第七話

「あなたのことが好きです」


「勘違いとか別物の感情とかではないの?」


「確かに、待ち続けて絶望しての再会だったから、そうかな、とも思った。

 でも、この想いは間違いないです」


「僕は男だよ」


「………わかってる。

 気持ちだけでも伝えたいとか、完全な自己満足ってことも」


「自己満足か、普通はそうだよね。


 きみのことはボランティアのようなもの

だったのに情が移ってしまったのかな。

 手負いの獣があんなに懐くとも思いも

しなかったし。


 いつしかきみとの時間がとても愛しくて

どうしようもない程になってしまったから、あの時大学を去れて逆にほっとしたんだ、

実は。


 おや、驚きの顔。

 碎け散るつもりだったかな。

 ならば尚更きみを簡単に受け入れる訳にはいかないな。


 僕はこういう性分だしきみたちのように

衝動で恋愛しないと決めている。


 何よりきみが僕と共にあるということを

心から理解してるとは思えないし。

 想定外の状況はきみたち以上に起こり得るのに果たしてきみはそれに耐えられのるか。


 きみの普通と僕の普通とは違うんだよ。


 そもそも失恋の覚悟は出来ていても得恋の覚悟はなかったなんてもっての外。


 さあ、この話はこれでおしまい。

 駅の場所は判るよね、あっち。

 気を付けて帰りなさい。

 さようなら」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る