第108話 各教室の雰囲気ですが何か?
入学式の翌日。
ついに学園生活が始まった。
リューとリーン、そして、ランスは入学式当日同様、席は教壇から見て一番左の奥の隅っこに陣取っていた。
授業はまだ初日であったから、どの科目も基礎のおさらいであったが、前世ではろくに学校に行かなかったタイプのリューにはこの雰囲気はとても新鮮で、目を輝かせて授業を受ける事になった。
リーンも同じだったが、こちらは授業よりはこの同年代が多い雰囲気が初めてだったのでそれを楽しんでいる様だ。
「人が多いわね。私達の学年だけで六クラスあるんだって」
リーンの故郷の村でも、ランドマーク領でも有り得ない人数なので驚いていたが、王都には他の学校も沢山ある事をリューが教えると、素直に「王都は本当に人が多いのね」と感心するのであった。
そんな王立学園の特別クラスが二つできた事で、一クラス二十四、五人程度。
普通クラスは、四十人弱なので本当に急遽二つに分けて数人普通クラスから増員したのがよくわかる人数だった。
それをランスから聞いてリューは、やっぱり自分達は本当なら普通クラスだったのかもしれないと、ため息が出る思いだったが、今やそれも仕方がない話だった。
そして、危惧していた王女殿下との関わりだが、運がよく皆無であった。
他の生徒はみんな中央に陣取る王女殿下を中心に席を取り、お近づきになろうと必死だったが、リューとリーンはとにかく関わらない様にランスと三人で休憩時間は会話し、時には他所の普通クラスに出かけ、商人の親がいる生徒をランスに紹介して貰い、王都での流行りを聞いたりしていた。
リューとしては、ランドマーク家の発展が第一だ。
情報を仕入れて、ランドマーク家に貢献できる案がないかを考えるのであった。
リーンもそうなるとリューに付いて他所のクラスに行く事になるのだが、これが目立つ事になった。
普通クラスの男子はこの美女エルフに色めき立ち、女子は仲良くなれないかと遠目からキャッキャッしながら様子を窺うのだった。
こうして、授業初日からリューとリーンは普通クラスで、顔が知られるようになった。
そして、噂が普通クラスでは語られるようになる。
それは、
「特別クラスのリューって子、試験の時凄い魔法を使ったそうだよ?」
「あ、それ聞いた。隣のクラスのやつが受験番号が近くて、現場を見たって言ってたやつだろ?」
「そうそう。何でもその魔法が桁違いで試験官が腰抜かしたとか」
「さすがにそれは尾ひれ付いてるって。でも、地方貴族の男爵の三男なのに特別クラスだから、凄い魔法を使ったのは多少は本当かもしれないけどさ」
「当の特別クラスの生徒は何にも言ってないみたいだよ?」
「馬鹿、試験の段階で特別クラスの生徒は俺達とは別に学校側が時間を割いて試験してるから彼の事を知らなくて当然なんだよ」
「やっぱり、優秀だから特別クラスなんだ」
という、何気にリューの評価を上げるものだった。
だがすぐに、
「いや、本当に優秀なのはエルフの子だよ。先生達が褒めちぎってたの聞いたぜ?」
「美女の上に成績優秀で、英雄の娘とか完璧か!」
「尊い……」
「お近づきになりたい……」
「でも、いつもリューって子の側にいるよな。その辺は何か情報ないの?」
「さあ?本人から聞いてみろよ?」
「それが、出来たら苦労しないって!」
「リューって子と話してたト・バッチーリ商会の息子に情報を吐かせろ!」
「よし、今から尋問だ!」
と、リューへの興味はすぐ失せて、リーンに興味が移行する普通クラスの生徒達であった。
となりのイバル・エラインダーの特別クラスは、雰囲気が良くないそうだ。
同クラスになった地方貴族の子息の1人が、イバルの偉そうな態度に辟易してると普通クラスの地方貴族の子に漏らしたという。
一時限目からイバルは、親の地位を笠に着て授業中もやりたい放題らしく教師も中々注意しないのだという。
取り巻きもいるのでイバルには誰も逆らえないのが現状だそうだ。
同じクラスに成績優秀者らしいライバ・トーリッターという地方の伯爵の子息がいて、その子がイバルに気に入られ、入れ知恵をしてるから下手な事も言えないと愚痴を漏らしていた。
ライバ・トーリッターとは、王都への道すがらリュー達が馬車の修理に部品を提供したり、宿屋で部屋を追い出された時の相手だ。
受験での成績はリュー、リーンに次いで五位だったのだが、その時もリュー達は睨まれているので、これは今後、自分達の事も悪く言われるかもしれないと、リューは嫌な気分になるのだった。
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