彼との思い出
hukuro-
第1話
隣で寝息を立てている彼の横顔を見ながら彼との出来事を思い出す。
彼との思い出は、二年も前に遡る。
あれは、とても晴れた日のデートの日だった。
あの日私たちは、これからも一緒に歩いていくことを誓い合ったのだ。
その日、彼は秋を感じられる軽やかな服装だった。
「さぁ、行こう」と私の手を取ってくれたのを今でも覚えている。
最近買ったばっかりの黒色の車の助手席に乗り、私の隣の空いた席に彼は座った。
彼は、私の横顔を確認しエンジンをかけた。
15分ほど道路を走っていると、後部座席で何かが落ちる音が聞こえた。なんだろうと思い、後ろを見てみると数冊の本が落ちていた。ちょうど信号で止まっていたので後ろに手を伸ばし、一冊拾ってみた。
ハンドルを握る彼に何の本か聞いてみると
「最近書いた本だよ」と誇るような顏で応えた。いや、どちらかというと
どや顔のほうが近いだろう。
「へぇ」と、感心の声を上げ中を見よう
と開けてみると、文字の羅列が飛び込んできた。
私が驚いた表情をしている隣で彼は幼い男の子が新しいおもちゃを買ってもらった時みたいな笑顔で笑っている彼がいた。彼は笑いながら、
「君は本当に長文が苦手だね。」といわれた。
「うるさいなぁ」と、少し頬膨らませながら応えた。
彼は、物語を作ることがとても得意だ。実は過去に何度か大きな賞をとったことがあるらしい。信じられないが、こんなに物語を楽しそうに書くのだ。信じないほうが無理かもしれない。彼が紙へ向かうとまるで紙から文字が飛び出してきて、それを、ペンという網で捕まえ文字を綴っていくようだった。
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