第216話 新たな火種ですが何か?
夏休みも半ばを過ぎた頃。
リューは、マイスタの街で街長として、商会代表として、そして、組長として忙しい毎日を過ごしていたが、執事のマーセナルを始め、ランスキー、マルコのサポートがあったから三つとも大きなトラブルも無く日々を送る事が出来ていた。
そんな時、マルコが街長邸まで足を運んで報告に来た。
いつもは、助手である元執事のシーツに報告はさせているので不思議であった。
そこに、ランスキーも時間を合わせる様に訪れた。
どうやら、偶然ではなく何か起きたのだろう。
リューは二人を執務室に通す様に伝えると、自分も作業を中断してメイドのアーサにお茶をお願いする。
そこに、執事のマーセナルも呼び、リーンを含めたミナトミュラー家の主要な面子が顔を突き合わせる事になるのであった。
「──で、今日はどうしたんだい二人とも。何か話があって来たんでしょ?」
リューがランスキーとマルコに用事を話す様に促した。
「──実は、若。元『上弦の闇』の縄張りについてなんですが……」
マルコが代表して用件を切り出した。
「ああ。今、縄張り争いで揉めてるよね」
「その残された縄張り争いの結果、新しいグループが、後釜に座ったようです」
ランスキーがマルコの言葉を継いで結果を話した。
「思ってたより早かったね。でも、あそこの縄張りは元三連合の『月下狼』が、介入してたと思うけど、その『月下狼』が縄張り争いに負けたって事?」
リューは意外な結果に軽く驚いた。
「その『月下狼』が新たな勢力に完膚なきまでに叩かれた様で、うちの部下が助けに入ったほどです」
「そんなに?今までの報告では、どこのグループも小さくて長引きそうだと聞いてたけど?『月下狼』は、先の抗争でダメージを受けていたとはいえ、王都では指折りの勢力だよ?」
「その通りです。自分もそう思っていたので、時間をかけて『月下狼』が『上弦の闇』の縄張りの多くを引き継ぐと思っていたんですが、新勢力にやられたようです。すみません、甘く考えて見落としてました」
マルコが、自分の落ち度を認めて謝った。
「謝らなくていいよ、そういう事が起きても不思議はないから。それで、その新勢力についてわかってる事は?」
「はい、そのグループは、『
ランスキーが急遽集めたらしい情報を口にした。
「突然現れて資金力も豊富……か。これはバックに大きな組織、もしくは資金力豊かなスポンサーがいると思った方がいいよね?」
「はい、自分達もそう思い、急遽報告に上がりました」
リューの部下に収まった最近では冷静なマルコが、自分の見落としを悔やんでか苦虫を噛み潰したような表情をしている。
「裏社会ではたまに、こういう事が起きてもおかしくないからね。それよりも、今は、『雷蛮会』の動向が気になるね。それと争いに負けた『月下狼』も」
リューは、悔やむマルコを問題にせず、話を進める。
あまり慰めるとマルコがミスした事になるからだ。
「その事ですが、その『雷蛮会』が『月下狼』の縄張りにも手を出そうとしているようです」
「そうなの?思ったより手が早いね……。元三連合の一角である『黒炎の羊』は動いてないの?」
「俺もそう思って、探りを入れたんですが、妙な事に全く動いていません。もしかしたら『雷蛮会』のバックは『黒炎の羊』ではないかと。『月下狼』もそう疑っているのか助けを求める事もしていません」
ランスキーがミナトミュラー一家の情報担当として、急遽調べた割には詳しい報告をした。
豪快な割にその辺りは気が利くのだ。
「『月下狼』には、こちらから支援を申し込んで上げて。あっちも流石に疑心暗鬼にはなっているだろうけど、こっちは無償で一度、助けて上げたわけだから、まだ多少は話を聞いてくれるでしょ」
「若ならそう言ってくれると思って、もう、声をかける準備はしてありますので、いつでも大丈夫です」
ランスキーがまた、優秀なところを見せた。
「じゃあ、マルコ、派手にならない程度に優秀な兵隊をいつでも動かせる様に準備しておいてくれる?」
「すでに、準備は完了しています」
マルコも、ランスキーと来る前のやり取りで、ある程度準備してきた様だ。
うちの両翼を務める二人は実に優秀だ。
内心リューは満足すると、
「じゃあ、『月下狼』次第だけど、『雷蛮会』に牽制するくらいでお願いね。今は、うちがあまり動き過ぎると『闇商会』や、『闇夜会』も刺激しちゃうから」
と、現在、連絡会を調整中のご近所さんの動きを気にするのであった。
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