第2話 織部ズムの暗躍

数日間、利休派からの接触もなく、すでに忘れそうになっていたころ、友人から素敵な食器店が出来たという話を聞いた。


濃い緑色に茶色い筋、白い部分がおしゃれな食器だという。


私:「それって織部焼って言わない?」


友人たちは首を傾げ、知らないと口を揃えて言った。


友人と共に店に行くと、織部焼でできたおしゃれな洋風食器が並んでいた。


私:「確かにおしゃれだ。」


店員:「お気に召しましたか、お嬢様。」


私:「えっ、お嬢様?私の事ですか、やだな~、すごく照れます。」


店員:「こちらの桜が付いたティーカップなどはいかがですか?お嬢様にお似合いですよ。」


私:「えへへ、そうですか?」


店員:「この桜には逸話があるんですよ。その昔、古田織部が奈良の商人を茶会に招いたとき、その商人が桜の枝を亭主に送ります。通常、桜は茶席では生けないのですが、織部は親切から敢えて生けてあげたのです。そんなことから、このティーカップの桜は、親切心の象徴として、皆様に親しまれています。」


私はついつい長官から聞いた言葉を使ってしまった。

私:「へぇ~、織部ですか?まるで織部ズムってのみたい。」


店員:「その名をどこで?」


私:「えっ?」


店員:「ちょっと、こちらに来ていただけますか?」


急に真剣な表情になった店員に、私は怖さを感じ、すぐ走って店を出ていった。


翌日以降、友人たちに話を聞こうとすると、利休は嫌いになったと言われ、少しずつ疎遠になっていった。


私:「よくも友人を私から奪ったわね、織部ズムども!」


私は意を決し、先日、長官に会った事務所らしき建物を目指すことにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る