第675話 緊急幹部会議ですが何か?
マイスタの街長邸には、リューによる緊急幹部会の招集により、ミナトミュラー本家、ミナトミュラー商会、『竜星組』、それらの垣根を飛び越えて動く実行部隊である通称・総務隊などの関係幹部数十名が、全ての仕事を部下に任せて集まっていた。
緊急招集自体とても珍しいことであったから、街長邸内は少しざわついている。
「ざわつくな、静かにしろ! ──それでは若、お願いします」
大幹部であり、全ての関連幹部のトップであるランスキーが、幹部達を静かにさせるとホールに入ってきたリューに挨拶をお願いする。
「うん、ありがとう。──みんなお疲れ様。仕事中のところすまない。今日、緊急招集したのは、裏社会の状況が一変することになりそうだから、それを伝える為に集まってもらったんだ。実は──」
リューは少しの前置きを挟んでから、国内の裏社会の状況が一変したことについての簡単な説明をする。
そして、詳しくはランスキーがリューの言葉を引き継いで説明を始めた。
大幹部であるマルコ、ノストラ、ルチーナをはじめとした幹部達は、この数日で『竜星組』に匹敵する規模の『屍人会』『亡屍会』が結成されたことはさすがに知っているからその話だろうと考えていた。
しかし、さらにそこへ『屍黒』なる王都周辺を囲むような大きな組織が、王都にある『竜星組』『黒炎の羊』『月下狼』の三大組織に対して宣戦布告をして結成されたことについては知らない者が沢山いた。
大幹部はさすがに、情報入手後にランスキーから部下を使って直接知らせを受けていたが、『屍黒』の名前以外は詳しいことを聞いていなかったので、宣戦布告を聞いて驚くことになる。
ホール内で静かにしていた他の幹部達もこれには驚きにざわつきはじめた。
「これは裏社会の中で、さらに地下に潜んでいた『屍』という巨大組織の後継組織だ。今まではうちの調べでもその全容については特定できずにいたが、『屍』のボスがどうやら死んだことで、統率を欠いた組織が分裂したことでその形が見えてきたことになる」
ランスキーは、ボスを仕留めたのがリューとは一言も話さない。
これはトップシークレットだからだ。
これが、もし、表沙汰にでもなろうものなら、宣戦布告をしている『屍黒』以外の組織も即座に『竜星組』に宣戦布告をしてくることが予想できたからである。
さすがに『竜星組』規模の組織を一度に複数を相手することなど、できようはずもないからだ。
「そのうちの『屍黒』は、『屍』のボスであったバンスカーの死に『黒炎の羊』が関係していると見ていて、王都への進出はそれが理由だろう。つまり、『
ランスキーが続けてそう説明する。
「それならうちで『黒炎の羊』を潰して、その首をあちらに提供すれば、巻き込まれずに済むのではないのでしょうか?」
商会幹部の一人が、抗争での被害を脳裏で簡単に計算したのか、損の少ない方法を提案した。
「馬鹿野郎! 『竜星組』の面子はどうなる? 商会の人間としては確かに最小の被害で抑えるのは一つの手だ。だがな、その為に相手に媚びを売るような真似をしてみろ? 『竜星組』は他所の組織に舐められ、裏社会で築き上げてきた信用を失うことになるんだぞ!?」
ノストラがいち早く幹部の一人の提案を叱責する。
これは他の大幹部の面子にも関わることだから、直接の上司としてノストラが最初に叱らないといけないことなのだ。
「す、すみません!」
幹部は上司であるノストラに叱られたことで自分が軽率な発言をしたことに気づいて謝罪する。
「すまない、兄弟達。うちの部下が軽率なことを言った」
ノストラはそのうえで、一同に謝罪した。
「みんなが、自分の所属するところの利益に基づいた考えをするのは問題ないよ。統括する僕がそれらの意見を聞いて、最終判断をすればいいことだしね。──僕達は『黒炎の羊』を守る義理はない。だけど、ノストラが言ったように、王都裏社会の
リューがそう判断を下すと、
「「「おお!」」」
と思わず幹部達から鬨の声が上がった。
そして、
「王都裏社会を舐めている連中に一泡吹かせましょう!」
「馬鹿、一泡どころか殲滅だろ!?」
「どちらにせよ、喧嘩を売った相手が悪かったことを示すしかないよな!」
「俺達の中にイモ引く(怖くなって腰くだけになる)奴はいないですよ!」
幹部達から喊声と共に、リューの判断を支持する声が上がるのであった。
バンスカーの死からここまでの一部始終を知っている大幹部やルチーナの総務隊幹部達は、それを静かに聞いているのであったが、マルコが立ち上がる。
「野郎共、売られた喧嘩は買うのが、俺達裏社会の住人の生き方だ。これから『竜星組』、総務隊はまた、忙しくなる。商会にしても抗争が起きれば治安の悪化で商売に影響も出るだろうから大変だろう。だから、今まで以上に若のもと、団結して乗り越えるぞ!」
「「「おう!」」」
マルコの気合い注入に、幹部達は真面目な表情になると、返事をする。
「うちに喧嘩を売った相手も馬鹿ね。大人しく『黒炎の羊』だけ狙っていれば良かったのに」
リーンが頼もしい幹部達の結束を目の前にして、頼もしそうにそう告げる。
「そうだね。まあ、王都の治安に関わる問題でもあるし、今回は本家にも話を通しておいた方がいいかな。報告しておかないと不機嫌になる家族もいるし」
リューはリーンの言葉に賛同すると、こういう時には参加したがる祖父カミーザの顔が浮かぶのであった。
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