DIDN'T WE ALMOST HAVE IT ALL
床町宇梨穂
DIDN'T WE ALMOST HAVE IT ALL
とても小さなステージだった。
僕を含めてたったの5人しかいない。
彼女の瞳を見つめる。
僕は思わず台詞を忘れそうになった。
「君のためだったら僕はどんな敵にだって向かって行くだろう・・・。」
最初に台本を読んだ時吐きそうになったけれど、彼女に向かって男が吐く言葉としてはとても正しいような気がした。
「ジークフリード、私もあなたのためにだったら死ぬ事だって怖くない・・・。」
僕は優しく彼女を抱きしめる。
観客の冷やかしが耳に届く。
「キスしろ~!」
とても幼稚な声が手拍子と共にステージに鳴り響く。
馬鹿げているとは思ったが期待に応える。
そっと彼女の唇に僕の唇を重ねる。
彼女の目は丸く見開いている。
とても驚いているようだ。
場内も静まり返ってしまった。
10秒ぐらい経ってからやっとホイットニー・ヒューストンが流れてくる。
カーテンも降りて来た。
「何考えてるのよ?」
彼女は怒っている様だった。
「流れからいって、やっぱりあそこはキスしないとだめでしょ?」
「馬鹿!舌まで入れるジークフリードがどこにいるのよ!」
・・・・・・。
「また先輩達にいじめられるわよ。」
「もてない男達のひがみだね・・・。」
・・・・・・。
「学園のアイドルを彼女にすると大変ね!」
カーテンコールが始まった。
大喝采の中、下品な言葉が頭の悪い男達から発せられる。
アイドルを汚してしまった僕は悪者だった。
どうやら観客の男達は僕の横にいる清純な顔をした女の子がどんなにいやらしくてエッチなのかは知らないらしい・・・。
DIDN'T WE ALMOST HAVE IT ALL 床町宇梨穂 @tokomachiuriho
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます