第5話 スライムの粘液被害者、第二号!?

「私が使う魔法の中でも最強の滅却魔法。その分、魔法を使うのに準備時間がかかるの。その間二人でスライムの足止めをお願い」


 俺たちは満腹になった彩を連れ、次の街に行く傍ら、彩の魔法を見せてもらうことにした。いきなり大物は危険ということなのでスライムにしたってことだ。

 平原の、遠く離れた場所には一匹のスライムの姿。

 そのスライムはこちらに向かってきた。

 だが、さらに別の方向からスライムが五匹向かってくる姿が見える。


「彩は平原にいるスライムを魔法で倒してくれ。向こうの五匹は俺たちでやる。行くぞガブリエル。今度こそ辱めをうけた恨みをあのスライムにぶつけろ。仮にも天使だろ。たまには天使の実力を見せてみろ!」

「そ、そうね。粘液まみれはもうゴリゴリだものね!」


 この前、服が溶かされたことを思い出してかちょっと涙目で二の足を踏んでる天使を、彩が不思議そうに。


「・・・・・・天使? やっぱりガブリエルは天使だったんだね。なんでこっちの世界に? それに服が溶かされたとかなんとか・・・・・・?」

「この前スライムで粘液を飛ばす奴がいたんだけどそれにあたるとダメージはないのに来てるものだけを溶かすって厄介なのがいてガブリエルは下着だけになったことがあってさ、つい最近までふさぎ込んでたんだよ」

「・・・・・・それは、何ともまあ・・・・・・」


 俺の言葉に、同じ女性だからか同情の目でガブリエルを見る彩。

 涙目になったガブリエルが、魔法の杖でやけくそ気味に、近い方のスライムへと駆け出した。


「何よ、この前はスライムに近接戦闘を仕掛けたのが悪かったのよ。今度は魔法で遠距離攻撃を仕掛ければスライムなんて怖くないわ! 見てなさいよ琢磨さん! この可憐な天使の私の雄姿を!」


 そう叫んで、『ファイヤーボール』を放つとスライムに当たる直前、スライムが消えた。気が付くとガブリエルの前に現れて粘液攻撃を浴びて、また服が解けた。


「・・・・・・何でよ。何でスライムがこんなに強いのよ!!!」


 スライムはガブリエルの服が溶けるさまを見てニターッとした顔つきになっている。これではエロオヤジみたいじゃないか。

 とりあえずガブリエルが身を挺してスライムを足止めしてる間に背後から切り裂いた。この世界のスライム強すぎないか。・・・・・・おっと、レベルが上がったようだ。

・・・・・・と、その時、彩の周囲の空気がビリビリと震えだした。

 彩が使おうとしている魔法はとんでもなさそうなのが俺でも分かる。

 魔法を唱える彩の声が大きくなり、空に飛びあがった。


 (何あれ? 空も飛べるなんてロマンじゃないか。今度教えてもらおう。)


 俺が思いを馳せていると、


「見ているがいい! これがアークウィザードの最も威力のある究極の攻撃魔法を!!!」


 彩の杖の先に光が灯った。

 膨大な光を凝縮したような小さな光だ。

 彩の赤い目がコンタクト越しに輝くと、


「『極限炎暴風メテオストーム』」


 彩の杖から放たれた巨大な炎は渦を巻いて蛇のようにうねりながら平原にいるスライムに吸い込まれるように突き刺さると、爆音がとどろいた。


「ふっ、決まった・・・・・・」


 彩がマントを旗ませながら帽子のつばを指で持ちながらポーズをとっている。やはり、中二病のようだ。そんな彩を無視し、前方を見ると土煙が晴れてきて平原を見ると無傷のスライムがそこにはいた。


「はっ、何で!?」


 俺はスライムが生きてるのが謎だった。この世界のスライムってどんだけ強いの。

 ほら、倒したと思って決めポーズをとってた彩が恥ずかしさのあまりポーズをとったまま顔を赤くして固まってるじゃん・・・・・・。


「――ス、スライムの分際でわ、私の攻撃をかわすなんてやりますぬっ、イッタ―!」


 あいつ大事なところでセリフ嚙んだ上に舌も噛んだようだ。

 彩は八つ当たりにするようにもう一度魔法を放った。しかも今度はいくつもの火の玉が宙に浮いていた。確かにあれなら逃げ場はないだろう。スライムにはやりすぎな魔法のような気がするが、さっきの魔法でも倒せなかったんだからスライムだと思ってかかっていかない方がいいかもしれない。


「もう謝っても許さないわよー! いけー!」


 いくつもの火の玉がスライムに襲い掛かる。逃げ場がなくとらえたと思ったら紙一重のタイミングでスライムがステップで躱している。明らかにスライムの動きじゃない。あれはスライムじゃなくて別の何かであってほしい。


「まだまだー!!」


 さらに火の玉がスライムに飛んでいく様はニュースなどで見た戦場のようだ。

 スライムはなお躱しながらものすごいスピードでこっちに近づいてくる。

 スライムは途中で止まったと思ったら進行方向を変えた。その先には半泣き状態のガブリエルが粘液まみれで膝を抱えていた。


(何で、まだあんなところにいるんだ!)


 だがこれはチャンスだ。ガブリエルがおとりになってるお陰でスライムの動きが止まっている。この隙に彩の魔法で消し飛ばしてもらえばいいだろう。


「彩! 今がチャンスだ! もう一度さっきの魔法を・・・・・・」


そこまで言いかけて、彩の方を見ると、

そこには彩が膝をついていた。


「ふ・・・・・・。我が究極魔法『極限炎暴風メテオストーム』はその絶大な威力に加えその後の魔法の連射、そのおかげで消費魔力も絶大。・・・・・・要約すると、究極魔法を避けられたことで頭に血が上って魔法を打ちまくって魔力を使い果たして歩くことも身動き一つとれません。あっ、スライムがガブリエルに興味を無くしたのかこっちに来ます。・・・・・・やばいわ。辱めを受けるのだけは。ちょっとた、助け・・・・・・ひあっ・・・・・・!?」


 俺は、ガブリエルと彩が身を挺して動きを封じ込めたスライム二匹を討伐した。

 何とか、スライムを倒したがスライムにこんなに苦戦するようじゃ先が思いやられる。この装備がなかったらと思うとぞっとする。もっとレベルを上げないと悪魔を倒すなんて夢のまた夢だろう。

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