幕間2 魔法使いの話
*
まず、俺が魔法使いになったのは見習い期間含めて……だいたい四年前か。
俺の師匠にはこの間会ってんだっけ? 緑の髪の嫌味ばっか言う面倒臭がり男。
見習いの頃はあの人に半ば無理矢理やらされてたけど、今では支店持って魔法使いの仕事してる。
魔法使いって基本、派遣社員な。
手が必要な地域にその都度派遣されて、人間界外の種族やら魔物の起こしてる事件を解決する。
あらかた解決したらまた別の街に転勤、を繰り返す。
大元の派遣会社が『魔女裁判所』って呼ばれてて、こっちは異界にあるんだけど、今度良ければ連れて……。
……あ、別に行かなくていいね。うん、言うと思った。
異界についてざっくり説明すると、世界そのものが階層構造になってて、夕方の階層、夜の階層、昼の階層、……て感じで色んな種族ごとの町や生息地帯が縦に連なってる。
魔女裁判所は昼の階層。
で、そこの一番偉い魔女が『白魔女』。
俺、時々この人の呼び出し食らってるからムカゴも名前だけは知ってると思う。
すっごく人使い荒くて派手な悪女ってことだけ知ってて。連日振り回されてんよ。
さっき事件解決が仕事つったけど、別に魔物退治をするわけじゃない。
俺の師匠は「魔法を使わせないことが仕事なんだ」ってしょっちゅう言ってて、一般人に魔法を使わせない、もしくは人間界の理の外にいる奴らに悪ささせないように見張ったり対処すんのが基本的な仕事。
だから干渉は最小限。人知れず事件が解決してました、が理想。
つっても、俺はそんな上手くいくこと少ないけどな……。
結構この近所にも鬼やらドワーフやら座敷童やらが普通に生活してたりするけど、そーゆーのを片っ端から取り締まるんじゃなく、周りの人間に影響しないよう保たせるわけ。
でさ、店の名前が『魔法道具店』なのは道具を使うからで、売ることは滅多にない。
因みに俺、魔法道具作り習ったりしてんだよね~。
……まあ、やっと材料に触らせてもらえるようになったばっかだけどな……。
道具作りの修行はさっき言った夕方の階層でやってる。
あとは夜の階層の管理者も兼任してて……、てかちょっと聞いて!
前任が吸血鬼二人だったんだけど、そいつらに託されてやってるものの、俺要んのかな? 必要か?
何かもう国家の三要素満たしてねえから!
領土と権力はあるんだよ、国民がさ居るのかいないのか分かんねえんだよ。
街に居んのはほぼ言葉の通じない魔物だし、転生するまで留まってる幽霊だし、統治してる感じがマジで無い。
……すまん、愚痴でした。
今んとこ俺はここの支店長やりながら、夜の階層の管理やりながら、魔法道具作りの見習い修行やりながら、大学院生やりながら、法律事務所でバイトして、弁護士資格取る勉強してる。
……うわ俺忙し過ぎ……。
……何でホノカが店に出入りしてるかって?
ホノカは俺の使い魔。元人間らしいけど今はもう魔物と混ざってる。
ええと、ホノカ。話していい?
……OK。
最初はフェンリルっていう北欧神話の狼の怪物に憑りつかれたらしいんだけど、その後、ギリシャ神話のスキュラっていう女性の上半身に六匹の犬の上半身と六本の蛸足がくっついた海の怪物がいて、それの一部に融合されてから、中国神話の龍生九子のうち三体の竜を取り込んで……、
っていう感じで本人絶対言わないけど今は神話級の怪物だろうな。
あ、ホノカ怒らせたら世界滅亡するから気を付けてマジで。
痛っ! は、何で叩く、痛! ちょっホノカ。言っていいって言ったじゃん!
あー基本的に、魔法使いと使い魔は常に一緒に居る。
……って、ムカゴは使い魔に興味ある感じ?
……ああ、そーゆー……。悪い、お前がクコちゃんの使い魔になる可能性はほぼゼロだ。
使い魔の契約についてざっくり話すと、主人の魔力の一部を使い魔に与えて、使用する魔法に応じて必要最低限だけ使い魔から魔力を引き出す仕組みだ。
使い魔は主人の大きすぎる魔力を調節するために居る。
俺は魔力量が普通より多いらしくて、なかなか自分では魔力の出力を加減できないから、魔力の一部をホノカに譲って調節してもらってる。
ホノカはホノカで俺の魔力を必要分消費して、混じった魔物の暴走を抑えてる。
だから使い魔が必要かどうかは人に寄りけり。
俺の知り合いにレモンさんっていう元魔女のお姉さんが居るけど、その人は魔力量が普通で使い魔いなかったしな。
使い魔の契約は一度成立すれば一生解除できない。
もし主人が死んだら使い魔も死ぬ。
使い魔が死んだら主人は魔力を制御し切れなくなって精神崩壊する。
そもそも最初の段階で契約が成立するかは賭けになる。
だから安易に使うべきじゃないってことは言っとく。
あと、ムカゴは雨神だから使い魔契約のできる魔物に該当するか微妙だし、魔力って潜在的なもので普通の人間は自分がそれを持ってることすら知らないからクコちゃんの魔力がどんくらいのものかも量らないと分かんねえんだよ。
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