第4章 3 謎の集落
オスカーは私を抱きかかえたまま集落へと入って行った。そこは本当に小さな集落の様で周囲を見渡しても普通の平屋の家屋が20件ほどで、店らしきものが1軒あるのみだった。外には2人の男性が立ち話をしていたようだが、遠目で私達の姿を見ると警戒心をあらわにした。
「おい!そこの2人、そこで止まれっ!」
突然1人の男性が大きな声でオスカーの足を止めさせた。そして彼等は遠目からも分かる動きで腰から剣を引き抜いた。
「オ、オスカー様・・・。」
私は彼らが剣を持っている事にも驚いたが、こちらへ剣を構えたまま近付いて来る彼らが恐ろしかった。思わずオスカーの腕の中で震えていると、オスカーが私を抱きよせ、まるで安心させるかのように髪を撫でて来ると耳元で言った。
「大丈夫だ。安心しろ。」
え・・・それは一体・・。
彼らは剣を構えたまま、徐々に私達に近付いて行き・・その顔がはっきり分かった。
若い・・・彼らはとても若かったのだ。恐らく私達とさほど年齢は変わらないだろう。そして1人の青い髪をした男性がオスカーを見て、ハッとなった。
「オ・・オスカー様じゃないですかっ!」
もう1人は黒髪の若い男性。彼は素早く剣をしまうと、慌ててオスカーに頭を下げてきた。
「も。申し訳ございませんっ!まさか・・・こんな朝からここを訪ねて来た事等一度も無かったので・・・オスカー様とは思いもしませんでしたっ!」
オスカーはフンと鼻を鳴らしながら言った。
「当り前だ、俺の様に鮮やかな赤い髪の人間など、俺以外にいるまい?もう二度と間違えるなよ?」
オスカーはニヤリと笑みを浮かべると言った。すると青い髪の男性が私を見ると言った。
「所で・・・オスカー様。そちらの美しい女性は・・・どなたですか?」
するとオスカーは得意げに言う。
「ああ、そうだ。美しいだろう?彼女はアイリス・イリヤ。公爵家の令嬢で俺の婚約者だ。」
「ええっ?!そうなのですかっ?!」
「やはり流石王族ですね。まさかこのように美しい公爵令嬢の婚約者がいらしたとは・・・。」
青い髪の男性と黒髪の男性が交互に言う。
「そうだ、羨ましいだろう?」
オスカーがニヤリと口元に笑みを浮かべて言うので、私は思わずオスカーの顔をじっと見つめてしまった。まさかあのオスカーがこのような台詞を言うとは・・。
「どうした?アイリス。」
「い、いえ・・・何でもありません。それよりももう大丈夫ですので降ろして頂いて構いませんよ?」
「いや、駄目だ。まずは足の治療をしてからだ。」
オスカーは首を振った。するとそれを聞いた青い髪の男性が言った。
「え・・?まさか怪我をされているのですか?」
「ええ・・・大したことはありませんので。」
私は返事をしたが、オスカーは言った。
「何を言う、まずは怪我の治療が先だ。それにその傷の何処が大したことではないのだ。」
「・・・。」
私は口を閉ざした。確かに多少は傷が深いかもしれないが・・・これ位の傷・・70年前のあの時に比べれば・・・。
「俺は・・・お前がこれ以上傷付くのを見たくないんだ。とにかく傷の治療がおわるまでは歩き回るな。これからお前を教会へ連れて行く。」
「そうですね。神官様に祈りを貰えばこれ位の傷、すぐに治して貰えますよ。」
青い髪の男性が言う。
「え・・・?神官様が・・?」
私が尋ねると青い髪の男性が言う。
「ええ、そうです。この集落は・・少し特殊な集落でしてね・・・。あ、申し遅れましたが俺はアルマンゾって言います。」
「アルマンゾ、もしかすると国王がここを襲って来るかもしれない。急いで魔術師たちに集まって貰って、封印を掛けてくれ。」
オスカーは次に黒髪の男性に命じた。
「ヘルマン。万一封印を解かれた場合を考えて武装した兵士を集落の要素に配置しておいてくれ。まあ・・多分大丈夫だとは思うがな。」
「はい。」
ヘルマンと呼ばれた黒髪男性は返事をした。一体・・・この集落は・・?彼等は何者なのだろう・・・?
私の謎は深まるばかりだった—。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます