第46話:下村君との最後の桜の花見

 帰る途中で、今年の4月までは、下村君の安否が気になるので、できるだけ遠出しないでいてくれと、宮入が、みんなに伝えると、わかったと答えてくれた。この日は、飲み会なしで、各自、家に帰った。その後、2月中は、下村は、特に急変することもなく過ごした。


 2月10日、宮入が、吉沢さん、泉堂さんに電話を入れて、2月14日、車で、東京へ行くから、泉堂さんに橋本駅南口に9時半に来てくれと連絡。その後、吉沢さんに8時半に家のマンションの前に来てくれと電話した。

そして宮沢さんを乗せ、9時過ぎに橋本駅南口に来ていた泉堂さんを乗せた。


その後、16号線で横浜に向かい10時には横浜に着き11時前に有明病院に着き、事前に担当の先生と看護婦さんに話してあり緩和ケア病棟へ行き、看護婦さんに、車いすにガウンを着た下村君を乗せ駐車場まで来てもらい、後部座席乗せ、車いすを折りたたみトランクに入れた。


 病院を出て25分で、亀戸天神の近くの旧中川の河川敷、近くに車を止めて、車いすをトランクから出し組み立てた。そこに下村君を乗せて満開の旧中川の河津桜の下を歩いてくれと言った。そして駐車場に車を入れてくると言い走り出した。


 数分後、速足で宮入が来て、下村の乗る車いすを押すと、本当にありがとうと言いながら、涙を流し、それを見て4人は、感涙に涙にむせんだ。そして黙って、15分程、桜の花見をすると、下村君が、もう充分に楽しんだと言ったので、宮入が、車をとってくると言い走っていった。


10分程で、近くに車を止め、宮入が車いすを押して、下村を後部座席に座らせ、車いすをたたみ、トランクに入れた。泉堂さんが、下村の隣に座り、吉沢さんが宮入の横に座り車が出発した。まだ、体が、きつくないかと聞くと、下村が、まだ大丈夫と言った。


 そこで、レインボーブリッジを渡ろうと言い、318号線を海沿いへ向かい葛西から首都高湾岸線の横浜方面に入り、荒川大橋を渡る時、泉堂さんが海がきれいと指をさすと下村が、嬉しそうに、ほんとだと答えた。その後、有明を右折し11号線に入り、レインボーブリッジを渡すと歓声が上がった。


 そして、お台場方面に向かい、30分程で、有明病院に到着した。すると、下村の顔は、涙でぐしょぐしょになっていて、その顔を泉堂さんが、自分のハンカチで、ふいてやった。本当に、感謝するよと言い、泣きながら、礼を言うのを見て、宮入も涙を流した。


 その後、下村を車イスに載せて病室に泉堂さんが、押して行った。宮入は車を病院の駐車場に入れ、すぐに、下村の病室に行った。今日は、僕のために、こんな事まで、してもらった大感激ですと喜んでくれた。桜なこんなに早くみられるとは驚いたと興奮気味に話した。


 実は、あの桜は、2017年2月から3月にかけて咲く河津桜だと言い、旧中川に、その名所があると調べて行ったと言う訳さと、実情を話した。多くの写真もとり、うれしかったと、3人に、お礼の握手をした。まさに、良い今生の別れの記念になったと語った。


 まだまだ、長生きしてねと、泉堂さんが、下村の頬にキスして、軽く抱き着いた。これに感激して、今日は、盆と正月と満開の桜と大好きな泉堂さんが抱き着いてくれ、思い残ることはないと、ボロボロと涙を流す姿を見て、看護婦さんまで涙を浮かべた。


 今日は、疲れたろうから、また来るよと言い病室を後にした。12時に病院を出て横浜中華街で昼食をとった。その後16号線を走り17時には、みんなを送り届け、宮入の家で吉沢さんと別れた。そして3月に入ると下村が、食事をしなくなり血管から栄養を取り始めたと連絡が入った。


 どうしようかと3人で話あうと女性たちが男性として最後の姿を見せたくないと思うのと聞かれ、そうね。多分、そう思うよと言った。そうなのと不満そうな顔で泉堂さんが、言うと、宮入が、どうしたいと聞くと最後を看取ってあげたいと涙ながらに訴えた。


 そこで、宮入が、緩和ケアの病室の看護婦さんに、その話をすると、お気持ちわかりますと言い、危なそうになったらすぐ電話しますと言ってくれた。2017年3月23日、早朝4時、電話が入り、下村の病状が悪化した言われ、3人に電話して車で出かけ5時過ぎに病院到着。

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