幕間3 魔法使いの話
あ、魔力の話が出たな。ちょい待ち。
……これだ。
俺が見習いの頃に、勉強させられてた魔法書で、基本説明は全部載ってるけど、読む?
それとも俺の大雑把な説明でいい?
……分かった。んじゃあ、概要だけ説明するか。
魔力は誰しもに蓄積されている力のこと。
……第六感? うーん、違うかな。
魔力量は人それぞれ上限があって、魔法を使えば減るし、時間経過か、人から貰えば増える。
体内の水分量みたいな?
汗掻いたら減るけど、水飲めば増えるし……。
それと、魔力を持つ本人が意識して初めてそれを魔法に変換できるようになる。
魔法として発動させるには、呪文の詠唱、魔方陣、魔法道具っていう媒介が必要だし、魔力は意識して存在に気付くものだから、どういう魔法を発動したいかイメージする必要がある。
それと魔法について。
一番、夢無くす言い方すると、魔法で出来ることは現代科学で九割は出来る、って師匠が言ってた。
で、師匠の例えだと、九割の魔法の正しい使い方は抗酒薬なんだ。
あー、どんくらいイメージできるか……。
アルコール依存症患者の治療で使う薬なんだけど。
抗酒薬はあくまで飲酒欲求をなくすことが目的で、患者本人が抗酒薬をやめることはできてしまう。
結局、薬を飲んどきゃ治る訳じゃなくて、患者にアルコールを摂取しないことを選ばせ続けることが鍵なんだ。
さっきも言ったこと繰り返すけど、「魔法を使わせないことが魔法使いの仕事だ」って。
ほとんどの魔法を使う時はそれだけじゃ現状の改善にはなんなくて、下地を作らなきゃいけない。
俺ら魔法使いが魔法を使う時は、魔法を使わない選択に誘導するきっかけを作ったり、使わない状態の維持装置にするためだ。
ついでに、魔法の残り一割、現代科学では実現できない領域の話もするけど、かなり大きな魔法を使う時は代償を支払う必要がある。
この手の魔法はそもそも魔法使いの法律的に禁忌扱いか、めっちゃ条件が厳しい。
代償は例えば、心、魂、命、絆……――あとは、記憶。
支払う本人基準で、行使する魔法と釣り合うくらい大切なものだ。
――――あの、さ、ムカゴが気付いてるかどうか分かんないけど、もう今言うけど、俺はホノカと出会った頃の記憶を失くしてる。
フェンリルの魔法を自由に使えるようになった代償にな。
使い魔の契約は、主人の魔力を使い魔が使う一方通行なんだけど、俺はイレギュラーで、ホノカと混ざってるフェンリルの魔力を無意識で使えてた。
つまり、使い魔の契約の範囲を超えた魔法行使だったわけで、その代償を後から払わされたんだよ。
……まあ、でも、記憶無くてもまたホノカのこと好きになったから、それをホノカが許してくれたから、俺は正気でいられるんだけどな。
……んんっと。
あとは魔法石の活用とか、魔法の種類とか、魔法道具の仕組みとか、俺の魔法使いとしての立ち位置とか、話し出したら一晩じゃ収まんねえけど、今日はここまで。
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