第101話 色々ありましたが何か?

 長男タウロは無事卒業式を迎えた。


 もちろん、成績優秀者である首席での卒業だ。


 次席にブナーン子爵の子息がいた。


 本当に長男タウロのライバルとして、友人として公私共に競う仲だった様だ。


 そのブナーン子爵の子息は、この半年後、父親の爵位を継いで領主になる。


 理由?

 ブナーン子爵の健康面に問題があるから、という事になってますが詳しい事は知りません。

 ──リュー談


 長男タウロは、ランドマーク領に立派に学業で実績を残して凱旋すると、勢いそのままに、父ファーザと共にベイブリッジ伯爵領にエリス嬢との婚約を取り付けに向かった。


 現地に到着すると、ベイブリッジ伯爵に大いに歓迎され、その日の内に婚約が成立した。


 元々、両家公認の交際であったから妨げる者はほぼいなかったのである。


 ほぼ、と言うのは、ベイブリッジ伯爵家の長男が妹であるエリス嬢を可愛がっていたので難色を示していたのだ。


 もちろん、長男が反対したところで影響はなかったのだが、ランドマーク家側としては、やはり祝福された方が嬉しい。


 最初、会う前から長男はタウロという存在に敵意むき出しであった。


 だが、実際に妹の交際相手であるタウロに会って話すと同じ長男として話が合い、さらにはその好青年っぷりをとても気に入ってしまった。


 その結果、その日の歓迎パーティーでは気が早い事に「我が義弟」と呼ぶ状態であったとか。


 さすがタウロお兄ちゃん、人たらしだ。


 リューはその一連の話を聞いて、ランドマーク領の次期領主の、人としての才能に感心するのだった。



 無事、婚約が成立すると、今度は、ランドマークビルオープンが近づいてきた。


 誰かの暴走で一旦、製作が停止してあった看板も無事修正されて作られ、ビルの屋上に設置された。


 交差する剣に月桂樹の家紋とランドマークの名がドーンと入った大きい看板だ、インパクトは十分だった。

 今は、布を被せて見えない様にしてるがオープン当日は、それを外して堂々とお披露目する予定だ。


 他にも、小さい看板も用意してある。


『コーヒー』のロゴにカップのマークと、『チョコ』のロゴにチョコを幾つか積み重ねたマーク、喫茶店「ランドマーク」のロゴに、フォークとナイフのマーク、そして、『各種車』のロゴに馬車のマークの看板だ。


 もちろん全て、ランドマーク家の家紋入りだ。


『コーヒー』店舗は、コーヒー以外にもランドマーク製のコーヒーメーカーと紙フィルター、コーヒーカップも販売する予定だ。


 今はティーカップで飲んでいる貴族がほとんどなので、この際だからコーヒーカップも浸透させようと、陶器職人に作って貰っていた。


 ちなみに、ティーカップが熱を冷ます為に薄く飲み口が広いのに対し、コーヒーカップは熱を逃がさない様に厚手で飲み口が狭い作りの物を言う。


 チョコは、加工場の職人達の日々の研究で商品開発が進み、オーソドックスなチョコの他に、チョコにナッツ類を入れたもの、各種ドライフルーツ入りのもの、そして、お酒入りのものなど、いろんな種類を用意できた。


 カカオン豆自体が貴重なので、値段は高めの設定だが、売れる自信がある。


 喫茶店「ランドマーク」は、コーヒーが飲める他、領内でも人気のパスタ各種(領内でトメートソース以外にも色んな種類が誕生した)、お好み焼きもどき各種(見た目はピザ)、そして、うどん(麺を細くしフォークで食べ易い様に改良、具材も工夫)、スイーツ類は領内の豊穣祭で出したリゴー飴、リゴーパイなどの他にチョコはもちろんの事、クレープ各種も数量限定で用意している。

 クレープに関しては果物がこの王都でも珍しい物が入手できたのだが、やはり、ランドマーク領から持って来たものの方が美味しかったので、リューがたまに『次元回廊』で、ランドマーク領にまとめて仕入れに行く事で解決する事にしたのだった。


 そして、各種車はもちろん、『乗用馬車一号』『リアカー』『手押し車』などだが、他にも新たに便器も販売する事にした。

 ついに職人達が便器を焼く技術を確立させてくれたので商品化にこぎ付けられたのだ。


 スライムで排泄物を処理するトイレは、画期的アイデアだから王都の人間には最初は驚かれるだろう、だが清潔で処理が効率的なので受け入れられるはずだ。

 こちらは設置工事も含めて販売する予定。


 あとは浸透するまで長い目で見ていこう。


 従業員の教育も短期間ながらビルの管理者のレンドと共にしっかりやってきたので、オープンが楽しみなリューであった。

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