけど、正直、あの時はアザレアさん達が全部倒したから、全く分からない。私達はプティから降り、それぞれの得物を抜いて、戦闘の準備をする。


「取りあえず、私は歌いますね。~~~♪」


 メレが歌い、私達の力が湧き上がってくる。この効果は、プティ達にも有効みたいだ。


「全員臨機応変に動こう。ガーディとプティは、二人の護衛で残しておいて」

「分かった。気を付けてね」


 シエル達の守りをプティとガーディに任せて、私とソルがモンスターの集団に突っ込む。集団で現れたモンスターは、猿だった。名前をコープス・モンキーという。先に、コープス・モンキーとぶつかるのは、走る速度が速いソルの方だった。


「抜刀術『朏』」


 大きく弧を描いた刀が、前方に固まっていたコープス・モンキーを、五体まとめて屠る。


「銃技『複数射撃』」


 エクスプローラー弾が、十体の敵に命中して絶命させた。二人で十五体を倒したが、これでも敵のほんの一部だった。コープス・モンキーは、後百体くらいいるように感じる。これを、瞬殺していった戦乙女騎士団の強さが異常だということが分かる。


「これ、倒しきれるの!?」

「ぼやいている暇があったら、手を動かす! どのみち、倒さないと前に進めないんだから!」


 あまりの敵の多さに、ソルが気圧されていたけど、私が一喝したら、すぐに覚悟を決めた顔になった。


「ルナちゃん! 敵を一直線にまとめて!」

「分かった! シエル、手伝って!」

「ガーディ!」


 シエル達の守りについていたガーディが駆け出す。それと同時に私も走り出した。


「銃技『複数射撃』!」


 あれから、節約し続けていた氷結弾を縦に撃っていく。コープス・モンキーの片側一直線に氷の壁が出来上がる。


「狼人形術『ウルフ・ハウリング』!」


 ガーディの遠吠えが、コープス・モンキー達を萎縮させる。片側を封じられ、動けなくなったコープス・モンキー達は、ソルの要望通り、ほぼ一直線になっている。


「抜刀術『皓月千里』」


 ソルの放った奥義が、コープス・モンキー達と木々を一刀両断する。その一撃は、今まで使った時よりも、範囲と威力が上がっていた。


「ごめんね。後は、任せた」


 ソルは、膝から崩れ落ちる。その身体をガーディが支える。


「任された」


 私は、残っているコープス・モンキー達を一匹残らず倒しきる。ソルのおかげで、数が激減していたので、殲滅までの時間はそう掛からなかった。


「ふぅ……終わった……」


 敵を殲滅した私達は、一箇所に合流する。


「やっぱり、メレの歌があるとないとじゃ、全然違うね」

「私も思った。付加無しの奥義と今の奥義じゃ、全然違ったし」

「そういえば、ガーディもいつも以上に、技の効果が高かったかも」


 ソルとシエルも同じ感想だった。私の銃弾の威力もやっぱりいつもより高かった。メレの支援能力は一級品だ。


「そう言って貰えると嬉しいです。まだ、ちゃんとした攻撃方法が確立していないので、こんな事しか出来ませんし」


 この前、活路が開いたメレの攻撃だけど、まだ、それを有効に使う事は出来ていなかった。あれを、そのまま使えば、味方にも被害が及びかねないからだ。


「まぁ、ゆっくり考えていけば良いよ」

「ありがとうございます」

「よし、じゃあ、王都に向けて出発しよう」


 私達は、またプティに乗って、王都へと向かった。

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