第474話 イベント会議ですが何か?
リュー達二年生生徒会役員六名は、生徒会長ジョーイ・ナランデールの注文で今学期中に大きな学校イベントを催してくれるよう依頼された。
生徒会室にはいくつかの部屋があり、生徒会長室、会議室、応接室、休憩室などがある。
リュー達はその会議室を早速借りて、話し合いを行う事にした。
「……先輩も無茶な事言うな」
庶務であるがナジンの第一声は愚痴だった。
「でも、生徒会の資産を減らしていく為には、適当なイベントを各学年で行って予算を使うという形が適当ではあるかなぁ」
リューが会議室にも飾られている美術品の数々を見回して理解を示す。
「私達で豪遊して消化するわけにもいかないものね」
リーンが似つかわしくない台詞を口にする。
「……豪遊って。──……リーンが豪遊している想像をするとちょっとおかしいかも」
シズは想像してちょっとツボに入ったのかクスクスと笑う。
「私だってリューと一緒に豪遊する事あるのよ? スイーツの新作が出来た時なんて二個も三個も食べるんだから!」
リーンがちょっと向きになってシズに応じるのだが、豪遊のレベルがささやかなので今度は王女リズが、その微笑ましさに「ふふふっ」と思わず笑ってしまう。
ランドマーク家は貧乏時代が長かったから贅沢というものに慣れていない。
今はランドマーク商会、ミナトミュラー商会は王都でも指折りの大商会に発展しているが、当人達は豪遊どころか贅沢一つせず、利益を部下達にちゃんと分配している。
贅沢といえば身だしなみを求められる貴族だから服や靴などにはお金を使うところだが、実のところリューは裁縫関係はメイドのアーサをはじめとした職人の部下がいたから、手頃な予算で作る事が出来ており、贅沢という程でもない。
「ちょっとリズまで笑ってるわ。──リューも何か言い返して!」
リーンは顔を赤らめて反論を試みる。
「うちは伝統的に贅沢はしないから仕方ないよ。──そうだなぁ。イベントするにしても突然派手な事をやっても恒例行事として長続きはしないと思う。だから現状ある施設を利用したイベントが無難じゃないかな」
リューはリーンを慰めつつ反れた話を元に戻してみせた。
「……学校施設は色々あるから、出来る事は沢山ありそう」
シズはさっきとは打って変わって真剣な表情で応じた。
「ですが、それだとあまり予算を使わないものになるのでは?」
リューの背後で控えていたスードがイベント目的の一つである予算の消化を指摘した。
「それもイベントの内容次第でどうにでもなるよ。今学期中に出来るシンプルで生徒にウケの良いイベントだからね。業者に支払う額を上げるだけでも全然違うし、質を上げようと思えばお金はあっという間に飛んでいくよ」
リューはスードの疑問に簡単に答える。
「なるほど!さすが主です!」
スードはリューに感心する。
「問題はそのシンプルでウケの良いイベントが思いつかないんだよ」
ナジンが肝心の要点を指摘した。
「そうね……。パーティーシーズンでもないし、シンプルで尚且つ人気を得るようなイベント……。──意外に思いつかないわ……」
王女リズも考え込む。
「僕に一つ提案があるんだけど……。二年生に限らず、学園を巻き込む形のイベントとして、総合武術大会はどうかなと」
「「「総合武術大会?」」」
「うん。剣術、魔術どちらもありの大会。これならシンプルだし、学園内の施設を利用できるでしょ。それに盛り上がると思うんだよね。一年生は入学したてだから不利になるからハンデを付けるとか色々とやり方はあると思う」
「二学期に剣術大会、魔術大会があるわよ?」
リーンがリューの提案に疑問をぶつける。
「それは学年ごとに分けた大会でしょ? こっちは剣も魔法もありの総合ルールだから差別化は出来るよ」
「でも、安全面を確保するのが大変よ。リュー君やリーンさんのような規格外な生徒がいると対戦する生徒の命に関わって来るわ」
王女リズが一番の問題点を指摘した。
「そう、それ! この大会で一番予算をかけるところはそこなんだ」
「あ……! そうか。リュー達が参加出来なかった魔術大会は結界魔法などの問題があって参加が駄目になったんだよな。そこに多くの予算を使ってそれを可能にするわけか」
ナジンが一年時の大会の欠点を思い出して、指摘した。
「うん。宮廷魔法士団の結界師や魔法使いを何人も招いて、安全レベルの高い強度の結界や魔法を大会会場や個人に掛けてもらう。魔道具も駆使してね。これなら予算もかなり使う事になると思うんだ」
「……リュー君らしいシンプルで人気が出そうな提案。でも、私はリュー君とは戦いたくない」
シズが力の差が歴然なリューとの戦いは断固拒否する姿勢を取った。
「自分は剣と魔法を駆使してリュー達と戦ってみたいが……。確かにリューとシズを戦わせられないな。──男女別にした方が良いと思う」
ナジンも幼馴染であるシズがリューにコテンパンにやられる想像はしたくないようであった。
「それなら、男女とも参加出来る混合部門と、女子のみが参加出来る女子部門の二つに分けたらどうかしら?」
王女リズはシズやナジンに配慮してそう提案した。
「私もリズに賛成。私はもちろん混合部門参加よ!」
リーンがまだ決まってもいない大会に参加を宣言する。
「細かいルールも決めないといけないね。ルール内で頭も使って戦うというのが、一つの醍醐味になると思うし。──それを持って学園長のところに相談に行って、宮廷魔法士団に話を付けてもらおう」
リューはリーンのやる気に笑みを浮かべると、細かいルールについて仲間と話を進めていくのであった。
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