第135話 学園復帰ですが何か?
王立学園の混乱が一週間続いたが、王家によって新たな体制が敷かれた。
学園長には、宮廷魔法士団の元団長で引退して余生を楽しんでいた老師を国王の指名によって現場復帰させた。
この新学園長によって現役の騎士から、宮廷魔法士、官吏から研究所の研究員に至るまで多種多様な人材が選ばれた。
そんな中、特別クラスはそのまま維持される事になった。
当初、特別クラスを廃止する案も上がったが、今期はすでに学校が始まっていて、これ以上生徒達の学問の妨げになる様な環境の変化は好ましくないという事になったのだ。
その王女がいる特別クラスの先生は、引き続きビョード・スルンジャーが担当する事になった。
幸い、スルンジャーは周囲が生き残りの為に新学園長へのゴマすりを行う中、教師としての本分を忘れず、混乱する生徒達の為に動いていたので、それが新学園長の目に止まり、一新される教師陣の中で数少ない生き残りになった。
担任のスルンジャーはまず、自宅待機状態だったリューの学校復帰を新学園長に働きかけた。
当初、新学園長はトラブルを起こした生徒の一人という報告だけ聞いていたので、問題のある事案を先に処理したいので後回しにしようとしていたが、担任のスルンジャーが熱心に擁護してきた。
さらには、国王からも自分に全てを任せると言いながら、この生徒に関しては注視して報告を頼むと言うので興味を持つに至った。
「──では、トラブルの原因はイバル・エラインダーと、その取り巻きライバ・トーリッターに全面的に非があったと?」
「はい、詳しく本人達からも話を聞きましたが、学園内での自分の影響力を気にするイバル・エラインダーと、リュー・ランドマークに個人的な恨みを抱くライバ・トーリッターが暴走したのが全ての原因です。リュー・ランドマークに非はありません。彼は才能に溢れた素晴らしい生徒です。早く学園に復帰させて上げて下さい、お願いします」
スルンジャーの熱意に新学園長はこの、教師が嘘はついていない事は報告書と照らしてみても相違がない事から本当だろうと信じる事にした。
「わかった。では、リュー・ランドマークの自宅待機は解き、学園への復帰を認めよう」
こうして、リューは学園に戻れる事になったのだった。
リューが学園に戻るとちょっとした英雄扱いだった。
リューは、その扱いに戸惑い、困っていたが、あのイバル・エラインダーを相手にして、無傷で戻ってきたのだから仕方がないだろう。
さらに、イバル・エラインダーは生徒の間では評判が悪かったし、現場でこの両者のやり取りを目撃していた生徒は多いから尚更だ。
そして、もう一人の主犯格であり密かに、頭が良く美少年という事で人気があったライバ・トーリッターはこの事件でその人気も地に落ちた。
この二人は今後、新学園長によって何かしらの処分がもたらされるだろう。
「お帰りリュー。この一週間、まともに授業していないから勉強が遅れてる事はないぜ?まあ、リーンから聞いてるか。ははは!」
一週間ぶりのランスは相変わらずだった。
「……お帰りなさい、リュー君」
シズが珍しく自分からリューを迎えた。
「リューはこの一週間何をしていたんだい?僕達は自習ばかりだったから君に教わった魔力の変換法をひたすらやってて、多少出来る様になったよ」
ナジンが目の前で基本の火魔法を手の平で出して見せた。
シズとランスも続いてやって見せる。
「おお!みんなスムーズに出来る様になってるね!僕は休みの間、実家に戻って実家の地下に新たな地下三階を作っていたよ」
「実家?実家ってランドマーク領の事だよな?それに何で地下なんだ?」
ランスはリューの言う事の八割を理解できずに困惑した。
「もしかして、君の噂の一つになってる『次元回廊』が使えるというデマは……、もしや本当なのかい?」
ナジンが普通クラスの生徒の間で噂なっている話を口にした。
「大したものじゃないけど、確かに使えるよ。試験ではそれをアピールしたしね」
リューは自分がどう噂されているのか興味をそそられながら答えた。
「じゃあ、本当に『次元回廊』が使えて、その魔法で実家まで帰れるという事なのか!?」
ナジンは素直に驚いた。
それが本当なら、伝説級の魔法使いと言ってもいいだろう。
『次元回廊』はそれだけ、貴重で凄い代物だ。
「そうだけど、でも、制約も色々あるんだけどね。でも、便利なのは確かだよ。お陰でランドマークの王都進出が可能になったから。だからこれからもランドマークの成功と発展の為に頑張らないと!」
リューはそう夢見て笑顔で答え、自分に言い聞かせた。
……リュー君。『次元回廊』自体使える事が、とんでもない事だという話なんだよ?君が思っている以上に大変な事出来てるからね?
シズが心の中でリューにそうツッコミを入れるのであった。
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